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集う人々 憲法をめぐって(上)(2)「オシャレにカッコよく」しゃべろう 弁護士・太田啓子さん

社会 神奈川新聞  2014年05月02日 15:00

 弁護士、太田啓子さん(37)が始めた出前講座「憲法カフェ」は1年で約40回を重ねた。食事やコーヒーを楽しみながら語り合う。なぜいま憲法は「オシャレでカッコよく」なのか。

 これまで会場になったのはカフェ、レストラン、お好み焼きのお店、病院など。頼まれて行くのではなく、こちらから「営業」して開拓しています。

 インターネットで検索し、チラシとともに手紙を送る。勉強会をやらせてくれませんか、と。「オーガニック」や「エコ」をうたい、社会問題に関心を持っていそうな店に当たりをつけていきます。

 営業を始めたのは、藤沢駅前でチラシをまいても反応がさっぱりだったから。憲法について考えましょうと口にすると「何かの団体の人?」といぶかしがられる。コーヒーを飲みながら、ケーキをつつきながらですよと伝えると、面白そうねとノッてくる。おしゃれな「カフェ」なら女子ウケもいいでしょう。

 最初にやるのは「○×クイズ」。例えば、日本は9条で戦争放棄と戦力不保持をうたっているので外国から攻められてもやり返せないという設問。答えは「×」。政府見解では、(1)急迫不正の侵害がある(2)外交交渉など侵害を排除するための手段が、武力行使以外にない(3)相手国に攻め入ったりしない必要最小限度にとどまる-の3要件を満たせば武力行使ができるとしている。

 それを知らず、やられっ放しでは困るし、自分の国をちゃんと守れるよう憲法を変えたほうがいいと思っている人も多いのではないでしょうか。

いずれにしろ、私の考えを押しつけないように気を配る。まず憲法を知る「知憲」がスタンスです。

権力の「本音」



 憲法をより良いものにするためには、時代に合わせて改正すべきだと考えます。でも、今は必要性を感じない。この憲法で国民が不利益を被ることはないから。むしろ国家権力の暴走を防ぐために守っていくべきです。

 集団的自衛権の行使容認のため、安倍晋三首相が目指す憲法解釈の変更は、まさに国家権力を縛る憲法の存在理由への挑戦です。法を扱う弁護士として到底認められない。

 女性雑誌「VERY」3月号で改憲問題の座談会メンバーとして載った反響は大きかった。雑誌を手にママ友をカフェに誘ったり、なじみの店に持ち込んで「カフェをやって」と頼んだり。新聞で記事になるのとは全然違った。

 編集部に取り上げてほしいと売り込んだのも私から。地元のお母さんたちにおしゃれなファッション誌で取り上げてくれれば関心が広がるのに、と相談したらVERYを勧められた。私は知らなかったけど、子育てママにはよく読まれているようでした。

 驚いたのは、内閣広報室から発売前に問い合わせが入ったこと。

 座談会の後、編集部に「秘密保護法を特集するんですか。うちも取材してください」と電話があったそうです。ソフトな政治介入といえるかもしれません。

 特定秘密保護法や憲法を扱う雑誌はたくさんあるのに、ファッション誌がやろうとすると電話をしてくる。関心が広がってほしくないんだなと感じました。一部の「サヨク」が読む論壇誌で騒いでも怖くはないが、普通の人たち、つまり寝た子を起こしてほしくないというのが、権力を持つ人たちの本音ではないでしょうか。

人集めてこそ



 これまでも勉強会で講師を務めてきましたが、集まるのはもともと関心が高く、憲法に詳しい人ばかり。毎回同じ顔ぶれのこともあり、企画する人たちは新しい参加者、特に若い人がなかなか来ないという悩みを抱えています。

 私が心掛けているのは「自分の思う、一番きれいな自分でいること」。きちんとメークし、華やかであることは大事。米国の選挙でも、候補者はネクタイに気を使いますよね。見た目にこだわるというのは、決して軽薄ではないと思います。

 既存の護憲運動では、その点をないがしろにしていると感じます。せめて寝ぐせは直し、鼻毛も切って、と。市民団体の方からは「弁護士さんから往復ビンタを食らった」と言われることもありますが、一生懸命伝えるだけでは関心は広がらないということ。人集めの工夫を最優先すべきです。

 もちろん、カフェに来ない人やVERYといってもピンとこない人も大勢いる。働いているお父さんも参加しづらい。

 「憲法を考えているひまはない」と考えている人もそう。日々の暮らしに困窮している人たちに伝えるのは難しい。基本的人権という点で貧困と憲法は直結している。引きこもりの若者を支援している団体で憲法の話をした同僚弁護士もいる。私も子育て中のママさん向けという枠を自分で設けず、いろいろなところに厚かましく顔を突っ込んでいきたい。

権利を鍛える



 参加者には家庭や職場、身の回りの人と憲法について会話をしてほしいとお願いしています。少しずつ、一歩ずつです。

 長い目で見れば、親から子へ憲法の大切さが伝えられていくのが理想です。

 あるお母さんから、小学校低学年の子どもに憲法をどう教えればいいかと質問されました。まず知っておくべきは天賦人権論。人権は天から与えられた権利で、自分にもお友達にも人権がある。憲法があるから人権があるのではなくて、生まれたときから誰にでも人権があるんだよ、と伝えるといいと思います。

 日本社会には権利の行使をわがままと受け止める風潮がある。私の権利は大切なもので、だからあなたの権利も尊重するという意識を子どものころから教わっておくべきでしょう。

 そして権利は筋トレのようなもので、鍛えていないと、いざというときに使えなくなる。例えば表現の自由。空気を読まない。小さい声でも言いたいと思ったら口に出す。ツイッターでつぶやく。カフェでおしゃべりをする。小さいことだけど、大事だと思います。国が戦争をしようとしても、疑問を抱く人が多いほどやりづらくなるでしょう。憲法が保障する人権は不断の努力によって保持しなければならない。それもまた、憲法12条に書かれていることです。

 ◆おおた・けいこ 国際基督教大を卒業し2002年に弁護士登録。横浜弁護士会、「明日の自由を守る若手弁護士の会」に所属。家族、雇用関係、セクシュアルハラスメント・性犯罪問題などを扱う。


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