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【病院中毒死】点滴殺人で元看護師に4人目殺害容疑 追送検

社会 神奈川新聞  2018年12月01日 02:00

 横浜市神奈川区の旧大口病院(現横浜はじめ病院)
 横浜市神奈川区の旧大口病院(現横浜はじめ病院)

 横浜市神奈川区の旧大口病院(現・横浜はじめ病院)で2016年9月に起きた点滴殺人事件で、入院患者3人に対する殺人容疑で逮捕、送検された元看護師(31)=鑑定留置中=が、別の男性患者=当時(89)=を殺害したなどとして、神奈川署特別捜査本部は30日、殺人容疑などで追送検した。同容疑での立件は4回目。

 追送検容疑は16年9月中旬、同院内で点滴袋に消毒液を混入し、同市鶴見区汐入町の無職男性に投与させて殺害した、などとしている。捜査関係者によると、同容疑者は消毒液の混入を認める一方、男性を狙った認識はないという趣旨の供述をしている。

 捜査関係者によると、男性は同13日に入院し、ほぼ寝たきりの状態だった。同16日までに別の看護師が消毒液入りの点滴袋を投与したとみられ、同日に容体が急変、2日後の同18日午後1時50分ごろに死亡した。

 司法解剖の結果、体内から消毒液に含まれる界面活性剤の成分が検出されたが、当初は死亡との因果関係が判然としなかった。特捜本部は事件性があるとみて、複数の専門家の意見を聴取するなどし、界面剤の中毒症状が死因と結論付けた。

 特捜本部は30日、同容疑者が別の複数の患者へ投与予定の点滴6袋に消毒液を混入したとして、殺人予備容疑でも追送検した。

「全容解明に限界」
難航捜査 大詰めへにじむ悔しさ



 「県警史上、最も難解」(捜査関係者)とされた旧大口病院の点滴殺人事件は、4人目の殺人容疑などが立件され、捜査も大詰めを迎えた。同時期に病院内で死亡した患者の多くは事件発覚時点で火葬されており、殺人容疑での立件は今回で最後となる公算が大きい。「全容解明には限界があった」。捜査関係者は苦渋に満ちた表情で振り返った。

 捜査を難航させた最大の要因は「物証の乏しさ」だった。当時院内に防犯カメラはなく、殺害に使われたとみられる点滴袋は関係者が医療行為で触るため、指紋の検出も決定的な証拠にはなり得ない。病院の性質上、人の出入りには制限がなく、外部犯行説も排除しきれなかった。

 点滴に消毒液を混入するという特異な手口も、解明を難しくした。消毒液に含まれる界面活性剤を使った殺人は「全国でも前例がない」(別の捜査関係者)ため、人体に与える影響や致死量の割り出しなどで一からの捜査を強いられた。

 事件が急転する様相を見せたのは6月末。当初から捜査線上に浮かんでいた看護師(31)が、任意聴取で関与を認める供述に転じたことが契機になった。特捜本部は任意聴取の開始から8日目の7月7日、殺人容疑での逮捕に踏み切った。

 同容疑者はこれまでの調べに対し、10人以上への消毒液の混入を示唆。一方で殺人容疑の被害者は4人にとどまり、供述とは隔たりがある。捜査関係者は「供述以外の証拠を積み重ね、法律に照らして立件できる事件を立件したが、全容解明には至っていない」と悔しさをにじませた。

「真相明らかにして」
犠牲者知人、死悼む



 犠牲となった男性=当時(89)=は職人気質ながらも穏やかな人柄で、皆から愛される存在だった。知人女性(75)は故人の死を悼みつつ、「真相を明らかにしてほしい」と願った。

 女性によると、男性は60年以上連れ添った妻と子ども2人の4人暮らし。若い頃から鉄筋工として現場を飛び回り、筋肉質な体で、端正な顔立ちはよく日に焼けていた。寡黙な半面、近所で会うと顔をほころばせてあいさつを返してくれるのが印象的だった。

 鉄筋工を引退してからは、背広姿で散歩に出掛けるのをよく見掛けた。男性が旧大口病院に入院したと聞くまで、健康面の不調は知らなかったという。訃報に接したが、家族葬だったため、仏壇で線香をあげさせてもらった。

 事件発覚後、警察官らしき複数人が男性宅に出入りする様子を目の当たりにした。「もしかしたら(男性も)被害者なのか」と胸をざわつかせていたという。女性は「せめて容疑者には本当のことを話してほしい」と語った。


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