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プロレスラー・沼澤邪鬼
【ひとすじ】デスマッチに生きる(上)

スポーツ 神奈川新聞  2014年04月15日 12:00

主戦場はデスマッチ。額から滴る血に観客席のボルテージが上がっていく=2月7日、後楽園ホール
主戦場はデスマッチ。額から滴る血に観客席のボルテージが上がっていく=2月7日、後楽園ホール

 眼下に蛍光灯が1メートルほど積み上げられていた。

 トップロープから、その真ん中へ突き落とされた。ガラスが砕ける破裂音。こだまする悲鳴。狂気に憑かれたような、歓声-。

 ワン、ツー、スリー。フォール負け。

 割れんばかりの喝采はしかし、血まみれの敗者となった自分に向けられている気がした。

 「その反応が病みつきになるんですよ」

 駆け出しの若手だった2002年、初めて立ったデスマッチのリングだった。控室に戻ると、どうもおかしい。右脇腹の傷から、血が止まらない。救急車が呼ばれた。蛍光灯の破片が体深くに刺さり、穴の開いた風船みたいに肺がしぼんでいた。集中治療室で緊急手術。一歩間違えば、出血多量で死んでいた。

 後日、スポーツ紙やプロレス雑誌は、行き過ぎた興行のあり方を問題視する記事を掲載した。読みながら思った。「俺がこんなに大きく載るなんて。デスマッチって、やっぱりおいしいな」

 プロレスラー、沼澤邪鬼(37)。試合のたびに刻まれる切り傷で、額の皮膚は幾重もの筋状にせり上がる。手のひらをいじっていると思ったら、「ほら」。5ミリほどのガラス片をほじくり出してみせる。「黒天使」を名乗り、ガウンには大書された「狂神」の2文字が躍る。常人からすれば、狂気としか思えない世界に生きる。主戦場は、過激なファイトがウリのデスマッチだ。

 大日本プロレスは、横浜市都筑区に本拠を構える。1994年に誕生した小さな団体の存在を知らしめたのが、「蛍光灯デスマッチ」だった。使用済みの蛍光灯を大量に用意し、凶器として戦う。破片の海と化したリング上で技を掛け合う。皮膚は割け、肉に突き刺さり、血が飛び散る。その残忍性が、ファンの心をつかんでいる。

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