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大磯町長選(上)観光 住環境と両立に課題

選挙 神奈川新聞  2018年11月01日 10:30

旧大隈重信邸を案内するガイドら=明治記念大磯邸園
旧大隈重信邸を案内するガイドら=明治記念大磯邸園

 「伊藤博文に大隈重信、吉田茂…。この大磯には歴代8人の首相が暮らしていました。まさに大磯で閣議が開けるくらいです」。市民ガイドの解説にツアー客15人が熱心にうなずく。

 ここは、10月23日から初めて一般公開されている明治記念大磯邸園(大磯町西小磯、東小磯)。緑地帯を含めた約6ヘクタールに、伊藤博文の旧邸「滄浪閣(そうろうかく)」のほか、大隈重信と西園寺公望、陸奥宗光の旧別邸が並ぶ。

 いずれも現在は民有地だが、国などが土地を買い上げて公園として一体的に整備していく方針。これまで住民すら見ることができなかった地元の歴史遺産が初めてベールを脱ぎ、県内外から注目されている。

 「朝から電話や人がひっきりなし。2人のスタッフでは対応しきれない」。JR大磯駅前の町観光協会はうれしい悲鳴を上げる。公開初日に訪れた地元の男性(69)も「10年前に引っ越してきてから、ずっと見たいと思っていた。これほどの歴史遺産が大磯にあったとは」と興奮気味に語る。
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 「湘南」発祥の地である大磯には、立憲政治の礎を築いた元勲や財界の大物、文豪たちが競うように別荘を建てた。しかしながら多くの歴史的な資産を有効活用できず、長く“宝の持ち腐れ”が続いていた。

 実際、民有地の滄浪閣と旧西園寺邸は保存状態が悪く、公開のめどが立っていない。かつて民間所有だった吉田茂の旧邸も保存に向けた議論が進むさなか、2009年に焼失した。

 「このまま朽ちていくだけと思っていた歴史遺産が公開される日が来るとは」とNPO法人大磯ガイド協会の浅見和男会長は感慨深げに話す。大磯邸園の整備は地元の悲願でもあった。

 再建された吉田茂邸は昨年から一般公開され、これまでに13万人が訪れた。20年には大磯港ににぎわい交流施設「みなとオアシス」が開業する予定。町は大磯邸園と合わせ、3施設を新たな観光の核にしようともくろむ。

 大磯邸園公開の式典に参加した黒岩祐治知事も「東京五輪も追い風になる。大磯を横浜、鎌倉、箱根に次ぐ『第4の観光地』にしていく。大磯は再び輝きを取り戻す」と息巻いた。
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 一方で、課題も多い。

 歴史的に別荘地として発展した大磯町内にまとまった商店街はなく、飲食店も少ない。40人以上の団体客を受け入れられる飲食施設は町内に3カ所だけだ。

 町観光協会の石井晴夫専務理事は「大磯では見るだけで、食事は小田原や平塚に観光客が逃げてしまっている。受け皿が弱いために(波及効果を受けられる)機会を逸している」と分析する。

 車が入り込めない細い路地が多い道路事情も悩みの種だ。国と町などは大磯駅前広場や海岸沿いに自転車道などの整備を進める。町が「大磯巡りは自転車か徒歩で」と呼び掛けるのも、観光地としては脆弱(ぜいじゃく)な交通環境の裏返しだ。

 そもそも観光地化に抵抗感を示す声もある。

 閑静な住環境を求め、大磯に移り住んできた住民は多い。ガイド協会の浅見会長は「人が来てにぎわうのはいい。でも、鎌倉のような観光地になることは誰も望んでいない」と断言。町観光協会の石井専務理事も「静かな住環境が崩れるようなら観光施策も住民の支持は得られないだろう」と口をそろえる。

 町幹部は「ただ人を集める薄っぺらい観光地にはしたくない。学術的な価値がなければ大磯のブランドとして認められない」と大磯独自の“高級志向”を掲げる。


大磯町内の歴史的建物
大磯町内の歴史的建物

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