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ビーチ文化と海の家 音楽禁止の余波(中)客数減の西浜、未来向けリセット

江ノ島電鉄 神奈川新聞  2013年09月13日 12:04

夕暮れ時を迎え、静かな雰囲気の片瀬海岸西浜海水浴場。昨年は周辺でダンス音楽の重低音が鳴り響き、飲酒した若者たちであふれていた=8月24日午後6時ごろ
夕暮れ時を迎え、静かな雰囲気の片瀬海岸西浜海水浴場。昨年は周辺でダンス音楽の重低音が鳴り響き、飲酒した若者たちであふれていた=8月24日午後6時ごろ

8月最後の週末。例年なら、短い夏の終わりを惜しむように若者が殺到し、夕刻のビーチは最高潮を迎えるはずだった。

だが、今夏は違った。

「とにかく客がこない。もう正直、限界ですよ」。客足の引きが早く、辺りは閑散としている。嘆きが漏れ聞こえるのは今夏、「音楽全面禁止」を徹底した藤沢市の片瀬海岸西浜海水浴場だ。

シーズン最中のある日、20人ほどの若者が海水浴に来た。音楽もダンスもなく盛り上がりに欠けるビーチを見渡して出た言葉は「やっぱ、由比ガ浜行こう」。ぞろぞろと連れだって、江ノ島電鉄に乗って隣の鎌倉に行ってしまった。

「音楽禁止もいいけど客を呼んでほしい。なんか策を考えてくれないと、もたない」。数年前からクラブイベントの会場として海の家を貸していた関係者は頭を抱える。昨年と比べ客数も売り上げも半分以下という。

家族連れからは、「去年と違って、本当に安心」との声が聞かれた。一方、酒を飲み千鳥足で駅へ向かうビキニ姿の若い女性は「超つまんない。去年もおととしも超盛り上がったのに」と口をとがらせていた。

昨夏約265万人の海水浴客が訪れた西浜だが、音楽禁止となった今夏は「200万人前後」(海の家関係者)と、2~3割減少する見通しだ。

■トラブル急増の芽

「どこも同じだと思う」と、海の家関係者は匿名を条件に集客力のあるクラブイベント開催の仕組みを明かす。

イベント主催者が、海の家を会場として借り、1回当たり数十万円を海の家経営者へ支払う。音楽を選曲して流すDJ(ディスク・ジョッキー)などを含めた会場内の演出は、ほぼすべて主催者側が仕込む。海の家側は、来場者へ酒や飲み物を販売する。

数百人規模の集客と飲食代。海の家にとって、売り上げが確約された“うまみ”の大きな商売になっていった。

合計30軒ほどが店を構える西浜で、こうした業態の海の家は3軒ほどだった。しかし、酒を飲んだ若者らのトラブルは急増し、海水浴場関連だけで110番は一夏で500件近くに上っていた。

■来夏再び“解禁”へ

西浜を管轄する藤沢署によると、今シーズンの海水浴場関連の110番受理件数は前年比で27%減の344件となった。うち、けんかなどのトラブルの通報に限れば6割減少し、駐車苦情や盗難も軒並み4~5割減ったという。署員は「音楽禁止の効果が大きい」と分析する。

一方で、傷害や準強姦(ごうかん)未遂など悪質な事件は依然として発生している。アルコール度数の高い酒を小さなグラスで何度も何度も一気飲みするかけ声は今夏も散見された。やはり「トラブルの大半は酒が原因」(署員)だ。

8月初旬の午後10時、人けのなくなった海岸で準強姦未遂事件の被害者となったのは17歳の少女だった。海の家の桁下で見知らぬ男と2人でいるところを、すんでのところで発見された。少女は泥酔状態だったという。

「いったんリセットしなきゃ西浜に未来はない」。音楽禁止を打ち出した江の島海水浴場協同組合の新井進専務理事は言う。「今年は決意の年だったが、自主規制を徹底して結果を示せた。今後は、来年に向けて音楽ジャンルや音量、イベント内容についてルールを決めていく」と、“音楽解禁”を見据える。

藤沢市観光課も「イベントの開催などで誘客に力を入れる」と、後押しする姿勢だ。

■ ■ ■

片瀬海岸西浜海水浴場が今夏、音楽全面禁止を打ち出し、海の家の“クラブ化”が隣接する鎌倉・由比ガ浜や逗子へ広がった今回の問題。なぜ、茅ケ崎などの西ではなく、東へ向かったのか。

「昔から顔の見える関係で、権利の売買・貸借がない」と話すのはサザンビーチちがさき(茅ケ崎市)の海の家経営者だ。この経営者には今春、初めて音楽イベントの開催打診があった。だが「この辺りは、西浜や由比ガ浜のように建物が近代的な作りになっていない。近隣に迷惑をかけるようなことはできない」と断ったという。

西浜以西のビーチでは、昔ながらの海の家が多く、軒数も少ない。権利を持つ経営者の多くが、運営者を兼ねていることもクラブ化しなかった理由のようだ。

一方、湘南でも圧倒的な若者の集客を見込める西浜では5年ほど前からクラブ化が始まった。逗子海岸では9年前から音楽ユニット、キマグレンによる「音霊(おとだま)」を筆頭に音楽イベントが開催できる防音設備を備えた海の家が増えた。由比ガ浜でもバーカウンター、カフェ風の店が登場していった。

こうした潜在的なニーズや、海の家の経営手法、建物の作り方などの違いから、クラブ化の流れが東へ向かったとの見方もある。

【神奈川新聞】


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