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「夜の津波」に備え 横浜市の居酒屋で避難訓練

社会 神奈川新聞  2018年11月13日 02:00

アイマスクを着けるなどして居酒屋から避難する参加者ら=12日午後7時すぎ、横浜市中区
アイマスクを着けるなどして居酒屋から避難する参加者ら=12日午後7時すぎ、横浜市中区

 夜の津波発生に備えようと、居酒屋からの避難を検証する訓練が12日夜、横浜市中区で初めて行われた。東日本大震災の教訓を踏まえて発案した宮城県石巻市の飲食店団体が協力。居酒屋の関係者は酔客や負傷者の誘導方法を確かめ、同時に自らの身を守ることの難しさを体感した。判断や対応を誤ると、混乱を招きかねないという繁華街特有の課題も浮かんだ。

 「津波警報が発令されましたが、当店は避難施設ではありません。これをもって閉店します」

 停電を想定して真っ暗にした店舗2階で店員らが呼び掛ける中、宴会中の客役ら約80人は懐中電灯などを頼りに階段を下り、避難先の市役所へ向かった。移動の難しい車いす利用者の避難は客にも手助けを求め、非常階段から3階に上がった。参加者からは「落ち着いて行動するのは難しい」といった声が漏れた。

 訓練が実施されたのは、馬車道地区の「よりみち酒場」。一帯は最大級の津波で1~2メートル浸水する恐れがあるが、「津波の備えには取り組んでこなかった」と近藤一美社長(44)。飲食店仲間と結成したグループ「かながわイレブン」を中心に震災を教訓とした防災活動を始め、講師に招いた「石巻芽生会」の阿部司会長(46)から、日本料理店で行った「夜の避難訓練」について聞かされた。

 横浜でも実施しようと準備する中で「店の入る建物や周辺は雑居ビルが多く、近隣の避難ビルも上階がマンションのため、大勢で逃げ込むのは難しい」と気付き、「あらかじめ避難方法を決めておくことが大切」と実感したという。

 訓練の実行委員長を務めた水口憲治さん(50)は「スムーズに誘導できたが、実際はもっと難しい。その点を認識できたことは大きな成果」と強調。視察に訪れた石巻芽生会防災担当の阿部紀代子さん(57)は「繰り返し行えば大きな力になる」と話した。

「救える命増える」


 宮城県石巻市の飲食店団体「石巻芽生会」が「夜の避難訓練」を初めて実施したのは2014年2月。実際にビールを飲んだ客役の誘導を通じ、非常灯を頼りに階段を下りたり、靴を履いたりすることの難しさを体験した。

 その時の実感とともに、階段に蓄光テープを貼るなどの改善策を提案した冊子「料理店の震災談義」を同年10月に発行。同業の飲食店が持つべき心得の普及も図っている。

 冊子では、「大津波警報・津波警報、避難指示が出された時は、安全確保のため閉店します」などと店側の基本行動を示し、客に対しても自らの判断で身を守るよう呼び掛けている。

 2度目の訓練は今年8月、東北のブロック紙・河北新報社(仙台市)の防災企画「むすび塾」で実施。横浜から水口さんらが視察に出向き、今回の訓練につなげた。

 石巻芽生会の阿部司会長は「地震や津波は必ずまた来る。こうした訓練を積み重ねていけば、救える命が増えるはずだ」と訓練の広がりに期待している。


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