1. ホーム
  2. 社会
  3. プラごみから地球守れ 日枝小児童、大岡川で“大作戦”

プラごみから地球守れ 日枝小児童、大岡川で“大作戦”

社会 神奈川新聞  2018年12月03日 10:37

大岡川での活動を紹介する日枝小4年3組の児童ら=11月10日、横浜市西区の日本丸メモリアルパーク
大岡川での活動を紹介する日枝小4年3組の児童ら=11月10日、横浜市西区の日本丸メモリアルパーク

 世界的な海洋汚染や、生物への影響の拡大が懸念されているマイクロプラスチック。身近な川から海へと流れ込むのを防ごうと、横浜市立日枝小学校(同市南区)4年3組の児童たちが立ち上がった。市内中心部を流れる大岡川を学んだり、きれいにしたりする活動を通して身の回りのプラスチック製品に関心を広げ、地球環境を守る“大作戦”に挑んでいる。

 「大岡川は、ごみさえなければとてもいい川だと思います。たくさんの生き物が暮らしているからです」

 11月10日、横浜発展の礎となった市内中心部の「吉田新田」とともに、江戸時代に運河として整備された河川に親しむイベント「横浜運河パレード」の会場で、児童たちが今年5月から半年間の活動の成果を20分近くかけて発表した。

 活動名は「『かがやけ!ブルーリバー♡ハッピープロジェクト!』~大岡川でつながり合おう大作戦!~」。川の生き物も自分たちも幸せになるきれいな環境にするために、地域ぐるみでつながろうとの思いを込めた。


衝 撃


 大岡川の環境に関心を持ったきっかけは今年5月、総合的な学習の一環で吉田新田を知るために校外活動中のことだった。大岡川をのぞき込むと、川底には自転車やオートバイ、換気扇などが無造作に捨てられているのが見えた。大量のごみに衝撃を受けた。

 「川の生き物は幸せなのだろうか。この水で暮らしていて大丈夫なのか」

 児童たちは、大岡川の親水施設「川の駅 大岡川桜桟橋」の周辺で市民団体と地元住民らが定期的に行っている清掃活動「大岡川PGT大作戦」を知った。

 主催団体の一つ、NPO法人「海の森・山の森事務局」(同市港北区)理事長の豊田直之さんによると、PGTとは「P=プラスチック、G=ごみ、T=獲(と)ったどぉ」の造語。児童たちは5月から10月まで6回にわたって参加。10月20日には過去最多となる109キロのごみを拾った。分類すると、レジ袋や食品容器などのプラスチックごみは軽いものの、その量の多さに驚いた。

 大岡川は同市磯子区・氷取沢を源流として横浜港までの約14キロを流れる2級河川。写真家でもある豊田さんの出前授業を通じて、日枝小近くの下流域は海水と淡水が混じり合った「汽水域」と呼ばれ、海や川の生物がともに生きる環境にあると知った。児童たちは豊田さんと氷取沢を訪れて自然観察を行い、大岡川では豊かな生態系がはぐくまれていることも学んだ。


気付き


 海を漂うマイクロプラスチックの多くは川から流れ出ている。きちんと処理されなかったプラスチックごみは風に飛ばされるほか、地面を転がったり雨で流されたりして近くの川に集まると、豊田さんが教えてくれた。

 川の周囲をきれいにすることで海の汚れを防ぐことができることを実感したのは、今年7月、大岡川に接した蒔田公園で「PGT大作戦」をしたときだった。

 回収したプラスチックごみは、お菓子の空き袋やコンビニのレジ袋、空のペットボトルなどがあり、公園で遊ぶ子どもたちのものだと分かった。

 「私たちは、気が付かないうちに川を汚していて、海のマイクロプラスチックを増やしているかも知れない」

 児童たちは、校内の廊下のあちこちに学校給食の紙パック牛乳に付いているプラスチック製のストローが落ちていることに気付いた。そこで、校内で落ちているストローを数えることにした。

 1週間をかけて校舎1階から4階までの廊下や教室を調べた結果、合わせて583本を見つけた。「プラスチックごみを減らすためにはストローを使わないようにすればいい」。世界中で広がるストロー廃止の取り組みに賛同し、「ストローを使わない大作戦」を始めることにした。


発 表


 それでも、風で舞い込んだ他クラスのストローが教室内でたびたび見つかった。児童からは、全校ぐるみの取り組みとしてストローを使わないように提案しようという意見が出た。

 給食の牛乳パックはストローを使う前提なので、飲み口は開けづらくて飲みにくい。1、2年生は牛乳をこぼしてしまう可能性があることから、全校展開は壁に突き当たった。

 次に、紙パックではなく、洗えば何度でも使える牛乳瓶を見直そうと議論を始めた。4年3組の教室は校舎の4階で、重い牛乳瓶だと給食当番の負担が大きい。「軽い紙パックの方がいい」との意見が相次いだ。

 児童たちが話し合って挑むことにしたのは「ストローを使わずに、低学年にも飲みやすい紙パックを自分たちでデザインしよう」。


牛乳パックのデザイン案を発表する児童を紹介する豊田さん=11月14日、横浜市南区
牛乳パックのデザイン案を発表する児童を紹介する豊田さん=11月14日、横浜市南区

 最終的には3種類の牛乳パックのアイデアがまとまった。持ちやすい筒型と伝統の三角形。そして従来型に似た四角形のデザインで、それぞれに展開図を描いた。学校給食用牛乳を製造している横浜乳業と、紙パックを納めている日本製紙の担当者にデザイン案を発表することにした。

 児童たちのアイデアをメモを取りながら聞いていた担当者たちは「紙パックはすぐに変更することはないかもしれないが、改良できるところはあるだろう」と口々に感想を述べた。例えば、ストローを使わなくても飲みやすいように、紙パックの口を開けやすくできるのではないか。

 発表会に立ち会った豊田さんは「子どもたちが自ら考えて行動し、社会を変えようとした。大人たちも熱心に話を聞いていて、環境問題を語り合う場となった」と、感動で泣きそうになった。


変 化


 市内の小学校ではストローは使用後に回収され、新しいストローに生まれ変わるという。栄養教諭から教わった児童たちは「ストローを使って飲むのが悪いのではなくて、ストローを落としたまま放置しているのがいけないのでは」と、考えるようになった。

 大岡川が将来、青く透き通るようになり、川の生き物も自分たちもハッピーになるように始めた“大作戦”。同じ思いを持つ仲間を増やしていくことが児童たちの目標だ。

 地球環境のために、具体的に取り組めることは何だろうか-。

 児童たちは全校で「ストローを落とさない大作戦」を始めてみようと呼び掛けることにしている。

 担任の渡邉知和教諭は、児童たちの環境意識の変化に目を細める。「『マイクロプラスチックの問題を知ったことでニュースを意識するようになったんだよ』って言ってくれたのです」

 環境のことを授業で取り上げるのは難しい、という意識はあったと明かす渡邉さん。「地域の人たちや地元企業の協力を得てチャレンジしたことで、児童が身近な生活を見直すという意識を持つようになってくれたことがうれしい」

マイクロプラスチック 大きさが5ミリ以下の微小なプラスチック。包装容器やプラスチック製品がごみとして川から海へと流れ込み、壊れて細かくなったもので、世界各地の魚介類や塩、水道水からの検出が報告されている。


シェアする