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ワンダーボーイ(下)自然体貫くリアリスト 陸上、クレイ・アーロン竜波

スポーツ 神奈川新聞  2018年11月16日 12:24

高校年代を超え、シニア世代との争いに加わるクレイ(写真は8月のインターハイ男子800メートルで初優勝し、校旗を掲げる様子)
高校年代を超え、シニア世代との争いに加わるクレイ(写真は8月のインターハイ男子800メートルで初優勝し、校旗を掲げる様子)

 陸上の男子800メートルで1分47秒51の日本高校新記録を樹立した相洋高2年のクレイ・アーロン竜波。高校入学時からこれまで次々に記録を塗り替えてきたホープは、アスリートとして出色の資質を備えている。

 「まずは性格がピカイチですよね。礼儀もそうだし、下積みもしっかりやる。強くなっても、てんぐになったりすることが全くない」。そう評するのは同高で、2015年アジア選手権男子110メートル障害日本代表の古谷拓夢(早大)らを育ててきた名伯楽の銭谷満監督(52)だ。

 少し照れ気味に控え目な言葉を紡ぐ。高揚感たっぷりの優勝直後も、大言を口にするようなビッグマウスからは程遠い。

 日本記録まで、あと1秒76。もはやシニア世代と肩を並べる存在になり、少しずつ五輪の夢も近づいてきているが、クレイ自身は「オリンピックに出たいというのはあります。でも、出たいと思っちゃうと…。あまり遠い目標は考えないで、目の前の大会を一つ一つこなしていきたい」と話す。自分の力量を把握した上で、コツコツと地道に取り組むリアリストでもある。

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 自宅は江の島から近い湘南ボーイ。米国人の父と日本人の母を持ち、弟と妹の名前にも「波」がつく海を愛する一家だ。父の趣味はサーフィンで、クレイ自身も幼い頃から波に親しんだ。今でも気晴らしを兼ねて、サーフボードを携えて波乗りに向かうこともある。

 小学2年時からライフセービング競技を始め、全国クラスの大会にも出場した。その計り知れぬ潜在能力は陸上の世界でも生かされた。

 「走るのが好きだから」と軽い気持ちで入った片瀬中陸上部では3年時から本格的に800メートルに取り組み、その年に初出場した全国中学校体育大会(全中)でいきなり準優勝。その才能の片りんを見いだした林嗣顧問(現鵠沼中)は銭谷監督の教え子でもあり、さらなる飛躍を目指して強豪の相洋高に進んだのは自然な流れだった。


男子高校800メートルでは初の47秒台となる1分47秒51の新記録をマークしたクレイ(写真は10月の国体少年男子共通800メートル決勝)
男子高校800メートルでは初の47秒台となる1分47秒51の新記録をマークしたクレイ(写真は10月の国体少年男子共通800メートル決勝)

 クレイの体幹の強さを象徴する、最後まで上体がぶれない迫力満点の走りは「(水をかく)パドリングで鍛えられた。砂浜で走ったりもするし、心肺機能が強くなければあれだけのタイムは出せない」と銭谷監督。

 低酸素トレーニングでの回復力の早さも抜きん出ているという。予選から連戦が続く大会で好結果を残すために欠かせられない能力の一つだ。

 中学時代に周囲の勧めで中距離に専念したのが、今振り返れば大英断であった。「日本には、オリンピックに出るくらいの選手は中距離にはなかなかいない。800メートルはやっぱりスピードも持久力も必要なので、400メートル、1500メートルをやって、800メートルっていう考え方が一番いいじゃないかと」

 中学時代から骨折や肉離れなど大きな故障を経験したことがなく、クレイは「大きなスランプもなかった」と振り返る。一方で、練習の休憩時間でも気付けばストレッチボールで体をほぐすなど常に体のケアを怠らない。そういう姿勢に周囲は「競技だけでなく、あいつには勝てない」と尊敬の念を込めるという。

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 学校では難関大学進学などを目指す生徒が集まる特進コースに所属。勉学も競技同様に手を抜かず文武両道を地で行く。

 インタビューの終わり際に「将来どんな選手になりたいか」と質問してみた。

 「しっかり戦える選手。勝負強い選手になりたい」と力強く応じたクレイはしかし、「本当にできるのかというのが先に来ちゃう。ちょっとずつの方がいいかなって」と飾らぬ言葉を継いだ。

 いつも自然体のスタイルは、江の島で波乗りを楽しんでいたころから変わらない。クレイ・アーロン竜波が、日本のトップを走る姿はそう遠くないだろう。


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