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市大先端研究〈7〉転写因子 病気との関係を解明

社会 神奈川新聞  2014年01月10日 00:00

転写因子とは?
転写因子とは?

田村智彦教授の研究グループは、人の遺伝子とがん、自己免疫疾患などの病気との関係を解明し、新たな治療法を開発するプロジェクトに取り組んでいる。着目しているのは、人の遺伝子が機能を発揮するまでのメカニズム、「遺伝子の発現制御」だ。

DNAの遺伝情報が読まれて(転写されて)、情報を仲介するリボ核酸(RNA)ができ、RNAに基づいてタンパク質が合成(翻訳)される。この過程が生命現象の基となっている。しかし、田村教授は「実は遺伝子(人では2万数千個ある)のすべてがいつも読まれているわけではない」と説明する。

通常、人の個体では遺伝子配列はどの細胞も同じだ。しかし、「二百数十以上ある細胞の種類やさまざまな刺激(環境、ストレス、感染など)に応じて、読むべき遺伝子だけを読む仕組みがある」。それが遺伝子発現の制御だ。

例えば「転写因子」と呼ばれるタイプのタンパク質(1800個程度もある)は遺伝子発現のオン、オフを決める上で重要な役割を果たしている。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製するときに用いるのも4種類の転写因子だ。

「このタンパク質の発現量や活性が高すぎたり低すぎると、遺伝子発現パターンに異常を来し、さまざまな疾患(免疫系においては免疫不全、白血病など)を生じさせる。従って、新たな治療法開発の鍵は転写因子にある」

転写因子の研究は、解析技術の開発によって著しく進展。調べたい転写因子が、ゲノム(全遺伝情報)配列のどこに結合し、どの遺伝子の発現を調節しているのかをすべて明らかにすることもできる。先端研は最新鋭の解析装置を備えており、慢性骨髄性白血病の次世代治療法につながる新たな病態理解といった成果を挙げている。

田村教授は「現代医学の限界を打ち破るべく、横浜から世界に向けて研究成果を発信していく」と話している。(大学院医学研究科免疫学)

【神奈川新聞】


田村智彦教授
田村智彦教授

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