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古風な物語 感情色濃く 劇団新派が「犬神家の一族」舞台化 

カルチャー 神奈川新聞  2018年10月18日 11:21

 不気味な白いマスクの男、逆さまに突き出た2本の脚。映画でも有名な「犬神家の一族」を、劇団新派が舞台化、11月に東京、大阪で上演する。明治からの演劇の伝統を継承する新派と同作はやや意外な取り合わせにも映るが、上演の狙いは?

ぴったり

 「原作を読んだら新派にぴったり」。制作発表会見で、新派の波乃久里子はこう語った。

 原作は財閥創始者の遺言状に絡み、殺人が相次ぐ横溝正史のミステリー。かぎを握る琴の師匠を水谷八重子、犬神家の長女松子を波乃とベテラン勢が扮(ふん)し、名探偵金田一耕助を喜多村緑郎、犬神家三女梅子を河合雪之丞が演じる。劇団外から佐藤B作、ジャニーズ事務所所属の浜中文一が共演、多彩な布陣だ。

 戦後間もない旧家を巡る人間関係が感情色濃く描かれる。「物語が古風で新派の世界観に通じるものがある」と制作する松竹の担当者は言う。


インタビューに応じる劇団新派文芸部の斎藤雅文
インタビューに応じる劇団新派文芸部の斎藤雅文

風俗風習

 新派創始は130年前の1888(明治21)年。歌舞伎を「旧派」とみなす演劇ジャンル「新派」として多くの演者、劇団、形態が出現し離合集散も繰り返された。現在に続く「劇団新派」となったのは1949年だ。

 各時代で新作が生まれ、名作は繰り返し上演されてきた。明治期には尾崎紅葉「金色夜叉」、泉鏡花「婦系図」、大正に鏡花「日本橋」などが舞台化。昭和初めに川口松太郎「明治一代女」、戦後は北條秀司「京舞」などが生まれ、最近は山田洋次監督による舞台化で「東京物語」なども上演された。

 その時代の空気や情趣、人情を丁寧に描いて見せるのが特色で、伝統だ。新作を上演する場合でも「結果的に風俗風習が外れてはいけない」と水谷は力を込める。

美と愛惜

 今回、脚色・演出を手掛ける劇団新派文芸部の斎藤雅文は、「犬神家-」の登場人物の「情の濃さ」に注目する。「『犬神家-』は誰かのためにと愛情から殺人を犯す。愛情あふれるあまり、人をあやめてしまうのは『明治一代女』など新派名作にもある」と語る。

 新派には近年、歌舞伎界から喜多村、河合が入団。10月2日までは水谷、波乃とこの二人を中心に「華岡青洲の妻」を巡演。名作上演の一方、斎藤は喜多村、河合らと江戸川乱歩原作「黒蜥蜴」なども舞台化、新派の新たな動きを模索する。

 斎藤にとってキーワードは「美」と「愛惜」。「新派にはかつての明治、大正、昭和の日本を愛惜するセンチメンタルがある。崩壊していく家を描く『犬神家-』にも“古き良き日本の残照”が差す」と指摘。「美しいものが失われ、別のものに替わる。新派の舞台を通じて、今の日本をも映し出すことができたら」


舞台「犬神家の一族」のポスター
舞台「犬神家の一族」のポスター

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