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伊勢原のストーカー女性刺傷事件 元夫に懲役12年

社会 神奈川新聞  2013年12月05日 23:35

 伊勢原市内で5月、元妻の30代の女性に切り付けるなどして一時意識不明の重体となる傷を負わせたとして、殺人未遂と銃刀法違反の罪に問われた元夫で元塾経営の被告(32)=埼玉県所沢市=の裁判員裁判の判決で、横浜地裁小田原支部の佐藤晋一郎裁判長は5日、懲役12年(求刑懲役18年)を言い渡した。

 判決理由で佐藤裁判長は、鋭利で大型の刃物で首を何度も突き刺す犯行態様などから、女性に対する強い殺意を認定。「何の落ち度もない被害者への逆恨みによる犯行で、その動機は身勝手で酌むべきところは全くない」と非難した。

 さらに、女性のけがについて「強い処罰感情を持つことが理解できるほど深刻なもの」と指摘。被告が罪を認め、被害弁償を申し出ていることなど弁護側の主張を踏まえても、「被害者が1人の殺人未遂事件の中でも相当重い」と断じた。

 同被告は判決言い渡し後、正面に向かって「誠に申し訳ありませんでした」と深く頭を下げた。弁護側は控訴しない方針。

 判決によると、被告は5月21日午前8時ごろ、伊勢原市内の路上で、持っていた包丁で女性の首などを数回突き刺して6カ月の重傷を負わせた上、包丁1本を所持した。

“検閲”に疑問、無念さにじむ

 公判で女性は「加害者と同じ建物に行くこと自体が怖い」として、代理人弁護士が代読する形で意見陳述を行ったが、代読前に裁判長が内容の一部の朗読を制限した。女性によると、認められなかったのは婚姻中の暴力やドメスティックバイオレンス(DV)防止法に基づく保護命令後の被告らの行為で、女性は「不安や恐怖が理解されたか疑問」と無念さをにじませた。

 女性は「意見陳述制度を利用でき良かった」とする一方で、事件は「婚姻中の暴力に始まり、離婚後の嫌がらせや逃げ続けた日々と一続き」と指摘。「裁判官や裁判員に理解されたか疑問」とし、「公正な裁判をしてもらおうと恐怖心や苦しい思いをこらえて準備した。かなわなかったことは残念」とコメントした。

 弁護側によると、公判前整理手続きで、事前の陳述書提出が決定。開示を受けた弁護側が一部の朗読の制限を求めた。

 日弁連の犯罪被害者支援委員会副委員長を務める武内大徳弁護士(横浜弁護士会)は、「陳述の制限は裁判長に認められているが、事前の開示は条文で定められてはいない」と裁判長の対応を疑問視。「事前に求めたのなら『検閲』のようなもので、被害者側に不公平感が残るだろう」と指摘している。

「12年では短い」

 「12年後では子どもが自分の身を自分で守れる年齢になっていない」。判決後、代理人弁護士を通じてコメントを発表した女性は、懲役12年という司直の判断に「短い」と打ち明けた。

 結婚当初から始まった被告からの暴力は妊娠後も続き、逃れるために県外の保護施設に入り、各地を転々とするものの「恐怖を忘れることはできなかった」と振り返った。

 被告が法廷で「今後は被害者に近づかない」と述べたことに対し、「再び危害を加えられるのではという不安でいっぱい」と不信感が拭えないという。

 今回の公判では、被告が女性の居場所を突き止めた詳しい経緯が明かされなかった。女性は「なぜ見つかったのか分からず、いまだに怖い」とおびえる。

 後を絶たないストーカー事件に「すべての危険を未然に防ぐことに限界はある」としながら、「相談先の受け取り方によって人の命が左右されることはなくなってほしい」と訴えた。


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