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逗子ストーカー殺人6年 県内過去最多、被害防止模索続く

社会 神奈川新聞  2018年11月05日 02:00

ストーカー被害の防止・軽減策
ストーカー被害の防止・軽減策

 ストーカーの被害者にとって命に直結する個人情報。加害者への漏えいをどう防ぎ、後を絶たない被害をいかに食い止めるか。逗子ストーカー殺人事件から6年。被害者を救うための模索が続く。

 警察庁のまとめでは、全国の警察が昨年1年間に把握したストーカー被害は2万3079件(前年比1・5%増)。5年連続で2万件を超え、統計がある2000年以降で最も多かった。そのうち、県内は1202件で過去最多だった。

医療機関と連携


 度重なる法改正で厳罰化が進み、全国の警察では取り締まり強化に加え、加害者に医療機関の受診を促す取り組みも始っている。

 昨年1月に施行された改正ストーカー規制法では、会員制交流サイト(SNS)によるメッセージの連続送信や自宅周辺などをうろつく行為なども規制対象に加わった。緊急時には、事前警告しなくても禁止命令が出せるようになった。

 県警はストーカーやDV(ドメスティックバイオレンス)などを専門的に扱う部署の体制を順次拡充し、17年4月に「人身安全対策課」を設置。同年11月には、京都府警がストーカーに発展する前の段階から再発防止対応に至るまで支援する「ストーカー相談支援センター」を全国に先駆けて発足させた。

 さらに、全国の警察は16年度から同法で摘発されるなどした加害者に医療機関での治療を働きかけている。ただ、費用は原則自己負担で、受診するかどうかは任意。つきまとい行為をやめさせる有効な手だてとして期待されているが、16、17年度の受診率は2割程度にとどまった。

広がる危機意識


 一方、逗子の事件では市役所が調査会社に漏らした個人情報が加害者に伝わり、惨劇につながった。

 事件の反省から、市は電話の問い合わせには個人情報を教えないことや窓口での本人確認を徹底するなどマニュアルを新たに作成。個人情報にアクセスできるパソコンの管理を厳重にするため、指の静脈による生体認証を導入した。最近では県内外の自治体から視察や問い合わせが増えているという。

 プライバシー問題に詳しい情報セキュリティ大学院大学(横浜市神奈川区)の湯浅墾道教授(情報法)は「個人情報の漏えいが命の問題になりかねないという危機意識が広がり、全国の自治体で厳格な対策が講じられている。事件が与えた影響は大きい」と指摘する。

悪意の依頼防ぐ


 探偵の業界でも新たな動きが生まれている。加害者の悪意ある依頼を見抜き、犯罪に利用されるのを防ごうという試みだ。

 調査会社「JCI」(東京都足立区)の宮岡大代表は今年1月、ストーカー被害者の救済サイト「Save me(セーブ・ミー)」を立ち上げた。被害者に前住所を登録してもらい、全国の調査会社で共有。住所調査の依頼を受けた際、登録情報と照らし合わせて加害者からの依頼かどうか判別するのに役立てる。

 サイトへの登録は無料。現在、全国から数十人の登録があり、東京を中心に賛同した約60の調査会社が名を連ねる。「依頼者が意図的にだまそうとした場合、見抜くことはかなり難しい。探偵が犯罪に手を貸すのを防ぐことで、被害者を救いたい」と宮岡さんは語る。

 事件が起きたあの日から何が変わり、何が変わっていないのか。

 被害者らの相談に応じるNPO法人「ヒューマニティ」(東京都中央区)の小早川明子理事長は法制や体制の整備が図られたことを評価しつつ、自治体にはさらなる対応を求める。

 「被害者だけでなく、加害者やその家族が気軽に頼れるストーカーに特化した相談窓口を設けるべき。状況に応じた情報や治療プログラムにできるだけ早くつなげられれば、重大事件への発展を防げるはずだ」


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