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地域力 担う人々
可能性広げる機会に 逗子市で視覚障害者支援イベント

話題 神奈川新聞  2018年11月26日 09:36

インストラクターが視覚障害のある人にも分かりやすく指導したヨガ教室=10月、逗子市逗子
インストラクターが視覚障害のある人にも分かりやすく指導したヨガ教室=10月、逗子市逗子

 視覚障害のある人のための公的な支援施設がない逗子市で、地元在住の眼科医や当事者が支援の輪を広げる取り組みを始めた。実行委員会を立ち上げ、10月に福祉機器を紹介したり、ヨガなどを楽しんだりするイベントを初めて開いた。実行委は「視覚障害のある人に必要な情報を届け、彼らの可能性を広げる機会につなげたい」と話している。

 10月7日。逗子文化プラザ市民交流センター(同市逗子)は、視覚障害のある人らでにぎわっていた。10日の「目の愛護デー」に合わせ、実行委が企画した「ブラインドワールドサポートDAY」の来場者だ。

 「声のする方に注目して」「手と床を水平に伸ばしましょう」。椅子に座ったまま手軽にできる「椅子ヨガ」には約30人が参加。インストラクターの佐藤友見さんの声に合わせ、体と心をほぐした。

 会場には無料で化粧をしてくれるコーナーもあり、ヨガを体験した先天性緑内障の女性(41)は「普段体を動かす機会が少ないので、楽しかった。次はお化粧体験に行きます」とイベントを満喫していた。

 実行委は今春、いけがみ眼科整形外科(横須賀市池上)の副院長で、逗子市在住の眼科医澤崎弘美さんと、当事者2人で発足した。きっかけは病院で昨年、澤崎さんが相談会などを開いたことだった。

 来院した70代の女性は緑内障発症後、ふさぎ込みがちになっていた。相談会で歩行訓練を受けることが決まり、その後、白杖(はくじょう)を使って自宅の周囲を歩けるようになった。一つの支援が女性を前向きに変え、今は「料理をしたい」「iPadを使ってみたい」と話しているという。

 「患者さんと接して感じることは、『支援やサービスを必要としている人に、必要な情報が届いていない』ということ」と澤崎さん。「1人でも多くの患者さんに、生活がより豊かになったり、自分の可能性が広がったりする機会を届けたい」との思いをさらに強くした。

 一方で、公的な支援施設が全ての自治体に用意されていないのが現状だ。当事者らのための福祉施設「県ライトセンター」(横浜市旭区)によると、相談訓練施設や点字図書館などがあるのは、県内では横浜や川崎、横須賀など6市。逗子にはない。そうした現状を改善しようと、澤崎さんらは実行委を組織し、当事者が楽しめ、視覚障害の啓発にもつながるイベントを考えた。当日はセンターが協力し、12団体が相談窓口のほか、音声で時間を知らせる腕時計や弱視用文房具といった生活用品を100種類紹介、体験するコーナーなどを設けた。

 実行委は今後も、同様のイベントを続ける考えだ。メンバーの1人で、6年前から目が不自由になった荒木俊彦さん(71)は「視覚障害のある人らの世界が広がるきっかけになれば」と期待し、澤崎さんは「視覚障害について理解を深める機会を地域でつくりたい」と意気込んでいる。


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