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行政区越えた「東京圏」、連携で相乗効果も

経済 神奈川新聞  2014年04月17日 12:49

MEDTECの会場に設置された川崎市と大田区の共同ブース=東京都江東区の東京ビッグサイト
MEDTECの会場に設置された川崎市と大田区の共同ブース=東京都江東区の東京ビッグサイト

政府は国家戦略特区の地域指定に当たって「東京圏」「関西圏」という広域的な概念を打ち出した。神奈川にとっては、羽田空港再国際化、国際線の発着枠拡大の波及効果を生かしたまちづくりと地域経済活性化が懸案になっている。地域の利害を乗り越えることはできるのか。行政区を越えた連携の可能性、課題を探った。

多摩川を望む東京都大田区矢口に工場を構えるプラスチック成形の「睦化工」。食品や化粧品の容器キャップの生産で培った高度な技術力を生かし、現在は3Dプリンターを活用して医療機器の分野でも事業展開している。

区内の町工場が集まり国産ソリを製作し話題になった「下町ボブスレーネットワークプロジェクト」にも参画。プラスチック成形の特級技能士でもある古川亮一社長(50)は「大田区は製品の基盤となる技術を得意とする町工場が集積している。同時に医療機関や大学も多い。地の利を生かして町工場の多様な技術を組み合わせれば、ほかにはない製品を生み出すことができる」と、高度な技術力を持つ中小企業間連携によるイノベーション(技術革新)の可能性を強調する。

多摩川の向かいに広がる川崎臨海部では革新的な医薬品、医療機器の開発を進める「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」の形成が進む。「もともと行政区の境目など意識してこなかった。川崎臨海部には最先端の技術を持つ企業も多い」。古川社長は多摩川を越えたネットワーク形成に期待を込める。

9日から3日間、東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催された医療機器の設計・製造に関するアジア最大の展示会「MEDTEC」。国内外の430社・団体が参加、展示会場の一角には川崎市と大田区の共同ブースがお目見えした。これまでは大田区が出展してきたが、川崎市が初めて参加。昨年4月に締結した両者の産業連携協定を受けたものだ。

最終日には同市の伊藤和良経済労働局長と同区の鴨志田隆産業経済部長が会場を訪れ、双方の展示を視察した。「京浜工業地帯として一体的な地域。工業都市である両者の技術を共同で見える形として示すことができた意義は大きい」と伊藤局長。鴨志田部長も「羽田空港の沖合展開によって生じた跡地には、国内外の産業交流を推進する拠点施設の整備を目指している。川崎市とも相乗効果を高め、国際的なビジネス拠点を形成したい」と連携の可能性に言及した。

■羽田空港を核に

国家戦略特区を見据え、大田区は羽田空港を核に日本を「世界の成長センター」に押し上げる構想を提起。産業交流拠点として「羽田グローバルアライアンスセンター(仮称)」を整備し、「空港に隣接する立地特性を十分に生かし、海外企業と国内中小企業のビジネスマッチングによる新製品・技術開発を図る」(鴨志田部長)。アニメやファッションなど日本文化のコンテンツを産業化する「クールジャパン」の発信拠点としても位置づける計画だ。

昼間の年間発着枠が3万回から6万回に広がり、深夜早朝帯を含め国際線の発着枠が計9万回に拡大した同空港。首都圏の拠点空港として国内、国際線双方の「内・際ハブ機能」が強化される中、多摩川を挟み羽田空港に近接する川崎臨海部・殿町地区での特区形成も、その「立地特性」を全面に活用しながら進められた。

「東京だけでなく神奈川など周辺エリアを含めたエリア全体が良くならないといけない」。国家戦略特区の指定を受け、東京都の舛添要一知事はそう述べ、創薬分野であれば大田区と隣り合う川崎市との連携の可能性を示唆した。「東京圏」は東京都と神奈川県、千葉県成田市で構成する。舛添知事の発言は、ハブ空港を核にした「首都圏特区」形成に意欲を示し、関係自治体に秋波を送った形だ。

3月19日、羽田空港内の会議室に殿町地区を拠点にした「ナノ医療」に関連する全国17の大学、研究機関の研究者が一堂に集まった。国の革新的イノベーション創出プログラムの一環として国内外の研究ネットワークを活用し、新たながん治療法開発などを推進。プロジェクトリーダーの木村廣道東京大学特任教授は全国の研究者を前に「(殿町で整備が進む拠点では)地方大学の研究者による日帰り研究や、海外のトップ研究者を直行便で招聘(しょうへい)し、顔を向かい合わせ、タイムリーに議論することも可能だ」と地の利を強調した。

■連絡道路の行方

国家戦略特区の指定を機に高まる広域的な都市間連携の機運。一方で神奈川にとっては、羽田空港に直結する連絡道路の整備が長年の懸案だ。構想の浮上からおよそ10年が経過し、県と川崎市は実現可能性の調査を続けているが、「自治体間の調整を図るためには、国が先頭に立って推進する必要がある」とある自治体関係者は漏らす。やすやすとは乗り越えられない行政区の壁は存在する。

民主党政権下、国際戦略総合特区の指定を機に国や関係自治体が羽田空港周辺のまちづくりを検討する場が設けられた。しかし、交通インフラをめぐり大田区は国道357号(千葉-横須賀)の早期実現を、川崎市は羽田連絡道路の必要性を提示。明確な結論が出ないまま政権は交代。国際戦略総合特区から国家戦略特区へ、いわば振り出しに戻った格好だ。

一方で、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、首都圏ではさまざまなインフラ整備が動きだしている。羽田空港と神奈川のまちづくり、産業施策の関係性について、浜銀総合研究所の八木正幸理事は「羽田直結になれば、殿町地区への研究機関、事業所の立地促進にとどまらず、大田区側にとっても医工連携など、両地区間の一体的取り組みの追い風となる」との認識を示す。

その上で、「国際空港を核にした『一体的』『広域的』なまちづくりがうまくゆくためには、逆説的だが、周辺エリアそれぞれが個性を生かした(まちづくりの)取り組みを進める必要がある」と指摘。「例えば、宿泊施設の立地を誘導する場合、観光、ビジネスの別、国内回遊方面別など主な対象客を意識した事業所の集積を図るといった、他エリアとの差別化を意識せざるを得ない。とくに観光サービス面では、川崎、横浜、神奈川のブランド力をどう生かしていくかも重要だ」と、東京圏内での役割、機能分担の必要性を強調している。

◆国家戦略特区の指定地域 都道府県単位などで指定する広域型特区は、東京都、神奈川県、千葉県成田市で構成する「東京圏」と大阪府、京都府、兵庫県の「関西圏」と沖縄県。離れた地域を束ねる事業連携型は、農業特区として新潟市と兵庫県養父市が、雇用特区では福岡市が選定された。

【神奈川新聞】


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