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沖縄考
時代の正体〈646〉民主主義を取り戻す 記者の視点=報道部・田中大樹

時代の正体 神奈川新聞  2018年10月28日 11:44

沖縄県知事選の告示日、玉城氏の演説を聴く人々=9月13日、那覇市
沖縄県知事選の告示日、玉城氏の演説を聴く人々=9月13日、那覇市

【時代の正体取材班=田中 大樹】 9月30日夜、台風24号が列島を縦断し、関東地方を襲っていた。JR東日本が首都圏で初の全線計画運休を実施し、暴風雨が吹き荒れる街に人影はない。その猛威を報じるテレビ画面に視線を落としていると、速報が流れた。

 〈沖縄県知事選、玉城氏当選確実〉

 この国にもまだ、民主主義が生きていた-。

 それが第一印象だった。

 歓喜に沸き立つ陣営の様子が大写しにされる。沖縄の手踊り「カチャーシー」を舞い、全身で喜びを表現する玉城デニー氏の姿を眺めつつ、知事選告示日の光景を思い起こした。

 9月13日の夕刻、私は沖縄の中心部、那覇市の県庁前交差点にいた。急逝した翁長雄志前知事の遺志を継ぎ、辺野古新基地建設反対を掲げる玉城氏がマイクを握る。そびえ立つ県庁舎の前で「ハイサイ(こんにちは)」と第一声を発した。

 「政府に頼らない。ウチナーンチュ(沖縄の人)は自主自立の力を持っている」。刻々と日が暮れゆく中、一帯は玉城氏の一言一句に耳を傾ける民衆で埋め尽くされていた。

 「皆さま、お隣の方と手を握ってください」。街頭演説の最終盤、応援に立った翁長氏の次男で那覇市議の雄治氏が呼び掛ける。翁長氏や玉城氏の写真入りプラカードを抱えた女性も、会社帰りに足を止めたサラリーマンも、見知らぬ者同士が声を掛け合い、互いの手を取り始めた。

 「お兄さんたちも、さぁ手を出して」。年配の女性が買い物袋を持ち直し、左隣の若いカップルに促す。

 果たして、玉城氏の演説に聞き入ったという一点で結ばれた老若男女が手をつなぎ、心一つに「頑張ろう」と三唱した。

 「先ほどのカップル、観光客ですよ」。得票にはつながらない。年配の女性にそう話し掛けると笑顔が返ってきた。

 「平和を願う気持ちに沖縄もヤマト(本土)も関係ない。イチャリバチョーデー(一度会ったら皆きょうだい)。沖縄を忘れないでと、思いを込めて手を握ったから大丈夫」

 一呼吸置き、言葉を継いだ。

 「沖縄のニュースをヤマトで見たとき、『頑張ろう』って一緒に声を上げたのを思い出してくれたら、うれしいさね。記者のお兄さんも、しっかり伝えてちょうだいね」

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