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「搾取深刻、相談できる環境を」 産婦人科医 種部 恭子さん
デートDV防止全国ネットワーク(下)思春期の子どもと妊娠

社会 神奈川新聞  2018年11月04日 11:21

10代の妊娠について講演する産婦人科医の種部恭子さん=東京都内
10代の妊娠について講演する産婦人科医の種部恭子さん=東京都内

 交際相手からさまざまな暴力を振るわれるデートDV(ドメスティックバイオレンス)は、若者の望まない妊娠・出産にも深く関わっている。NPO法人化を前に開催されたデートDV防止全国ネットワーク(横浜市神奈川区)の「設立記念シンポジウム」では、デートDVと10代の妊娠との関係、防止教育で何ができるかを考える場を設けた。基調講演では、産婦人科医で内閣府の「女性に対する暴力に関する専門調査会」委員なども務める、「女性クリニックWe!富山」院長の種部恭子さんが「医療現場で見る10代の妊娠と課題」について語った。 

 思春期の子どもを診察することをライフワークにしており、10代の妊娠・出産に長く向き合ってきた。性を取り巻く現状は非常に変化している。

 富山は性教育の先進県で、私も多くの学校に行っている。2007年ごろに、富山市の中学2年生から高校3年生までの男女に性行為受容度を聞いた。その結果によると、中学2年生の男子はまだ「寝た子」。3年生になると男子も性的な興味がわいてくる。ホルモンが働けば性的なベクトルが上がるのは健康なこと。行為をすることがいいかどうかではなく、心の発達のレベルがこうなっている。

 性交経験率の調査報告を見ると、08年は高校3年生でだいたい40~50%が経験している。14年の調査では、精神的な発達が遅くなり、草食化が起きているためか、性交開始年齢が遅くなった。

 ただ、中学1、2年生で性交経験を持つのは健康な恋愛とは思えない。14年のデータでは、女子は中学1年生の0・9%、中学2年生の1・1%に性交経験があるが、(この年齢の)男子で性交を肯定する人はほぼいない。この子どもたちの相手は自分より年上の大人で、支配の関係や搾取、暴力がある。

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 16年の10代の妊娠中絶件数は全国1万4666件。10代の中絶率は1995、96年ごろから急激に上がった。子どもの性を商品にした時代で、女子高生ブームで性的な搾取が起き、高校生や10代の中絶が増えた。最多だった2002年以降減ってきているが、子どもたちの性を巡る状況がよくなったとは私は思えない。

 深刻な性の問題があるのになぜ減っているのか疑問で、1歳刻みでデータを見た。この10年で、17~19歳で、健康な性的発達をして恋人ができた後に中絶したと考えられる人は約4割減っている。だが、10代でも15歳以下では3割ほどしか減っていない。15歳以下の子どもが性交している相手は大人。とてもリスクが高い性行動を取っている。

 10代の出産は性交経験率の低下と同様に、15歳から19歳は確実に減っている。一方、14歳以下の出産は16年に46件。これは出生届を出せた人で、死産やどこかで遺棄した人は入らない。それも含めると年間100件程度と理解している。

 15~19歳での第2子出産は1270件。短いスパンで次の子どもを産む。パートナーも同じ人とは限らない。

 10代で妊娠して学校を退学したとする。子どもとの時間を確保しつつ、中卒で仕事ができる場所は決まっている。この年代の女性が短時間で収入を得られるのは風俗。高卒資格があったら、違う仕事につけたかもしれない。この人たちは非常に困難な状況に置かれていると考えている。

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 大変だと分かっているのになぜ出産するのか。中絶の遅れが一つ。妊娠に気づかない、気づきたくない。相談できる状況にない。性虐待で加害者が口止めしているケースもある。

 それからぬくもりへの依存。3世代で暮らす立派な家庭の14歳の子が、妊娠したとき「初めて家族ができた」と言った。この言葉が忘れられない。今までいた人たちは、家族の役割を果たしていなかったということだから。

 米国に10代の出産についての研究がある。それによると、10代の妊娠の半数は初経験から半年以内に起こる。出産した10代の半数は高校を卒業できない。貧困につながる。そして、10代の母から生まれた子どもは思春期に同じような行動を取る可能性が高い。

 経済的な問題、あるいは社会的に生きる力がない状況が一番の問題。これを止めなければならない。国を挙げて方向を変える必要がある。

 とにかく居場所がない子どもたちがいる。SNS(会員制交流サイト)に「泊めて」と書き込むといっぱいつながってくる。そこから選ぶと、性交しないと泊まれない。インフォーマルな形の風俗と同じ。生き延びるために性を使い、搾取が起きている。

 産むことで苦しい家庭から逃げられると思っている子もいる。優等生が多く、ぬくもりや居場所を求めていろいろなところに行く。DV家庭で育った子にとても多い。共通点はさみしさ。予期せぬ妊娠をしたかった人はいないと思う。内閣府の調査でも出ているが、リスクの高い性行動をわざと選んでいる。

 JKビジネスなど、すぐお金をくれるところがある。子どもの性の搾取は非常に深刻だ。子どもたちはSNSでつながるが、搾取する人はスピードが速くて、すぐに返事を送る。この時間の差で(支援する側は)負けている。家出して「泊め男」に会い、暴力を振るわれる。即レスで優しい言葉をかければ来るだろうと、弱っている子を探している。そこに行ってしまうのが大きな問題だ。そこで妊娠が起きても子どもの責任にされ、誰も守ってくれない。

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 性のトラブルをペナルティーにしないために、まず助けを求められればいい。即レスに勝てるぐらい支援者が身近にたくさんいて、そこに行っても怒られないことが大事。いつ、どこに、どんな状況になったら相談するか、知識が必要だ。

 10代が医療にアクセスしてこないのは、医療費がどれぐらいか分からない、保険証を使うと親にばれるのが心配、これがすごく多い。親が加害者というケースや、(親の)同意の問題もある。それらが10代の出産につながる可能性がある。妊娠の段階で相談してもらうことが必要だ。そこで「よく来たね」と、高い敷居を越えて来てくれたことを褒めてほしい。それまで誰にもつながれなかったのが、妊娠やその心配をきっかけにつながれたことは立派。

 英国の研究で、子どものころに虐待や(子どもの前で家族に暴力を振るうといった)面前DVを受けると将来的に影響を及ぼすというデータがある。そこから救い出すと、子どもの人生が変わる。私たちがやっていることは本当に小さい。でも、それで1例でも救われれば将来のリスクが減る。見えないが、めげずに繰り返すしかない。やってむだなことはない。


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