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新たな共生へ 外国人と介護(上)
学ぶ、日本の先進技能 「いつか母国で生かす」

社会 神奈川新聞  2018年11月24日 02:00

横浜への留学予定者に介護の仕事や勉学の心得を説明する福山さん(右から2人目)=10月、中国・大連
横浜への留学予定者に介護の仕事や勉学の心得を説明する福山さん(右から2人目)=10月、中国・大連

 面談は朝から始まった。会場は中国・遼寧省、大連のホテル。スーツ姿の若い男女が、緊張した面持ちで順番に席に着いていく。

 「まだ日本語が十分ではないので、お年寄りと話をできるか不安です」

 資料を手元に、女性が応じる。

 「日本の介護は、高齢者の表情も見て異変がないか注意しながら支援をしていく手法。しっかり学べば、技術も身に付きますよ」

 会話が、中国語から日本語に変わる。

 「(施設で)会話をするときは、相手の顔を見て話すこと。それと、来日まで日本語の本を読んで、しっかり勉強を、ね」

 介護留学制度への参加予定者を、面談者役を務めた横浜市福祉事業経営者会のコーディネーター、福山満子さん(54)が励ました。中国に生まれ、残留邦人だった母の帰国に伴って日本に移り、多感な少女時代を過ごした。「母国を離れて学ぶ留学生の気持ちがよく分かる」。彼らにとっては、日本で頼れる相談相手だ。

 中国各地から集まってきた彼らは来日後、留学生に週28時間まで認められた「資格外活動」を使い、横浜の高齢者施設でアルバイトに従事しながら、福祉系専門学校に通う。在学中に介護福祉士の国家試験に挑み、日本での就労を目指す。

 彼らには日本は「介護の課題先進国」として映る。中国でも長年の一人っ子政策で高齢化が進み、介護人材の育成は急務だからだ。60歳以上人口は2億4千万人(2017年末、民政部統計)に達している。

 留学予定者の男性(26)が日本語で意気込みを語った。「日本の先進的な介護を学び、いつか中国に帰ったら、地元の高齢者のために施設を経営したい」

悩み解消へ「支援を」

 福祉系の専門学校、湘南医療福祉専門学校(横浜市戸塚区)は4月、初めて海外からの留学生を受け入れた。中国、フィリピン、ベトナムの3カ国から来日した6人が学ぶ。

 クアン・キム・リンさん(23)は母国ベトナムで介護を学んだ後、「世界で最も高齢化の進んだ日本で学びたい」と、留学を選んだ。授業を終えると、アルバイト先の高齢者施設に向かう。

 「日常生活の細かいことにも気を配る介護は勉強になる」。介護福祉士の国家試験に合格して日本の就労資格を得るのが、当面の目標。「将来は経験を積み、ベトナムから来る後輩たちに伝えたい」。福祉分野で日越の架け橋になりたいと考えている。


口腔(こうくう)ケアの技法を学ぶ専門学校の生徒たち。アジアからの留学生も=横浜市戸塚区
口腔(こうくう)ケアの技法を学ぶ専門学校の生徒たち。アジアからの留学生も=横浜市戸塚区

 介護分野の人手不足感は神奈川でも強い。厚生労働省の集計では、ヘルパーや介護福祉士など介護関連職種の有効求人倍率は神奈川で4・35倍(8月現在)。同職種の全国平均3・97倍を超え、全産業平均1・46倍の3倍に近い。

      ■ □

 外国人の「介護」の在留資格は今国会での法改正論議に先駆け、2017年に施行された。背景には、こうした福祉の留学生が日本の国家資格を得ても卒業後に国内で就労する道が開かれていないとの意見があった。

 同専門学校の君嶋博明理事長は「日本では核家族化が進み『おじいちゃん子、おばあちゃん子』が少なくなった今、介護を目指す若者が減った」と痛感している。「留学生は日本を助けに来てくれる人材だ。卒業後の進路が厳しいものにならないように努めなければならない」

 それでも、人材を迎えるための環境整備の行方を不安視する声は少なくない。ある高齢者施設の幹部は「学校関係者が留学生を連れて『学費が払えないので働かせてほしい』と頼んできたことがある」と打ち明ける。

 不慣れな日本で暮らす留学生が業務や職場の人間関係、生活面など多様な悩みを抱えがちな現状に対しても「継続的な支援が必要」との指摘が多い。

      ■ □

 政府が外国人労働者に大きく門戸を開こうとしている。政府方針では今後5年で最大6万人の受け入れを見込むとされた介護分野は、海外人材の活用では先行する業界だ。新たな人材との共生から得てきた教訓とは何か。神奈川の現場から考える。


 ◆外国人介護士受け入れ 日本人の配偶者を持つ在留者のほか、現行制度に基づく外国人介護職のルートは(1)経済連携協定(EPA)締約国からの受け入れ(2)技能実習制度(3)留学生の3種類がある。2017年の改正入管難民法施行で「介護」の在留資格が追加され、介護福祉士の国家資格取得者に在留が認められた。今国会で審議入りした改正関連法案では、一定の技能が必要な業務に就くための在留資格新設などが盛り込まれている。

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