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時代の正体〈649〉外国人受け入れ考(2)移住連集会から

時代の正体 神奈川新聞  2018年11月25日 09:20

旗手明理事(左)、高橋済弁護士(右)
旗手明理事(左)、高橋済弁護士(右)

【時代の正体取材班=柏尾 安希子】入管難民法改正など政府による外国人受け入れ方針を受けたNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)の集会。技能実習制度や在留資格がない外国人が置かれた状況への問題提起があった。

同じ過ち繰り返す懸念 旗手理事


 新たな受け入れ制度は、技能実習生の問題を抜きに語れないというのは共通認識になってきたのではないか。技能実習制度の廃止はもちろん訴えたいが、ここでは技能実習制度から見た新たな受け入れについて考えたい。今のままでは同じ過ちを繰り返すのでは、と心配だ。


自由人権協会 旗手明理事
自由人権協会 旗手明理事

 「技能実習生権利ネットワーク」にかかわる立場から話す。立ち上げから20年ほど経過し、外国人研修生や実習生のサポートを続けてきた。2006年、(当時の「外国人研修生問題ネットワーク」として)「外国人研修生・時給300円の労働者」という本を出した。ところがいまだに「時給300円」が厳然と存在している。非常に残念だ。

 昨日、ベトナム人の女性実習生から相談を受けた。妊娠が分かったが、管理団体や受け入れ企業は「堕(お)ろすか、帰国するか、決断しろ」と迫り、私たちのシェルターに駆け込んできた。この制度は、このように「人を人として見ない」振る舞いを気兼ねなくするように人を変える恐ろしい制度だということだ。これときっぱり切り離すことなしに、新たな制度を語ることはできないと考える。

 現在の国際的な労働力移動にかかわる送り出し機関、受入機関は、数十年にわたってでき上がっている。新しい制度も、こうした構造の上に新たなパイプが生まれることでしかない。すでに技能実習制度で起こっていることが起こりうるとの前提で、どう制度設計するかと問題を立てねばならない。

 しかし現在のところ、政府が示す施策は技能実習で語り尽くされている制度の繰り返しに過ぎない。今の議論の仕方ではだめだ。実際に日替わりで政府の言うことがころころ変わる。いかに定見なく打ち出されてきたかということが明らかだ。

 新たな制度で受け入れるのは、5年間で最大35万人ほどという話だが、政府は5割から6割ぐらいは技能実習生から移ってくると話している。技能実習を土台とした制度となっており、結局、技能実習生が供給源になるということだ。

 低賃金労働や長時間労働を、乗り越えられるのか。技能実習の賃金については、日本人労働者と同等額以上と法に明記されている。しかし最低賃金にぴったりはりついている。繰り返しになる可能性は極めて高い。

 技能実習の問題点を全くクリアできていないと言わざるを得ないだろう。このままの制度設計で進めることは絶対に許せないと考える。

収容、海外同様の条件に 高橋弁護士


 在留資格がない人のことについて話す。(入国管理局の施設への)長期収容は、ことし8月末に1309人だった。このうち6カ月以上は半分以上で、最長は5年6カ月だった。私の依頼者にも2年5カ月収容されている男性がいる。就労を禁止されているにもかかわらず、日本で生まれた子の生活費を稼ぐために働き、収容された。


東京弁護士会「外国人の権利に関する委員会」副委員長 高橋済弁護士
東京弁護士会「外国人の権利に関する委員会」副委員長 高橋済弁護士

 2016年3月末現在で収容中に仮放免された人は3586人で、うち半数以上が難民認定手続き中だった。仮放免者は在留資格がなく就労が禁止されている。仮放免期間が3年以上5年未満の人は888人、10年以上が46人にのぼった。送還されず、在留許可を特別にもらう状態でもないまま、仮放免の状態が続いているのだ。ドイツでも07年ごろに同じことが社会問題になったが、最終的にはアムネスティ(大赦)のような形で、在留資格を一気に与えた。

 仮放免者は15年秋から就労禁止条件が原則として全員に適用された。違反者は基本的に永久収容となる。先ほど話した男性の例は、就労禁止条件違反だった。傷害事件を起こしても、相当の重傷でなければ実刑になることはないが、子どもを食べさせようと働いただけで2年5カ月(収容されている)。明らかに異常だと思ってほしい。

 難民に関しては、ことしの1月から、新たにさらなる運用の見直しがなされたが、申請を早く処理するのではなく、途中で断念させて帰国させるのが目的と思える。そのため、難民申請者は収容という道に向かう。

 今後、どうすべきか。収容については諸外国と同様に条件を付していくことだ。アメリカでは収容期間が90日、フランスも90日、ドイツは6カ月などと決まっており、要件も逃亡の恐れがある場合に限っている。日本の入管法は60年以上、基本的に収容分野については変わっていない。

 さらに、ドイツのように18カ月間送還しないなら在留資格を与えるとか、他国でやっているようにアムネスティをしていくことなどが必要ではないか。難民については、難民認定機関は最悪でも法務省人権擁護局に置いていただきたい。取り締まりと難民認定が同じ機関というのは異常な事態だ。

 最後に、今回の法改正では(入管難民法改正案)第1条の目的規定の中に在留管理が新たに加わる。行政法は人権の側と公権力の側と二つの利益が書かれるものだが、(今回は)外国人の権利利益については全く書いてない。何とか入れられるように将来的にはがんばって主張していきたい。

本当に外国人守れるか 中国出身の元技能実習生


 2005年4月に日本に来た。栃木県内のイチゴ農園で働き、勤務時間は1日に14、15時間ほど。朝5時から夜8時、9時まで働いた。

 住む場所(の費用として)は月6万円ほど引かれ、毎月の給料はわずか7万5千円ほどだった。残業時間は150時間ほどあった。ただ働きのようなものだ。農家が提携した家のリビングに5人で住んだ。空き部屋はすべて鍵がかかり、使用できなかった。出入りまできびしく制限され、パスポートも取り上げられていた。

 つらい生活が2年8カ月続いたが、突然強制送還されそうになった。理由は明確には分からないが、おそらく許可を得ず(労働組合に窮状を訴えるため)外出したことが一因だと感じる。

 私は日本の現実を学び、理解したいと日本に来たが、想像もつかない残酷な働き方だった。新たに日本に来ようという外国人を本当に守れるのか、と思う。

◆仮放免 法務省の施設に収容されている外国人について収容を停止し、解放する制度。情状や性格、資産などを考慮し、保証金を納付した上で、住所や行動範囲の制限、出頭の義務など一定の条件が課される。

◆難民認定制度 日本が加入している難民条約に基づき人種や宗教、国籍、政治的意見などを理由に国籍国で迫害を受ける恐れがある人を保護する制度。認定されれば就労が可能で、社会保障でも日本国民と同じ待遇が受けられる。申請数が増加し、法務省入国管理局は相当数が就労目的の申請として、申請者の在留や就労を制限するなど申請者数抑制に向けた措置を強化している。2017年の申請者数は1万9628人に対し、認定者は20人にとどまった(速報値)。


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