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介助犬「クロエ」と生きる 闘病の車いす女性「社会の理解 広めたい」

社会 神奈川新聞  2013年09月29日 00:19

ジッペラー景子さんとクロエ=横浜市中区
ジッペラー景子さんとクロエ=横浜市中区

手足の筋力が低下する病気と闘う女性が、6月から介助犬とともに横浜市内で働き始めた。ジッペラー景子さん(40)は、クロエ(メス、7歳)と暮らして5年がたつ。社会の認知不足を感じる景子さんは「介助犬に対する理解を深めてもらい、一人でも多くの人の生活を支えてほしい」と話す。

「クロエ、ゴー(行こう)」

電動車いすに乗った景子さんが手綱を引くと、クロエが先導する。段差がないか、障害物がないか。鼻を動かして注意深く確認する。段差がある場所では車いすに取り付けられたロープを口にくわえ、引っ張り上げて移動を手伝う。事務作業中に落としたものを口で拾い、渡す。

景子さんが勤めるのは、IT大手、富士ソフトの特例子会社、富士ソフト企画(鎌倉市)の横浜営業所。自宅との行き来はもちろん、午前9時半から午後6時の勤務時間も、邪魔にならないように寄り添う。

景子さんは16歳のころ、手足の筋力が低下する病気にかかった。入退院を繰り返した後、自立訓練施設に入所し、運転免許も取得。26歳で県内のある自治体に就職し、米国人の伴侶も得た。

一方で、病気は進行した。同僚に拾ってもらったそばから物を落とすこともしばしば。29歳ごろには左目をほぼ失明。医者からの助言もあり、11年間勤めた後、退職した。

「このまま一生、社会復帰できないかも」。恐怖感に襲われた。歩道がない場所では車道を通らざるを得ず、後ろに車の渋滞ができた。段差を上ろうとして車輪が空回りし、立ち往生したことも。物を落としたきり拾えず、諦めたことは一度や二度ではない。

そんなとき、偶然訪れた福祉関連のイベントで、日本介助犬協会(横浜市港北区)に介助犬を勧められた。極度のアレルギー体質で気が進まなかったが、検査を受けたところ、イヌについては不検出。利用に大賛成する夫だけではない、何かの後押しを感じずにはいられなかった。

2008年12月にやって来たクロエは当時、介助犬見習い。自宅での合同訓練が始まった。半日、1日、1週間と徐々に滞在時間を延ばし、翌年3月に正式に介助犬の認定を受けた。「クロエが来て生活は劇的に変わった。クロエがいればどこにでも行ける」

02年施行の身体障害者補助犬法によると、不特定多数が利用する施設などは補助犬の同伴を拒んではならず、民間事業主は従業員の補助犬利用を拒まないように努めねばならない。

しかし、景子さんは周囲の理解不足が深刻だと感じる。「みなとみらい21地区の飲食店や病院でさえ、クロエ同伴だと入るのを拒まれたこともある。就職面接でも『犬は家に置いて、あなただけ来てもらえないか』と言われたこともある」と悔しがる。

「双子のように息が合う」という、生活にも仕事にも欠かせないパートナー。そんな存在を世の人たちにも知ってほしい。

「介助犬はワクチン接種を済ませているし、衛生面でも特に問題はない。理解を得るために、少しでも啓発活動に携わりたい」と理解を呼び掛けている。

身体障害者補助犬 厚生労働省によると障害者の日常を支える「身体障害者補助犬」は盲導犬、介助犬、聴導犬の3種類。介助犬は肢体不自由者の手や足の代わりとなり、日常生活をサポートする。全国で千頭余りが稼働する盲導犬に対し、介助犬は66頭、聴導犬は51頭(9月1日現在)。神奈川県内に7頭いる介助犬は群馬、茨城県など22県では1頭もいない。普及促進が課題となっている。


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