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時代の正体〈417〉放射性土壌の行方(2)秘密裏「臭い物にふた」

時代の正体 神奈川新聞  2016年11月17日 10:27

保育園の園庭一角には、原発事故後により発生した「マイクロスポット対応土壌」が置かれていた。ブルーシートに覆われた土のそばには三輪車が見える=2014年11月、横浜市内(井上さくら市議提供)
保育園の園庭一角には、原発事故後により発生した「マイクロスポット対応土壌」が置かれていた。ブルーシートに覆われた土のそばには三輪車が見える=2014年11月、横浜市内(井上さくら市議提供)

 9月9日、横浜市会の本会議場。一般質問のため壇上に立った井上さくら市議(無所属・ネット)は、前を見据えて質問を始めた。

 「横浜市はこれまで、マイクロスポット対応で清掃除去したのは20校としていました。しかし、実はそうした学校が他にも12校もあり、公表していないことが分かりました。なぜこうしたことが起こるのでしょうか」

 東京電力福島第1原発事故から5年半。井上市議は市の小中学校に残された指定廃棄物や放射性物質に汚染された土壌問題を追及してきた。小中学校12校が汚染土壌を「自主保管」し、市教育委員会がそれを把握していなかった事実も、同市議の追及で発覚した。

 質問に対し、答弁に立った岡田優子教育長は用意された原稿を読み始めた。手元から目を上げず、下を向いたままだ。

 「市が設けた基準数値を超えているものについては報告の義務がありましたが、(公文書記録では12校は)一度も数値を超えていなかったため、学校は市教委に報告する必要がありませんでした。このため、記録として残されませんでした」


横浜市の小学校に置かれた放射性土壌。普段は、児童が立ち入らない場所に置かれており、辺りは真っ暗だった=2016年9月、横浜市内
横浜市の小学校に置かれた放射性土壌。普段は、児童が立ち入らない場所に置かれており、辺りは真っ暗だった=2016年9月、横浜市内

 井上市議が再質問に立つ。今度は林文子市長にも向けられた。

 「当時、市教委からは『放射線対策本部が、埋設の場合は埋設報告書を出すように』とひな型も含めて、学校に送付している。でも、学校からその記録が来たのか、来なかったのかも分からない、と。そして(12校のうち)6校の土がどこにいったのかも分からない、と。推測で『学校が埋設したと思う』ではなく、きちんと調査してほしい」

 質問は続く。

 「市長からも『埋設したのは放射線対策本部の方針だから』という話がありました。では仮に(再び)原発事故があったら、(放射性物質を含んだ土を)また『学校、保育園に置け』『そこに埋設しろ』と同じ方針を出すのでしょうか」

 林市長「もう一度、学校や保育園に置くのか、ということですが、こういうことは決してしない。今回の経験を踏まえて安全第一でやらせていただく」

 岡田教育長「(汚染土壌の行方が分からない)6校は一度も数値を超えた形跡も、特別に市教委から報告を求めた形跡もありません。誠に申し訳ありませんが『ただの土だった』ということで、学校で処理されたと考えています」

 市長も教育長も早々に自席に戻った。


2013年12月、環境省に指定された「指定廃棄物」はいまも横浜市内の17校に置かれたままだ。発見当初、横浜市は「廃棄物」ではなく「汚泥」であると言い張った。
2013年12月、環境省に指定された「指定廃棄物」はいまも横浜市内の17校に置かれたままだ。発見当初、横浜市は「廃棄物」ではなく「汚泥」であると言い張った。

 除去物



 原発事故以降、横浜市はどのような対応をしてきたのか。井上市議は「放射性物質の問題を巡っては迷走を続けた」と指摘する。

 事故後、県内にも放射性物質が飛散した。実際、建造物の側溝や雨どいからは高い放射線量が測定されている。市の姿勢はどうだったか。

 市はまず、汚染箇所は「限定的」とし、局所的に放射線量が高い箇所を「マイクロスポット」と名付けた。事故から半年後の2011年9月には、学校に対し、「市の基準値を上回った土を除去して敷地内で保管するよう」に指示した。

 ところが13年12月、この方針は大きく変わる。市放射線対策本部会議が「除去、保管している土壌は、学校敷地内に埋め戻す」という決定を行い、「保管」をやめて「埋める」という指示を出した。しかも、決定は当時、公表されていない。保護者や地元住民には何も知らせぬまま、市教委の指示によって実際に4校は汚染土壌を校舎の裏などに埋めた。

 井上市議は後にその事実を知り、14年10月の市会決算第1特別委員会で市の姿勢を追及した。当時の会議録に、こんなやりとりがある。

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