
小笠原諸島の一つ、南硫黄島をテーマにした企画展が12月9日まで、県立生命の星・地球博物館(小田原市入生田)で開かれている。10年ぶりに行われた学術調査の結果に加え、調査の舞台裏や観測器材の進化なども通じ、「日本最後の秘境」と呼ばれる島の知られざる魅力に迫っている。
南硫黄島は東京から約1300キロ、役場がある父島から約330キロ離れた孤島。伊豆諸島の最高峰となる標高916メートル、平均斜度45度の断崖絶壁に囲まれ、淡水もないことから人が定住した歴史がない。1975年に「原生自然環境保全地域」に指定され、一般の立ち入りを禁止した。
学術調査は、東京都や首都大学東京などの協力で2017年6月に行われ、10年前の調査に参加した専門家を中心に、島の自然環境の経年変化を追った。

調査に参加した、昆虫が専門の同博物館主任学芸員・苅部治紀さん(52)によると、島の誕生は約3万年前。約4500万年前に誕生した父島や母島と比較すると島の歴史は浅く、生態系形成の初期段階を確認することができ、ネズミが侵入できないことから海鳥や貝類が豊富なのも特徴だ。
島の固有種が多く存在し、今回の調査では、36年ぶりに「ミナミイオウスジヒメカタゾウムシ」の2匹目の標本を得られた。また陸生甲殻類のうち、「カクレイワガニ」は山頂部まで分布していることが初めて確認された。さらに野鳥が種子を運んだ影響で、断崖絶壁の孤島にもこの10年で外来種が自生していることも分かったという。企画展ではこうした実態を紹介している。
午前9時から午後4時半まで(入館は4時まで)。休館日は月曜日と12月4日。問い合わせは、同館電話0465(21)1515。