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障害者施設の実態、「預金がいつの間にか半分に」「子どもは“人質”」

社会 神奈川新聞  2013年10月04日 10:41

軽度の知的障害者が入居するグループホームなどの運営が不適切として、横浜市から相次いで改善を指導されているNPO法人「PWL」(横浜市中区、箕輪一美理事長)。あるいは不満を押し殺し、あるいは不安を抱える利用者や親の姿からは、「弱者を支える」という福祉の理念からかけ離れた実態が浮かび上がってくる。

「もう、1人暮らしは無理かもしれない」。PWLが運営するグループホームに入居する利用者は、不安を漏らした。

1人暮らしのために給料と障害年金をこつこつためてきた。目標の200万円まであと数十万円。だが知らないうちに、銀行口座から数十万円が引き落とされていた。職員に尋ねると、「これまで足りていなかった家賃をまとめて引き落とした」と説明された。家賃は4万5千円だったが、「実際の金額より安くしていた」分の差額だという。

さらに4月から、食材費などを含めて計8万4千円だった「利用者負担金」が、10万円超に跳ね上がった。新しい契約書にサインをした記憶はない。毎月の給料とほぼ同額に当たり、ほかの支出もあって預金はみるみる目減りし、ピーク時の半分まで減ってしまった。

入居以来、いろんなことを我慢してきた。職員は自分より障害が重い利用者の対応に追われ、放置されることが多かった。ケースワーカーに相談したくても、「職員に変な目で見られるかもしれない」と思うと、できなかった。

頼れる家族はいない。職員の顔色をうかがいながら、今の生活を続けるしかないのか-。不安で頭がいっぱいになっている。

子どもの朝食は、菓子パンとジュースだった。「ちゃんと野菜も食べないと」。そう諭した母は、わが子の“反論”に耳を疑った。「うるさいな、PWLではこうだったんだ」

子どもは長くグループホームで生活し、今は1人暮らしをしている。だが、自炊など「自立」に必要な生活習慣は、身に付いていなかった。

法人への疑問は、ずっと抱えていた。月々の収支が分かる明細書は親元には届いていない。同じ法人の別のグループホームに転居しても、親に連絡はなかった。利用契約書も交わしていない。それでも「子どもが喜んでいるなら」と、不信感にふたをしてきた。

8月、PWLの家賃問題を神奈川新聞が報じた。子どもは家賃を取られ過ぎていたようだ。記事には、横浜市の指導を受け入れ返還するとあったが、法人から連絡はない。「施設を出たら関係ないのか」。不信感は増すばかりだ。

「お前、自分がどこ出身か分かってんのか? 少年院に戻すぞ」

昨年まで入居していた男性(20)は、職員から繰り返し、そんな暴言を吐かれた。少年院に入ったのは事実だったが、盗難騒ぎなどトラブルがあるたびに「お前だろう」と疑われ、否定すると「少年院上がりだからうそをつく」と非難された。

昨年7月、我慢できずにグループホームを飛び出した。家族とは音信不通で、友人を頼った。1度、警察に保護されたが、PWLは引き取りを拒否、別の知人の手を煩わせた。その数週間後の9月、事件を起こし、逮捕された。

少年審判の付添人弁護士がPWLに連絡を取ると、「契約解除」を通告する書類を渡された。日付は所在不明となってから1カ月後の8月。約15万円あった預金は、すべて引き出されていた。不審な点を問い合わせたものの、返還はされなかった。

娘の退所から4年が過ぎた今も、両親は怒りが収まらないでいる。

娘のてんかん発作は入居まで年1回程度だったが、グループホームでは月2、3度と頻発するように。近くのスーパーで発作を起こし、救急隊から直接連絡を受けたこともあった。

娘が自宅に帰省していたとき、PWLから「解約通告書」が突然、自宅に届いた。「暴力行為を繰り返し、他の利用者と指導員の安全を脅かす」のが理由とされた。次のグループホームを探す支援はなかった。

一方で入居中、理事長夫妻から「新たに購入したグループホーム用の物件の残金が払えず、子どもたちが屋根の下で年を越せない」と借金を申し込まれ、1千万円を貸した。数年後に利息なしで返還されたが、「弱者の足元を見ている」と父親は憤る。

娘は今、別の施設で暮らす。投薬管理がきちんとされており、てんかん発作は起きていない。

「『じゃあ別のグループホームに行って』と言われると思うと、不満があっても言えなかった」。PWLが運営するグループホームに子どもを入居させていた複数の親は口々に打ち明ける。「実際に別のグループホームを探したが、見つからなかった」と親の一人。将来を考えれば、自宅で生活させることもできない。「子どもは“人質”」。無力感が胸を締め付ける。

横浜市障害支援課によると、今年4月現在の障害者グループホーム数は570カ所で、定員は3045人。一方、市内の障害者手帳の所持者は約14万人に上る。入居希望は多く、「空きが出ればすぐに埋まってしまう」(同課)のが実情で、入居対象も「親の高齢化」「1人では生活できない状態」といった緊急度を優先せざるを得ないという。

市は毎年度40カ所、定員200人規模の新設を計画している。それでも、絶対数が足りていないのが実態だ。

社会福祉法人理事長で県知的障害者福祉協会の役員を務める飯野雄彦さんは、「『親が面倒をみるべき』という意識が強く、グループホームの利用などに負い目を感じる親も少なくない」と話す。社会の受け皿も足りない中で「不満を抑え込んでしまう」といい、「家族会など不満を言いやすい雰囲気をつくった上で、親に『障害者は社会で支える』との意識を持ってもらう関わり方が運営側に必要」と指摘する。

元入居者の親は、こう嘆いた。「ひどい所だとは分かっていた。でも、ここにしか入れなかった。惨めな気持ちです」

◆NPO法人「PWL」の不適切運営問題

運営する障害者グループホームで、利用者から一律4万5千円の家賃を徴収、実際の負担額より過大だったり過少だったりしていることが発覚。就労支援事業や障害児向け放課後デイサービスでも、基準を下回る人員配置や責任者の長期不在などが判明し、横浜市が文書で改善を指導している。また、定款変更した法人の臨時総会を開催したように装った疑いがあるほか、禁止されている監事と法人職員の兼職も明らかになっている。

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