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ギタリスト/バイオリニスト・SUGIZO
【ひとすじ】国や人つなげる“役割”(下)

社会 神奈川新聞  2018年11月29日 22:10

アイーダ難民キャンプで行ったライブ=2018年10月(佐藤慧さん撮影)
アイーダ難民キャンプで行ったライブ=2018年10月(佐藤慧さん撮影)

 「僕も音楽家になりたい」。

 2016年3月、ヨルダンのシリア難民キャンプを訪れていたSUGIZO(49)は、珍しそうにバイオリンを眺め、もじもじしながら伝えてきた男の子に、かつての自分を重ね合わせていた。


アイーダ難民キャンプで行ったライブ。「楽器に触らせて」と集まった子どもたち=18年10月(佐藤慧さん撮影)
アイーダ難民キャンプで行ったライブ。「楽器に触らせて」と集まった子どもたち=18年10月(佐藤慧さん撮影)

 ロックバンド「LUNA SEA」と「X JAPAN」のメンバーなどとして世界を駆け回る、もっと前のこと。16歳の時、厚木市内の楽器店で出合った1本のギターが自分を変えたことを思い出した。

 バンドを組むまでは、気に入らないことがあれば喧嘩(けんか)をし、人を傷つけていたという。ギターを手にしたことで、拳ではなく、音で感情を表現できるようになった。

 「食べ物がなかったり、暮らす場所に追われていたりするとき、音楽を聴く余裕を持つことは難しい。でも、音楽や文学などの芸術は傷んだ心に寄り添ってくれる」

 アートの力は大きい。それは音楽で人生に変化をもたらされ、親の離婚や借金を背負わされたことに苦しんでいた頃、音楽に助けられた自身が感じてきたことでもある。

 「音楽家は音楽だけやっていればいい」。社会問題を訴える表現者に対し、よく投げ掛けられる的外れな声は気にしない。

 「紛争地で直接、難民支援に人生を使う方法もある。でも音楽を通して国や人をつなげることは、僕にしかできないこと。与えられた役割を全うしたい」。

 思いは今年10月、日本とパレスチナの民間交流を進めている知人の力を借り、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区内での初ライブという形で実った。


 日本から持ち込んだのはギターとバイオリン、最小限の機材だけ。SUGIZOは初めて降り立ったパレスチナ自治区でも、音楽が人を結ぶ力を目の当たりにした。

 キーボードは、イスラエルの占領地ゴラン高原で暮らすシリア人の知人が何時間もかけ、車で持ってきてくれた。シンバルスタンドは、イスラエル人の知人が西エルサレムにある楽器屋に交渉し借りてくれた。

 国籍や民族、宗教が異なる人が一つのライブを作るために力を尽くす。「僕らは手を携え合えることができるということを教えてくれた」と実感した。


アイーダ難民キャンプで行ったライブ。SUGIZOの演奏を聴いた子どもが「僕たちのも見て!」と曲に合わせて側転を始めた=18年10月(眞鍋孝太郎さん撮影)
アイーダ難民キャンプで行ったライブ。SUGIZOの演奏を聴いた子どもが「僕たちのも見て!」と曲に合わせて側転を始めた=18年10月(眞鍋孝太郎さん撮影)

 ラマラでのイベントを終えた翌日、アイーダ難民キャンプでは小学校低学年の年頃の子どもたちが待っていた。街のカルチャーセンターの屋上が演奏の舞台。「何が起きるの」と興味津々の少女が、スピーカーなどを屋上まで階段で運んでくれた。

 演奏を始めると、少年が「一緒にやりたい」と椅子から立ち上がり、演奏中のギターのペダルを踏もうとする。ライブ後はバイオリンを「触らせて」とせがまれ囲まれた。その中に真剣な目を見て取ったSUGIZOは「一人でも音楽をやりたいと思ってくれたら」と願っていたという。

 同じくパレスチナ自治区のナブルスでは、

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