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時代の正体〈651〉外国人受け入れ考(4)移住連集会から

時代の正体 神奈川新聞  2018年11月27日 10:05

外国人人権法連絡会 師岡康子弁護士
外国人人権法連絡会 師岡康子弁護士

【時代の正体取材班=柏尾 安希子】国際社会から差別禁止法を求められ続けながら、きわめて限定されたヘイトスピーチ解消法の制定しか実現していない日本。「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)の集会では、あらためて差別禁止法の整備を訴える声が上がり、包括的な移民政策を求める集会アピールも採択された。

差別禁止法の制定必要


 外国籍の人への差別は、戦前の植民地支配から引き続き、戦後も改めなかった「同じ人間として扱わない差別政策」がもたらしていると思う。象徴的なものは、1965年の入国管理局の高官による「外国人は、煮て食おうと焼いて食おうとかまわない」という発言だ。姿勢は変わっていないのが現実だ。

 深刻な差別の実態では、正規に働いている人に対しても就職差別があるし、働く現場での差別もある。2017年3月に法務省が初めて行った外国人住民へのアンケートでは、過去5年間で入居差別は4割が経験し、就職する時点で差別を経験したのは4人に1人。侮辱的発言を直接言われたことのある人が3割いた。

 このような深刻な差別があるにもかかわらず、禁止する法律がない。現状で外国人をただ労働者として受け入れると、差別を広げるだけになってしまう。

 本来、どうあるべきか。日本が1995年に加入した人種差別撤廃条約が求める義務は、被害者が誰でどのような状態にあるかを調査することや、差別政策を改めること、外国人を平等に扱うための基本法・法律をつくること。また、ヘイトクライムやヘイトスピーチについては差別を広げ、暴力に直結するので刑罰を科すべきことや、人種差別撤廃教育、被害者の保護・救済、国内人権機関の創設、個人通報制度。これらは全く日本で実現していないが、本来は当然備えるべきものだ。

 近年、ヘイトスピーチが悪化してきた。対して、NGO(非政府組織)が共同で求めたのは、ヘイトスピーチだけを何とかするのでなく、国が怠ってきた法整備を求め、出発点として人種差別撤廃基本法をつくることだった。その要望に応え、野党の「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」が2015年に基本法案を出し、対案として与党が出したのがヘイトスピーチ解消法で、16年に成立した。

 これまで国は、「日本にはひどい人種差別が無いので法律を作る必要がない」と言ってきた。だが、解消法は前文でヘイトスピーチが当事者に多大な苦痛を強い、社会に亀裂を生じさせると認め、許されないとした。初の反差別法ではある。

 ただこれは非常に限定された法律で、成果としてはデモの件数がこれまでの半分ほどになったぐらいで、デモ自体がなくなったわけではない。10月14日には(在日コリアンへのヘイト活動を繰り返してきた)在特会の後継団体・日本第一党が、全国一斉に反移民デーとしてデモや街宣を行った。東京ではほとんど毎週ヘイトデモが行われている。

 解消法には禁止、制裁規定がなく、止めることができない。ネット上の被害や公人によるヘイトスピーチはまったく止められていない。技能実習生の取り扱いや就職差別などの全般的なことには全く対処できていない。また、国連人種差別撤廃委員会がことし8月に4回目の対日審査を行ったが、「ヘイトスピーチ解消法は差別をどう許さないのか」という質問があった。そして、「人種差別禁止法を作れ」との勧告がまた出された。

 外国人をさらに労働者として受け入れる議論の前提として、いま住んでいる人をこれだけ差別しているのに解消法しかなく、ほとんど差別を止められていない。まず出発点として、人種差別撤廃基本法をつくることが大前提になると思う。外国人受け入れの議論が進み、焦点が当てられている今こそ、さらにもう一度、人種差別撤廃の基本法をつくる運動を皆さんと広げていきたい。

 =おわり

南米出身女性


 神奈川シティユニオンの組合員で、46年間、日本に住んでいる。その間、いろいろな問題を経験した。

 まずは会社の、外国人への差別が見られる。外国人ということで、いつも厳しい仕事が回され、残業も押しつけられる。ノルマが達成できないと脅される。

 日本人ではないので、読んでも分からない契約書にサインをさせられる。サインした契約書は、私たち労働者のためのものではない。社会保険に入りたいといってもだめだという。「あなた方は、いつか国に帰るから」と。

