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地域力 担う人々
真鶴町、「サテライトオフィス」誘致本格化

社会 神奈川新聞  2018年11月09日 10:07

移住促進へ意気込むNPO法人「結婚相談NPO」の現地スタッフら=真鶴町真鶴
移住促進へ意気込むNPO法人「結婚相談NPO」の現地スタッフら=真鶴町真鶴

 過疎法に基づく過疎地域の指定を受けている真鶴町で、自宅や遠隔地で働ける「サテライトオフィス」を誘致しようという試みが本格化している。出だしは順調で、今年3月に1カ所目のサテライトオフィスが誕生、今月にも2カ所目が稼働する予定だ。働き方改革や人手不足の解消を目指す企業が地方に働き手を求める動きがある中、町はさらなる誘致へ注力している。

 サテライトオフィスは、衛星(サテライト)のように企業・団体の本社・本部から離れた場所に設けられた出先拠点。誘致する自治体側には移住者や新たな雇用の場の創出、開設する企業・団体側には職住近接の働き方の実現や人材確保が期待できる。

 真鶴町も全国の自治体にならい、IT業界を中心にサテライトオフィスを地方につくる動きが広がっていることに着目。2017年度に企業と自治体が集まるマッチングイベントに参加し、今年3月に町内最初のサテライトオフィスの開設にこぎ着けた。2カ所目も今月に運用が始められる予定という。

 「若者の居住者を増やし、明るく暮らせる活力ある町にしていきたい」と、町の担当者は意気込む。

 急峻な地形で大型工場の誘致などが難しい町は、雇用の場が少なく、若年世代が町外へ出ていくことに長年頭を悩ませている。

 20~39歳の女性は05年に850人だったが、15年は517人と、10年で約4割も減少。同年代の男性についても同様の傾向がみられる。サテライトオフィスという新たな働き方を、人口減少の緩和に少しでもつなげたい考えだ。

 町は誘致事業を18年度の重点施策に位置付け、誘致専門の非常勤職員「コンシェルジュ」も採用。在宅勤務の主婦らの雇用を考えている企業や、町の産業や自然環境を活用できる事業者などにターゲットを絞り、マッチングイベントへの参加や視察の受け入れ、イベント企画といったPRのため、当初予算に500万円を計上した。

 5月には町観光協会や商工会などでつくる誘致運営協議会を発足。特設サイトを立ち上げるなど力を入れている。

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 一方、企業・団体は真鶴への進出を決めた理由に、人材の確保を挙げる。

 町内第1号のサテライトオフィスを開設したウェブマーケティング業「ブックスタンド」(大阪市)の笹本正明社長は「都会は他に仕事がたくさんあり、競合が多かった」という。

 インターネット広告やホームページの制作、企業への問い合わせの返信代行業などを手掛けている同社。大阪市を拠点に運営しているが、パート従業員の離職や、求人に人が集まらないといったケースが相次いでいたという。

 徳島県美波町に続いて開設した真鶴町では、町在住の子育て世代の主婦2人をパートとして雇用。2人はスマートフォンやパソコンを使い、基本は在宅で勤務にあたる。研修や会議などの際は、複数の個人事業主などが共同利用する仕事場で、町内にある「コワーキングスペース」を活用するなどしている。

 パート従業員として女性を多く雇っている同社の笹本社長は「すぐに辞めないという点で安心して仕事を任せられる」と開設に成功感をにじませ、さらなる雇用にも意欲を見せる。

 婚活サポート事業を手掛けるNPO法人で、町の交流拠点施設「コミュニティ真鶴」にサテライトオフィスを今月から設ける「結婚相談NPO」(東京都新宿区)も、人手不足で都内の事業者が廃業するケースが見られたことをきっかけに開設を決めたという。

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 事業者側にはサテライトオフィスを置いた地方の課題解決を目指すことで、さらなる事業展開につなげたい目的もある。

 結婚相談NPOは「地方での婚活がうまくいっていない」ことに注視し、若年層の町外流出の課題を抱える真鶴をはじめ、箱根・伊豆エリアで婚活サポートイベントを開催。都市部などから参加者を呼び込み、将来的に町への移住に結び付けたいと考えている。

 影山頼央理事長は「自然が豊かで、周辺地域も魅力的で都市部からのアクセスが良く、移住の条件が整っている」と評価。真鶴で実績をつくり、同じく人口減少に悩む別の地方での事業に発展させていきたいという狙いがある。

 町はサテライトオフィスを設ける企業・団体について補助金などの金銭的な支援制度は設けていないが、「サテライトオフィス認定企業」として認定し信頼性を担保するとともに、求人面などでバックアップする。


サテライトオフィス誘致業務に専従する「コンシェルジュ」の河野篤史さん
サテライトオフィス誘致業務に専従する「コンシェルジュ」の河野篤史さん

 町の非常勤職員として誘致を専従で担当する「コンシェルジュ」の河野篤史さん(35)も、妻、子ども2人とともに町に移住した1人。都心からのアクセスの良さ、豊かな自然など身をもって町の魅力を知る河野さんは「町民と企業をうまくつないでいきたい」と意気込む。

 町は今月、都内で開催されるサテライトオフィスのマッチングイベントに参加する予定。18年度は参加3回目となるイベントで、町は新たな企業・団体の呼び込みを図る。


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