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10日に行われた訓練でタブレット端末を手に乗客役を誘導する運転士=川崎市川崎区
10日に行われた訓練でタブレット端末を手に乗客役を誘導する運転士=川崎市川崎区

津波発生時に列車の乗客の安全をいち早く確保するため、JR東日本横浜支社が今秋にも、衛星利用測位システム(GPS)が付いた乗務員用のタブレット端末を利用した避難誘導の仕組みを導入する。停止地点周辺の地図に避難場所や経路が自動表示されるアプリを開発。停電などで駅間で立ち往生した場合に有効とみており、運転士や乗客がどこへ避難したかを即座に把握できるメリットもあるという。

JR東日本によると、タブレットは運転士や車掌が列車の運行時間や遅れの影響などの確認に使っている。昨年10月までに全乗務員に配布した同支社は巨大津波で海沿いの複数区間に浸水の危険性があるという管内の事情を考慮し、独自の付加機能として避難誘導用アプリの開発を進めてきた。

東日本大震災以降、乗務員には路線別に避難場所を示した津波対応マニュアルが配られたが、緊急停止した場所によってはすぐに線路外に出られなかったり、近くに高台がなかったりして運転士らが逃げる方向を判断できない恐れがある。また、通勤時間帯や夜間では乗客が混乱し、誘導が一層難しくなることも予想される。

これに対しタブレットでは「停止した場所に応じて避難先とともに複数の経路が案内されるため、最短ルートでも川沿いであれば通らないといった選択が可能になる」(鈴木正美安全企画室長)という。交差点など迷いそうな場所は写真も表示される。

また、災害時に全体を統括するJRの対策本部ではGPSの位置情報を基に乗客をどこへ誘導したか即座に把握し、避難後の支援活動をすぐに展開できるとみている。

導入に向け、川崎市川崎区のJR鶴見線で10日に実施した訓練は、昭和-扇町間で列車が緊急停止したと想定。運転士と車掌は周囲の安全を確認した上でタブレットで避難先を確認、約650メートル離れた津波避難施設のJR東日本川崎発電所の屋上に約100人を誘導した。

訓練開始から避難完了までは約25分。松崎哲士郎支社長は「災害時には運転士と車掌が臨機応変に対応する必要がある。端末の機能を生かし、乗客の安全を守りたい」と話した。

同支社は県内の沿岸付近を走る在来線6線(東海道、横須賀、根岸、横浜、南武、鶴見線)に津波注意区間を設定済み。津波警報時は進入を避け、区間内に停止した場合は乗客を避難誘導することにしている。

◆頭悩ます「立ち往生」対策

駅間に立ち往生した列車からの避難は、東日本大震災で浮き彫りになった課題の一つ。降車に時間がかかる上、限られた人員で線路上を誘導するため、沿線に津波のリスクを抱える鉄道各社は頭を悩ませている。

国土交通省によると、震災時に津波の危険から乗客を避難誘導した列車は、東北を中心とした26路線の60本。このうち24本が駅間に立ち往生し、多くが運転席や車両最後部からはしごで乗客を降車させたが、かなり時間を要した。一方、乗客らの助言で移動しない方が安全と判断し、降車後に戻ったケースもある。

こうした対応では、津波が短時間で押し寄せた場合に不安があるため、国交省は避難誘導策を定めるよう各社に要請している。

いち早く検討を進めた横浜市営地下鉄は、停電などで動けなくなった列車のブレーキを解除し、線路の勾配を利用して一方の駅に近づくとの対応策を2012年にマニュアル化。昨年9月には地上に通じる駅間の換気施設2カ所に避難階段を付け、線路上の移動が困難な車いすを乗せられる手押しの台車も用意した。

より海側を走るみなとみらい線も同様に惰力で可能な限り駅に近づくことにし、今年3月に訓練を初めて実施。地上にいち早く逃れる方法を探ったが、「トンネル内は暗く、歩きにくい。乗客の協力がないと対応は難しい」としている。

一方、横浜市南部の臨海部で高架上を走るシーサイドラインは無人の自動運転のため、最寄りの有人駅から駅員が駆け付け、誘導する方針だ。

【神奈川新聞】


津波避難施設への経路図や経路上の交差点の写真が表示されるタブレット端末
津波避難施設への経路図や経路上の交差点の写真が表示されるタブレット端末

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