 47年間、日本に住んでいる同僚は、妻が死んだときに遺族年金を受け取ることができなかった。仕事で事故があっても、私たちに労災の知識がないため、受けられるものであっても受けることができない。

 私は1998年に組合に入った。日産関係の仕事をしていて問題があったためだ。この国に外国人のために働いてくれる組合があることに感謝している。神様が日本を祝福してくださいますように。

アピール全文


 「『単純労働者』は受け入れない」「移民政策ではない」。もう建前は十分だ。その建前の陰で、外国人労働者・移民、外国にルーツをもつ人びとの権利や尊厳がないがしろにされてきた。

 「外国人が増えると治安が悪化する。日本人の雇用条件が悪化する」「外国人が日本の保険制度にただ乗りをしている」。もうデマは十分だ。そうして日本人と外国人の対立が煽(あお)られ、多様な人びとがともに暮らすこの社会の現実は見えなくさせられてきた。

 外国人技能実習生の過酷な労働実態に再び注目が集まっている。周知のように、技能等の移転を通じた国際貢献を目的とする外国人技能実習制度は、実際には、安価な労働力を受け入れる経路として利用されてきた。

 この制度は、技能実習生に家族の帯同や転職の自由を認めないことによって、「労働力」が「人間」として暮らす局面を最大限制限している。それは「『単純労働者』は受け入れない」「移民政策ではない」という建前を維持するために作り出され、維持されてきた制約ともいえる。

 しかし、今明るみになっている技能実習生の数々の人権侵害は、結局、この制度が、彼・彼女らの労働者としての権利を制限し、生活のあらゆる部分を管理下に置くことによってしか維持され得ないことを示している。つまり「人間」を「労働力」としてしかみない制度は、「人間」としての暮らしを制限することによってしか成り立ち得ないのだ。そうして、「人間」としての移民を「労働力」としてしか扱ってこなかったのが、日本の過去30年間の、いわば「移民政策なき移民政策」である。

 今、ようやく、政府から外国人労働者を正面から迎え入れる案が出されたことを私たちは歓迎する。しかしその中身はもはや、移民を「労働力」としてしかみないものである。

 今、私たちは岐路に立っている。過去30年の「過ち」を再び繰り返すのか。それとも現実を直視し、「人間」が「人間」として暮らすことのできる社会をともにつくる方向に踏み出すのか。

 私たちは、「人間」が「人間」として暮らすことのできる社会を求める。なぜなら外国人労働者・移民、外国にルーツをもつ人びとは、すでに「ここにいる」からだ。彼・彼女らは「人間」としてここにいる。国家がいかにコントロールしようとしても、社会がいかに「労働者」として扱おうとしても、この厳然たる事実は変わらない。

 とするならば、彼・彼女らが、「人間」として暮らせるための権利と尊厳が保障されなければならない。この原則に立ち、現在の政府案に関し、以下のことを求める。

 1・多くの人権侵害を生み出して来た外国人技能実習制度を新たな受け入れ制度への入り口とはしないこと。技能実習制度は直ちに廃止すること。

 2・「特定技能1号」「特定技能2号」の区別をやめ、就労可能な他の在留資格と同じように、はじめから家族帯同が認められ、永住につながり得る在留資格を設けること。また新しい在留資格による受け入れは直接雇用によるものとし、技能実習制度の構造に酷似する受入れ機関や登録支援機関などの仕組みは排除すること。さらに外国人労働者に、日本人と同一の賃金を実質的に保障するための体制を整備すること。

 3・「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」の検討にあたっては、管理強化の体制を全面的に改めること。そのためには、出入国管理を司(つかさど)る法務省には司令塔的役割を与えないこと。内閣府もしくは専門的省庁がその役割を担うこと。

 4・外国人労働者が社会の一員として暮らすための体制を整備すること。すなわち家族帯同、日本人と平等の社会保障(健康保険、年金等)、日本語教育、子どもの教育など、生活者としての権利を実質的に保障すること。非正規滞在者については、彼・彼女らの日本社会とのつながりを考慮し、正規(合法)化を認めること。

 5・国籍差別や人種差別の実態を踏まえ、移民基本法、差別禁止法を制定し、移民の権利保障の体制を整えること。


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