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時代の正体〈419〉放射性土壌の行方(4)「不安をあおらないで」

時代の正体 神奈川新聞  2016年11月19日 10:35

学校、保育園に残る放射性汚染物の施設外の保管を求め、保護者らは何度も市に申し入れを行ってきた=2016年7月、横浜市役所
学校、保育園に残る放射性汚染物の施設外の保管を求め、保護者らは何度も市に申し入れを行ってきた=2016年7月、横浜市役所

 横浜市の保育園に保管されたままの放射性物質を含んだ土壌。9月下旬、記者が横浜市こども青少年局保育・教育運営課を訪ねると、担当課長は「土は安全に管理されている」と強調した。その上で「不安をあおるようなことはしてほしくない」と注文を付けた。取材は予定の30分を過ぎ、すでに1時間を回っていた。

運営が第一


-放射能が健康に与える影響に関しては、分かっていない部分もたくさんあります。受け止め方も人によって異なります。ただ、東京電力福島第1原発事故によって、市内の小中学校や保育園の土が汚染されたのは事実です。土そのものに含まれた放射能の値を市は測定していません。そこをはっきりさせた上で対応すべきではないでしょうか。

 「そういう考え方があるのは分かります。ただ、たとえ、それをやったとしてもプラスにならないですよね」

-どうしてですか。

 「土そのもののベクレルが高かったとして(放射性セシウム濃度が1キロ当たり8千ベクレル超で環境相が指定する)『指定廃棄物』に指定しました、今まで以上に厳重に保管します。それで解決しますか?」

-放射能に汚染された土壌の問題はすぐに解決しないかもしれません。しかし、継続的に厳密に管理しなければいけない物ではないですか。指定廃棄物は、それが健康に影響を与えるとされているからこその枠組みです。

 「言葉を返すようだけど、他の園庭も土をさらいますか? 心配しだしたら切りが無い」


横浜市の小中学校17校に置かれたままの指定廃棄物
横浜市の小中学校17校に置かれたままの指定廃棄物

 -いま目の前にある土がどういうものか、そこをはっきりさせるべきでは、という質問です。あの原発事故で放射性物質がまかれて汚染された物とともに生きているんだ、と認識することによって、今後の方針や市民の意識が変わっていくのでは。

 「おっしゃりたいことはよく分かる。でも、私は保育園の仕事をしているんです。保育園の運営が第一なんです。もちろん、危険なことはできない。危険な状況は保てない。だけどね、『(問題になっている園の土壌は)空間線量は低いから直接人体への害は直接ないけれど、法律上、指定廃棄物になるものがありました』と言ったところで、プラスになりますか。そりゃ、『福島の事故は続いている』と認知する意味はあると思う。だからと言って保育園の運営にプラスになりますか? これ、私は(問題を)隠蔽(いんぺい)していますかね」

-一定の基準はありますが、低レベルであっても放射能が健康に与える影響はまだ分からないことも多いわけです。

 「分からないです」

-分からないのであれば、土がどういうものなのかをはっきりさせて、もし線量が高い物ならば、子どもの場所から離さないといけない。

 「だからいま、引き離していますから。子どもが取って食べちゃうような場所にあったら問題ですよ。でも隔離しているわけです。U字溝やコンクリート升に入れて、遮蔽(しゃへい)しています。高い値が出たときは発表しますよ。でも、高い値を発表しても保護者の不安をあおるだけだと思うんですよね。不安をあおらないやり方があるのであれば、私も積極的にやりたいですよ」

 「いまね、皆さん『不安だ、不安だ』っておっしゃるけれど、放射能の影響は(厳密には)分からないんです。言い始めたら切りが無い。わざわざ強調してまで不安をあおる立場にない。正しく(現行の基準を)知っていただいて、正しく恐れていただいてと思います。『心配だ、心配だ』と(一部の保護者に)言われることによって、周りの方まで心配してしまいます」


横浜市内の保育園、小中学校に置かれたままの放射性土壌
横浜市内の保育園、小中学校に置かれたままの放射性土壌

結論出せぬ



-正しく知ってもらうため、情報をオープンにする必要があると思います。そのための基準だと思います。

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