1. ホーム
  2. 社会
  3. 神奈川新聞論説委員、2013年を振り返る(上)座談会 ▼政治・経済

神奈川新聞論説委員、2013年を振り返る(上)座談会 ▼政治・経済

社会 神奈川新聞  2013年12月28日 22:20

特定秘密保護法案を決定した閣議の後、衆院本会議に臨んだ安倍晋三首相(右)と菅義偉官房長官=10月25日、衆院本会議場
特定秘密保護法案を決定した閣議の後、衆院本会議に臨んだ安倍晋三首相(右)と菅義偉官房長官=10月25日、衆院本会議場

夏の参院選で国会の「ねじれ」が解消した。安倍政権は消費税の8%への引き上げを決め、国民の懸念渦巻く中で特定秘密保護法を成立させた。東日本大震災からの復興は停滞気味で、東京電力福島第1原発では汚染水漏れが相次いだ。中韓との関係に改善の兆しはない。核実験を強行した北朝鮮の動向も不透明で東アジアが揺らぐ。環太平洋連携協定(TPP)の協議は難航し、越年となった。内外の混迷を乗り越えていくために何が求められるのか。社説を担当する論説委員会のメンバーがことしを振り返り、2014年を展望する。

■「ねじれ」解消の明暗、ごり押し許されぬ

-「ねじれ」の解消を受けて安倍晋三首相の積極的な国政運営が目立ってきたが、特定秘密保護法の成立強行など、おごりも見受けられる。集団的自衛権の容認や改憲への動きも加速させるだろう。

A 首相の側近である菅義偉官房長官にとって、ことし最大の課題は「ねじれ」の解消だった。向こう3年は国政選挙を無理に構えなくてもよい環境が整った。ただ解消を認めた国民が求めているのは「決める政治」であって「ごり押しの政治」ではない。

I 参院選の与党勝利は民主党政権迷走の反作用が衆院選の時と同様に続いている証しだ。野党乱立の結果、政権批判票が分散したことによる漁夫の利もあった。

H 安倍政権は「決める政治」というより、数を頼みの「強行する政治」の様相だ。秘密保護法は内容も成立過程も問題だらけだ。有権者はそのことを忘れずに次の国政選挙で1票を投じてほしい。

J 与党議員からは「マスコミ報道が一方的」との不満がいまだに聞こえてくる。情報管理と「知る権利」の確保のバランスをめぐり、認識の隔たりが縮まったとはとても思えない。

E 集団的自衛権の行方も気がかりだ。行使容認へ転換するとなれば自衛隊の海外活動の変容は避けられない。米国の戦争に引きずり込まれる懸念も拭えない。

-野党は影が薄い。そんな中でみんなの党が分裂し、江田憲司前幹事長らが「結いの党」を結成した。江田氏は「2015年の統一地方選までに野党再編を起こす」と宣言している。野党巻き返しの可能性や道筋は。

I 自民以外の政党が政権を維持するためには(1)官僚機構熟知(2)官邸勤務経験(3)落選経験-の3条件を持つ人材が必要だ。江田氏にはそれがあり新党は手ごわい。特に日本維新の会の大阪系のメンバーは江田氏を非常に信頼している。大阪系との連携は進むと思う。

J 江田新党の目的は野党再編であり、他党の一部が割れて合流してくるかどうかが成否を分ける。統一地方選までに再編の実績を出せるかどうかが焦点だろう。

A みんなの党が掲げる「政党ブロック」構想と新党構想との綱引きが展開されそうだ。民主党も日本維新の会も野党再編に真剣に向き合ってほしい。まずは党内の不協和音を一掃することだ。

■アベノミクスの行方、景気後退どう回避

-首相の経済政策「アベノミクス」は「デフレ脱却」を掲げているが、物価と賃金の上昇が連動する保証はない。来年4月からの消費税増税の影響など、景気面で見通せない点が多い。TPP交渉の妥結は年明けに持ち越された。政府の成長戦略の効果も未知数だ。楽観はできない。

K アベノミクスは明るい雰囲気を生み出しはした。しかし恩恵を感じているのは限られた人たちだけだ。金融緩和も公共投資の増額も視野が短期的で、長期的な展望に乏しい。消費税増税による景気後退は避けられず、かじ取りは困難を極めるだろう。

I 首相はもともと消費増税には前向きではないとみる。10%への引き上げについては統一地方選への影響をにらみ、見送ると思う。

H TPPについて自民党は参院選公約でコメをはじめとした重要5項目の関税撤廃には応じないとしている。国会決議も行われており方針を堅持するのは当然だ。もし守れないなら合意前に国民へ説明し、理解を求めてほしい。

N 成長戦略の方向性も問われる。環境問題を考えれば原発技術ではなく、再生可能エネルギーに関する技術の輸出こそ日本は志向すべきだ。

E 政府が来春に発表する戦略特区は京浜臨海部の再活性化の弾みになる。これまで以上に自治体との連携強化が必要になる。

-ホテルや百貨店などで食品偽装表示が発覚した。JR北海道のずさんな安全管理、みずほ銀行の暴力団への融資などの不祥事も続き、消費者の信頼が揺らいだ。

K 法律の監視がなければ正当な料理を出せないとなれば商道徳の廃れだろう。食のプロとしてのプライドも全く感じられない。

L 一連の不祥事からは消費者を見下した意識も垣間見える。倫理観の欠如は社会に共通した現象。不況によるコスト削減で優秀な技術者が減ってきたことも背景にある。技術やモラルがベテランから受け継がれなくなっている現状が心配だ。

■問われる外交の力量、避けたいタカ派色

-首相の靖国神社参拝により中国、韓国との関係回復は遠のいた。中国による領海侵犯は常態化し、万一の事態も懸念される。北朝鮮の状況も予断を許さない。安倍首相は対米関係を重視するが、こうした外交方針で打開の道は開けるのか。

J 中国による防空識別圏設定問題は深刻だ。識別圏をめぐる国際的な法的枠組みは明確ではないが、問題は日本が実効支配する領土上空に一方的に設定したことだ。各国への「広報戦」がその行方を左右するのではないか。

E 北朝鮮問題に限らず、中国は外交や貿易面でもアジアでの存在感を強めている。米国一辺倒の同盟強化路線には限界が伴う。集団的自衛権行使の容認といった「タカ派色」を強めれば中国の態度をさらに硬化させるだろう。

J 靖国参拝で安倍政権が韓国とも首脳会談を急がない方針であることが明らかになった。両国民が感情的な対立に陥れば、政府間外交の選択肢を狭める。危機管理のためのパイプを維持しつつ、丁寧に関係改善を模索したい。

【】


シェアする