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はれのひ融資詐取、元社長起訴内容認める 横浜地裁初公判

社会 神奈川新聞  2018年10月05日 11:57

横浜地裁
横浜地裁

 成人の日に晴れ着トラブルを起こした振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」(横浜市中区、破産)の銀行融資詐取事件で、売上高を粉飾した財務書類を示して二つの銀行から融資金をだまし取ったとして、詐欺の罪に問われた同社元社長篠崎洋一郎被告(56)の初公判が5日、横浜地裁(渡辺英敬裁判長)であった。被告は「間違いありません」と述べ、起訴内容を認めた。

 検察側は冒頭陳述で、「被告は新規店舗の出店を続けたが、店舗数を増やすたびに損失も増え続けた」と指摘。「2015年8月までには金融機関からの融資を別の債務の返済に充てる自転車操業に陥っていた」とし、融資を受け続けるために被告が部下や税理士に売上高の水増しを指示していたことも明らかにした。

 同社は経営に行き詰まった結果、今年1月8日の成人の日を前に店舗を閉鎖し、横浜市などで晴れ着を着られない新成人が相次ぐトラブルが発生した。検察側はこの日の公判で、当時の心境を語った被告の供述調書を朗読。「ぎりぎりまで何とかしようと思っていたので、顧客への連絡をしなかった。成人式当日は自宅にいて電話にも出ず、現実から背を向けていた。精神的な弱さがそうさせたと思う」などと明らかにした。

 起訴状によると、被告は16年8月から9月にかけて、虚偽の決算報告書などを示して同社の経営実態を良好に見せかけ、横浜銀行と東日本銀行から計約6500万円の融資金をだまし取った、とされる。

 被告は、従業員への給与の未払いに関して、最低賃金法違反の疑いでも書類送検されていたが、横浜地検は5日、同容疑について不起訴処分とした。

「責任取る」と粉飾指示



 「社長の私が責任を取る。赤字を黒字に変えろ」-。初公判で検察側は、篠崎洋一郎被告が財務書類の粉飾に手を染めた経緯や、部下らと交わした生々しいやりとりを明らかにした。

 検察側は証拠調べで、はれのひ関係者の供述調書を朗読。調書によると、同社の担当税理士は財務書類の粉飾に1度は難色を示したが、「社長から『売り上げの入金予定がある、在庫ももっとある』と迫られた。社長が責任を取るということだったので言われた通りに作成した」と説明した。

 同社の元財務顧問は、業績低迷で従業員給与の未払いが生じるようになっても、被告がさらなる新規出店と融資を望んだと回顧。「もう借金を増やすのはやめた方がいいと意見したが、聞く耳を持たなかった。事業拡大で業績回復を図るという社長の言葉は夢物語だと思い、顧問を辞めた」とした。

 同社の元取締役は「会社の船出は順調で、多くの銀行が金を貸してくれるようになると、悪い意味での社長になり、営業なども自分でしなくなった」と指摘。「店舗が増えれば、売り上げも2倍になるという単純な発想しかなく、リスク管理を全く考えていなかった。会社をたたむ時期はもっと早くにあった。強く説得すべきだった」と悔やんだ。

経営者の面影なく 廷内で被告、終始硬い表情



 新成人の晴れ舞台を台無しにしたトラブルから約9カ月、海外から帰国直後に逮捕されてから3カ月余り。法廷に姿を見せた篠崎洋一郎被告は、背筋をまっすぐに伸ばして証言台の前に立つと、はっきりとした口調で「間違いありません」と罪を認めた。

 えんじ色のトレーナーにグレーのスエットパンツ姿で入廷。逮捕時に比べ少し痩せた印象で、様子をうかがうように傍聴席に目を向けた後、口を真一文字に結んで着席した。終始、硬い表情で、事業を急拡大させた経営者の面影はなかった。

 裁判長に氏名などを問われると「はい、篠崎洋一郎です」とはきはきと返答。被害に遭った銀行関係者の厳しい処罰感情をつづった供述調書を検察官が朗読した際には、まばたきや深呼吸を繰り返した。

 多くの新成人を途方に暮れさせた成人の日の心境について供述した調書が読み上げられると、目を赤くして正面を見据えた。

 新成人の被害については、経営悪化後も晴れ着を準備していた形跡があることなどから、県警はだます意図の立証が難しいとして事件化しなかった。それでも被害に遭った新成人の50代の母親=横浜市=は「本人の言葉を聞きたい」との思いで傍聴。「はれのひの晴れ着を選んだのは私。娘に嫌な思いをさせてしまった」と打ち明け、「相応の刑罰を科してほしい」と語った。


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