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【逗子市長選】連載(上)・「池子の森」全面返還への道のりは

選挙 神奈川新聞  2018年12月13日 02:00

週末、散策を楽しむ市民や、家族連れらでにぎわう「池子の森自然公園」=11月
週末、散策を楽しむ市民や、家族連れらでにぎわう「池子の森自然公園」=11月

 「ヘイケボタルとゲンジボタルの両方が観賞できる貴重な環境です」「オオルリが良い声で鳴くんですよ」

 秋晴れの11月中旬。池子の森自然公園で、逗子市観光協会主催の散策会が開かれた。

 秋深まる豊かな自然を、参加した市民らに案内したのは、市在住の中村哲治さん(63)。公園で緑地の管理を担うボランティア「池子の森自然公園見守りサポーター」を束ねる世話人会の一人だ。

 サポーターは、希少な動植物が残る公園を守る担い手を増やすため、市が2016年3月に発足した。緑地の管理だけでなく、野鳥の観察会といった企画を立て、ガイド役も務める。

 公園は米軍池子住宅地区(横浜市金沢区、逗子市)の逗子市域に位置する。日米共同使用が実現した約40ヘクタールに整備された。緑の上を駆け回る子どもたちに、日なたぼっこを楽しむ若者…。公園は市民の憩いの場として親しまれている。

 池子の森の歩みも伝えるメンバーは口をそろえる。「サポーターの活動が、池子の森を考えるきっかけになれば」

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 「池子の緑を守りたい」との願いは市民共通のものだ。同地区の歴史は、戦前に旧日本海軍が強制買収し、住民を退去させて造営した弾薬庫にさかのぼる。敗戦後、連合国軍が接収。これに対し、同地区の全面返還を求める運動が、市制が施行された1954年から始まった。

 局面が大きく動いたのは、82年に浮上した米軍家族住宅建設計画だ。84年に市は33項目の条件付きで住宅受け入れを表明したが、賛否で市民が二分され、市長と市議会のリコールが繰り返された。国策であっても地域のことは地域で決めるとの意識が市民の間で広まり、逗子は「民主主義の実験場」とも呼ばれた。

 長く続いた分断の末、94年に大きな節目を迎える。市は33項目を含む合意5項目で受け入れを容認し、国、県と三者合意した。その後、国が同地区の横浜市域への追加建設方針を示したことで、市は合意に反するとして白紙撤回を求め、国を相手に訴訟を起こしたが、敗訴した。

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 市は今、2014年11月に実現した共同使用地の部分返還を図りながら、全面返還を目指している。だが日米両政府は今年11月、県内の米軍施設について04年の合意を見直し、新たな方針を打ち出した。

 同地区の横浜市域での家族住宅建設を取りやめ、代わりに横須賀基地内に独身下士官用の宿舎を建設。同地区の逗子市域には生活支援や運動施設などを整備するとした。

 だが整備する場所や時期など詳細について、国からはいまだ説明はなされていない。

 「緑を壊す計画ではないのか」「新たな施設の整備で、全面返還が遠のくのでは」。市から報告を受けた市議会からは、不安や懸念の声が相次いだ。

 「池子の緑を守る」との歴史をつなぎ、全面返還という市是を守るために、国と今後、どう交渉していくのか。改めて問われている。


逗子市長選 2候補者の政策(届け出順)
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米軍池子住宅地区
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