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時代の正体〈644〉性的少数者と人権(下)多様な性という豊かさ

時代の正体 神奈川新聞  2018年10月25日 11:00

やました・としまさ 弁護士、LGBT支援法律家ネットワークメンバー、東京都豊島区子どもの権利委員会委員。共著に「どうなってるんだろう? 子どもの法律」(高文研)、「子どもの人権をまもるために」(晶文社)ほか。1978年、高知県生まれ。
やました・としまさ 弁護士、LGBT支援法律家ネットワークメンバー、東京都豊島区子どもの権利委員会委員。共著に「どうなってるんだろう? 子どもの法律」(高文研)、「子どもの人権をまもるために」(晶文社)ほか。1978年、高知県生まれ。

【時代の正体取材班=田崎 基】「セクシュアル・マイノリティーと人権」をテーマにした講演が県内の自治体担当者ら向けに行われた。全体集会でマイクを握ったのはLGBT支援法律家ネットワークのメンバーで子どもの人権にも詳しい山下敏雅弁護士。性的少数者の人権や、その尊厳を考えることは、私たち一人一人の人権を考えることだと訴えた。今月11日の講演詳報の最終回。



 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとって「LGBT」と総称しています。

 「性」は男と女の二つだけではなく、実に多様だということです。三つの視点で考えてみてもらいたい。

 一つ目は体の性別。二つ目は自分が自分の性別をどう思うか(心の性、性自認)。三つ目がどういった性を好きになるか(性的指向)です。

 一般的に「男」と呼ばれている人は、体の性別が男性で、自分の事を男性だと思い、女性を好きになる。

 トランスジェンダーの人は、体と心の性別の違いで苦しさを感じている人です。例えば、体は男性だが、自分のことを女性だと思っている人や、あるいはその逆です。

 ここで重要なのは「トランスジェンダー」とひとまとめて言っても、心と体の性別の食い違いについて、どのように困っているのかは人ぞれぞれ異なる、という点です。

 小学校に入る前から、自分の体の性別に強い違和感を覚えている子どももいる。「なんで男性器がないのか、後から生えてくるのか」と思っている子もいる。思春期に入り胸が膨らんできたり、のど仏が出てきたりすることで違和感を持ち始める子もいる。

 他方で、なんとなく違和感を持ちながらも生活し、40代、50代になってはっきりと自覚する人もいる。

 また、心と体の食い違いについてどのようにバランスを取るのかも、人によってそれぞれ異なる。

 週末だけ自分らしい性別の服装をすれば大丈夫だという人もいれば、ホルモン療法をして生理を止めるとか、ひげが生える程度で十分という人もいる。

 そして中には、体を変える手術をしなければバランスが取れないという人もいる。

 つまり、トランスジェンダーの人々全員が体の性別を変えることを望んでいるわけではない、ということです。

 2003年に性同一性障害特例法が成立し、これまでに約7千人が性別を変えました。ところがこの法律には問題があります。

 要件が厳しい。特に、元の性別としての生殖能力を喪失しなければならず、さらに、なりたい性別の外性器を作らなければいけない。

 果たしてこんな要件は必要でしょうか。人によってバランスの取り方は多様であって、全てのトランスジェンダーの方が性別適合手術を望んでいるわけではありません。手術には高額な費用もかかります。体へのインパクトも大きい。命の危険もある。

 そうした手術を望んでいる人であればいいが、そうではなく、法的に性別を変えたいだけのために手術が迫られるというのはおかしな法制度です。

 この条件があるがために、戸籍上の性別と社会生活上の性別が異なったまま、職場など社会生活のさまざまな場面でトラブルが起き、当事者は苦しんでいます。

 欧州では性別を変えるための手術は必要ないという国が増えてきました。

 次に、二つ目と三つ目の話です。自分のことを男性だと思っていて男性のことを好きになる。男性同性愛者のことをゲイといい、女性同性愛者のことをレズビアンといいます。

 男性のことも女性のことも好きになる人のことは両性愛、英語でバイセクシュアルといいます。


山下弁護士の講演に聞き入っていた自治体担当者ら=10月11日午前、横浜市開港記念会館
山下弁護士の講演に聞き入っていた自治体担当者ら=10月11日午前、横浜市開港記念会館

 単純化して説明していますが、人の性的指向も「100%男性のことが好き」というように単純ではありません。9割異性が好きで、1割は同性も好きになる、という人も少なくありません。この割合は生まれつき決まっているもので、変えたくても変えられるものではありません。

誤解の否定


 こうした言葉の説明は、あくまで「およそこのような違いがある」という理解であって殊更、人を分類するために説明しているわけではありません。LGBT以外のセクシュアリティーもあります。大切なことは、性が多様であって、全ての人が「当事者」であること。

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