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〈時代の正体〉市の判断の問題点に言及せず ヘイト指針検証報告で川崎市

時代の正体 神奈川新聞  2018年11月16日 02:00

川崎市が発表したガイドラインの運用についての検証報告書
川崎市が発表したガイドラインの運用についての検証報告書

【時代の正体取材班=石橋 学】差別主義者らでつくる団体が川崎市文化会館で開いた集会でヘイトスピーチが行われた問題で、市は15日、公的施設でのヘイトスピーチを防止するガイドラインの運用についての検証報告書を発表した。市が会館の使用を許可した結果、重大な人権侵害が生じたにもかかわらず、当面同じ運用を維持する内容となっている。

 報告書は、判断に当たった市人権・男女共同参画室と川崎区がまとめた。差別的言動の恐れがあり、他の利用者に迷惑が掛かるという要件を満たした場合に不許可にする枠組みは「維持が適当」とした。手続きの妥当性については形式的に経過をなぞり「ガイドラインにのっとっていた」と結論付けた。

 ヘイトスピーチが行われたことについては「今後の判断材料にする」としただけで、市の判断の問題点についての言及はなかった。

 唯一、判断材料となるインターネット上の情報の収集に関し、ブログのコメント欄などへの第三者による書き込みの扱いを検討課題に挙げ、「運用面で検討すべき課題が見受けられることから、引き続き改善に向けた検討を進める必要がある」とした。

 問題の集会は極右活動家の瀬戸弘幸氏らが立ち上げた団体が6月3日に主催した。市民団体などは会館の使用不許可を要望したが、市は許可。参加者から「ウジ虫、ゴキブリ、日本から出て行け」との発言があり、動画がインターネットに投稿された。

 福田紀彦市長は「差別的言動の可能性がある不適切な発言が起きた」との認識を示し、ガイドラインの運用の検証を指示していた。

認識不足、運用に限界


 何のための検証か、理解し難い「検証報告書」となった。ガイドラインがありながら、なぜヘイトスピーチを防げなかったのかという自らの判断への考察を欠き、市から説明を受けた報道各社からも「許可までの過程になぜ何も問題がないといえるのか」「結論ありき」と疑問や非難が相次いだ。

 担当者の認識が検証すべき課題を物語る。集会で発せられたヘイトスピーチを市人権・男女共同参画室の担当課長は「ヘイトとは認識していない」と説明。市長発言との整合性を記者に問われて軌道修正したものの、判断の結果生じた重大さを認識できなければ、運用の課題を具体的に列挙し、改善を即断しようがなかった。

 ヘイトデモ・集会を繰り返す瀬戸弘幸氏は12月2日に再び集会を計画し、市教育文化会館の使用を申請している。判断は同室が担う。市職員だけでは限界があり、大学教授と弁護士でつくる第三者機関に意見聴取するべきだとの指摘は市内部からも上がる。担当者の認識不足は、現行の運用の限界と第三者機関招集の必要性を改めて示している。


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