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【減災新聞】横浜市消防団、100%視野 「事業所協力」が奏功

減災 神奈川新聞  2018年11月25日 10:27

事業所から神奈川消防団に入団し、訓練に取り組む新規団員ら(神奈川消防署提供)
事業所から神奈川消防団に入団し、訓練に取り組む新規団員ら(神奈川消防署提供)

 横浜市の消防団員の数が順調に伸び続けている。11月1日時点で市内20消防団を合わせて8211人となり、条例で定める定数を8305人とした2006年度以降で最多。定数に対する充足率は98.9%と、100%の達成も視野に入ってきた。消防団員の減少が全国的な課題となる中、4月以降だけで約400人もの増員を実現。事業所を主な対象に成果を上げる市の団員確保策に、国や他の自治体からも注目が集まっている。

 市消防局消防団課によると、市内18区の20消防団のうち、充足率100%に達しているのは、鶴見、西、伊勢佐木、南、港南、保土ケ谷、旭、戸塚、瀬谷の9消防団。

 横浜市の場合、消防団員の定数は全体を条例で規定し、20消防団の内訳は規則で定めている。70歳の定年制を敷いているため、年度末に相次ぐ退団者も考慮して規則定数を上回る団員を確保する消防団もあり、市全体の数を押し上げている格好だ。

 その一つの南消防団は定数395人に対し、11月現在の団員数は401人を数える。退団者が多かった2012年以降、団員数の低迷が続き、17年4月時点では303人にとどまっていた。当時の充足率は76・7%と県内59消防団で最低だったが、17年度に43人、18年度も既に55人と大幅な増員を果たし、「V字回復」した。

 その背景に、地元事業所への積極的な働き掛けがある。小さな電機店を営む夫婦がそろって入団したのを皮切りに、この2年間で13の店舗や施設などが消防団協力事業所になった。自動車ディーラーや建設会社、福祉施設、病院、保育園など幅広く、訓練会場を提供してくれる学校もある。

 今月仲間入りした「読売新聞関内吉野町サービスセンター」は、新聞販売店では市内初の協力事業所。消防や救急関連の便りを定期的に折り込むなどしていた高田健太所長に協力を求めると、「地域のために貢献できれば」と店長ら2人の入団がすぐに決まった。

 南消防団の涌井正夫団長は「日中に活動できる団員が少ない地域。大きな力になる」と、配達を通じて地元の事情に詳しいのが強みとみて期待している。

 神奈川消防団(田邊省二団長)には10月、独自の試みとして大規模災害時を中心に活動する「特装部隊」が誕生した。

 クレーン付きトラックや重機、小型船舶などを所有する地元企業の「オカベ」「相武造園土木」「マリンサービス ユーワイフラッグ」と協定を締結。それらの操縦が可能な従業員計20人が消防団員となり、専門技能を生かして地域防災に貢献することになった。

 神奈川区は港湾エリアから丘陵部まで多様な地域性があり、大地震や風水害時にさまざまな被害が懸念される。「そうした災害に対する団員の危機感と、地域に根付いた事業所の地元貢献への思いがマッチした」と神奈川消防署。3社には道路復旧や土砂崩れ現場の掘削、水難救助や海水を利用した消火作業などに力を発揮してもらう考えだ。

 11月には、屋形船を運営する「ピア・フォー」も部隊に加わり、船の収容能力を活用した一時避難場所の提供という新たな支援形態も検討している。

 こうした手法や団員の人脈を生かした勧誘が大きな成果を上げ、神奈川消防団も団員数が大幅に増加。12月には定数(430人)100%に届く見通しとなった。「事業所も含め、引き続き団員確保に取り組んでいきたい」としている。

全国総数は減少続く


 横浜市による消防団員確保の成果が際立つのは、全国で団員数の減に歯止めが掛からないからだ。

 総務省消防庁によると、全国に2209ある消防団の団員総数は今年4月時点で84万3661人。1年間で6670人減った。1954年までは200万人を超えていたが、1990年に100万人を割り込み、減少を続けている。

 定数4万4974人と最大規模の兵庫県もこの1年間に277人の減。新潟、長野、福島など定数が3万人を超える各県も軒並み減少した。熊本地震時に消防団が捜索などに活躍した熊本は被災した団員の転居などが響き、全国で最も減少幅が大きい492人のマイナスとなった。


消防団員数の推移
消防団員数の推移

 神奈川は今年4月時点で1万8545人を数え、1年間で全国最多の102人の増を記録。多くの市町で微減傾向となっているが、横浜市がそれらの減少分を埋め合わせる以上の伸びを見せ、県内全体では4年連続の増加となった。県消防課によると、小田原、綾瀬両市と中井町は、団員数が定数を満たす充足率100%を維持している。

自助のヒント 消防団協力事業所
 かつて消防団員の中心だった自営業者が減少し、全国の団員総数の約7割がサラリーマンら被雇用者となっている現状を踏まえ、団員を雇用する事業所の消防団活動に理解と協力を得るため、2006年度に制度化された。勤務時間中の消防団活動への配慮や従業員の入団促進などの取り組みが社会貢献として広く認知されるようにするもので、対象の事業所には表示証が交付される。横浜市は2人以上が入団した事業所や災害時に資機材を提供する事業所などを対象としており、10月現在で106カ所。


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