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横浜、建功寺住職の枡野さん
戦禍の傷、癒やす空間に ラトビアの「慰霊公園」設計 

話題 神奈川新聞  2018年10月09日 02:00

数多くの人々の心を一つにする空間をつくることの意味を語る枡野俊明さん=横浜市鶴見区の建功寺境内
数多くの人々の心を一つにする空間をつくることの意味を語る枡野俊明さん=横浜市鶴見区の建功寺境内

 横浜市鶴見区にある建功寺の住職で庭園デザイナーの枡野俊明さん(65)が、東欧のラトビアで設計を手掛けた「慰霊公園」の整備が進んでいる。このほど一部が完成し、現地でセレモニーが開催された。設計採用から13年。戦禍に傷ついたラトビアの人々の心を一つにしようと形作られた半円形の会場を中心とする公園は、いつとも知れぬ全体完成に向けて、ゆったりとした時を刻んでいる。

 「ラトビアでは第2次世界大戦の強制連行などで約60万人が亡くなった。その遺族の傷ついた心をここで慰霊する。その意味や、安らぎの時を過ごすことに思いを巡らし、空間を形作った」

 枡野さんが提案した設計は2005年、国際コンペで207点の中から選ばれた。「運命の庭園」と名付けたプロジェクトとして翌年に着工、多くのボランティアによって工事が進められた結果、一部が完成し、今年8月に式典が行われた。

 公園は約42ヘクタール。首都リーガから東へ100キロのダウガヴァ川沿いに浮かぶ島に設計された。中心を成す半円形の会場を設け、周囲に森や回遊路、丘などが造られる。


中央の円形会場がほぼ完成を迎えた公園。これからエントランスの建物や周辺の工事も進められる=ラトビアのクワクネセ(枡野さん提供)
中央の円形会場がほぼ完成を迎えた公園。これからエントランスの建物や周辺の工事も進められる=ラトビアのクワクネセ(枡野さん提供)

 亡き人を思い返し、自身を顧みて行く末を見詰める。そうした営みは人の心を豊かにし、支える。犠牲となった60万人の心を持ち寄るという意味を込め、遺族に呼び掛けて大小の60万個の石を募り、川に面して直径約120メートルの半円形をした石垣を造った。

 その中央には湖上の水面に浮かぶように献花台となる石を置き、ここを「祈りの空間」に位置付けた。

 提案を練るとき、枡野さんはラトビアの宗教史について考察した。「石や川、山といった自然のものに神を感じるという、日本に近い多神教の歴史があった」。そこで太陽や方角、湖面や石といった自然を意識し空間を設計した。湖上に太陽が沈む。水面(みなも)が焼ける。その光景が背後に映り込むように献花台を配置したのもその発想からだった。

 完成まで道半ばだが、多くのラトビアの人が協力し、時間をかけて建設を進めてきたことでプロジェクトへの賛同が広がっているという。

 「ここで結婚式を開くという人もいるそうで、地元は静かに盛り上がっているようです。地域の方々に受け入れられ、本当に夢のよう」と枡野さん。国内外の庭園設計だけでなく、禅の心を伝える書籍でも実績のある枡野さんは「いつ完成しますかね」と静かにほほ笑んだ。


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