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特定秘密保護法を問う(16)危機感広く共有を、廃止訴え市民が結集

社会 神奈川新聞  2014年02月03日 12:27

特定秘密保護法に反対する会の発足に向け打ち合わせをする市民ら=横浜市神奈川区の県民センター
特定秘密保護法に反対する会の発足に向け打ち合わせをする市民ら=横浜市神奈川区の県民センター

昨年12月に成立した特定秘密保護法に反対する市民グループが活動の輪を広げようと模索している。県内では、脱原発や平和・護憲運動に取り組む横浜市民を中心に会の結成に動きだした。「法律ができたからといって終わりじゃない。施行までは1年ある」を合言葉に法律の廃止を訴えていく。

1月30日午後、会議室に男女14人が顔をそろえた。横浜や川崎、大和市などで活動する市民グループのメンバーだ。

ホワイトボードに「秘密保護法」「廃止」「ストップ」「いらない」と、いくつかの単語を書き込んでいく。会の発足に向けた打ち合わせは名称を決めることから始まった。発案者の中西綾子さん(75)=横浜市青葉区=が口火を切った。

「目的は特定秘密保護法を廃止に向かわせること。でも、それだけでいいのだろうか」

国民の「知る権利」が損なわれる懸念が払拭(ふっしょく)されぬまま、安倍晋三政権は法案の採決を強行した。国民の声を軽んじる政治が行き着く先には何が待つのか。そうした問題設定こそがこの法律の本質を浮き彫りにし、危機感はより広く共有されるのではないか-。中西さんは危機感は必ずしも広く共有されてはいないという思いを抱いていた。

出席者からも焦りの声が相次いだ。「早く動きだして、この法律の問題点を広めていかないと」

有志のメンバーで昨年10月下旬から12月上旬にかけ、法案の是非を問うシール投票を街頭で実施した。約4400人が足を止め、約65%が「反対」に投じた。だが、法律が成立すると反応が鈍った。

「人が足を止めてくれなくなった」「ビラの受け取りも悪い」「反対の署名を集めるのにひと苦労する」

変化を肌で感じていた。

■脱「お任せ」

中西さんには幼かったころに経験した戦争の記憶がある。「私たちの親の世代はなぜ戦争に反対しなかったのか。ずっと疑問に思っていた」

いまでは分かるような気がする。反対しなかったのではない。できなかったのだ、と。かつて戦争に反対する言論を弾圧した治安維持法が特定秘密保護法に重なって映る。「言いたいことも言えない。そんな権力に抑え込まれるような世の中が再び訪れるのではないか」。その不安が中西さんを動かす。

戦争を知らない世代にも、この法律に不安を感じている人がいる。阪井依子さん(36)=横浜市鶴見区=は「戦争ができる世の中にしてしまうのは、これから大人になる子どもたちに申し訳ない」と会議に足を運んだ。

声を上げることの大切さを思い知ったのは、2011年3月の東京電力福島第1原発事故だ。この年に妊娠し、首都圏にも降り注いだ放射性物質の不安におびえながら子育てをしてきた。

原発事故の情報を開示しようとしない政府の対応に不信感が募った。脱原発の市民運動などに参加するようになった。「一般市民が危機感を持って動かないといけない。政治の世界の誰かがやってくれるという『お任せ民主主義』の結果、こんな状態になってしまった。自分でも何かやらないといけないと思った」

■統一行動を

3時間近い議論の末、名称は目的の分かりやすさを重視し「ストップ秘密保護法かながわ」に決まった。活動方針には、集団的自衛権の行使容認といった戦後平和主義の転換につながる政策や法案にも反対していくことを盛り込んだ。

中西さんは「これまで市民運動に参加してこなかった人たちにも呼び掛け、運動を盛り上げたい」と話す。世論喚起の妙案があるわけではない。でも、できることをやっていくしかない。

「若い人に知ってもらうにはネットだ。ブログを立ち上げ、集会の告知をしよう」「街頭で活動するために横断幕を作ってはどうか」

県内では川崎や藤沢などで志を同じくするグループが立ち上がっている。全国の市民団体の間では法律が成立した12月6日にちなみ、毎月6日に統一行動をする動きもある。「行動を共にし、大きな活動であることをアピールしたい」

6日には横浜駅周辺で署名活動やチラシ配りを予定している。

◇◆◇反対の意思表明が大切、海渡雄一弁護士日弁連対策本部

施行まで1年を切った特定秘密保護法。日弁連秘密保護法対策本部で副本部長を務め、法律の廃止を訴える海渡雄一弁護士に市民運動の可能性について聞いた。

市民運動の盛り上がりに期待している。大切なのは声を上げ、反対の意思を示すこと。廃止運動が存在しているというそのこと自体が重要だ。法律の矛盾点を浮かび上がらせ、まともに施行できない状況に追い込んでいくことにつながる。

地道な署名運動を続けることにも意味がある。法律に反対している国会議員に働き掛け、廃止法案を出させるという方法がある。

民主、共産両党はそれぞれ廃止法案を今国会で提出する見通しだ。いまの政治状況でただちに可決することは難しいが、廃止を訴える国会議員がいて、支援している市民が大勢いるという状況をつくり上げることで情勢の変化を促すことができる。

国政選挙は当面予定されていないが、来春には統一地方選がある。地方議会では法律の撤廃や凍結を求める意見書を可決しているところもある。この数をさらに増やすよう働き掛けることにも効果があるだろう。

■特定秘密保護法

機密漏えいに厳罰を科すもので昨年12月6日の参院本会議で自民、公明両党の賛成多数により成立した。

(1)防衛(2)外交(3)スパイ行為など特定有害活動防止(4)テロ活動防止-に関する事項のうち、漏えいすると国の安全保障に著しく支障を与える情報を閣僚ら行政機関の長が「特定秘密」に指定する。公務員らが漏らした場合に最高10年の懲役を科し、漏えいを唆した場合も5年以下の懲役とする。公務員だけでなく、秘密を知ろうとした市民も処罰対象になり得る。

法案の審議で、政府は外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)とセットで諸外国と情報共有するのに法整備が必要だと説明。だが、公務員らが萎縮して情報公開に消極的になり国民の「知る権利」や報道の自由が損なわれる点や、官僚による恣意(しい)的な指定をチェックする仕組みの不足が指摘された。

安倍晋三首相は秘密指定の妥当性をチェックする「保全監視委員会」と秘密指定の統一基準を策定する「情報保全諮問会議」を法施行までに政府内に設置する方針を明言したが、政府の情報隠しに有効な歯止めとなるかは不透明なまま。

同法は昨年12月13日に公布され、施行は公布から1年以内と定められている。

【神奈川新聞】


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