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はれのひ元社長5日に初公判 新成人の苦痛なお「反省を」

社会 神奈川新聞  2018年10月01日 02:00

はれのひが着付け会場として部屋を予約していたホテル。多くの新成人が晴れ着トラブルに見舞われた=1月8日、横浜市港北区
はれのひが着付け会場として部屋を予約していたホテル。多くの新成人が晴れ着トラブルに見舞われた=1月8日、横浜市港北区

 成人の日に晴れ着トラブルを起こした振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」(横浜市中区、破産)の銀行融資詐取事件で、詐欺罪に問われた同社元社長の初公判が5日に横浜地裁で開かれる。元社長は財務状況を粉飾した決算書類を提示して金融機関から融資金を詐取した罪で立件されたが、発火点となった新成人ら顧客の損失については刑事責任を問われることなく捜査は終結した。一生に1度の晴れ舞台を台無しにされた新成人の親は「せめて裁判で心からの反省を示してほしい」と話す。

 詐欺罪で起訴された被告(56)は2016年8月から9月にかけて売上高を粉飾して財務状況を良好に見せかけた決算書類を示して、銀行2行から計約6500万円の融資金をだまし取った、とされる。弁護人によると、被告は起訴内容を大筋で認める方針という。

 県警は当初、新成人の被害を「事件の本丸」と位置付け、同社の経営実態などを捜査。ただ、捜査関係者によると、同社が受けた融資を他の金融機関への返済に充てる「自転車操業」に陥りながらも新成人らに提供する晴れ着を準備していた形跡があることが確認された。今年の成人の日を間近にした昨年12月の段階で金融機関との融資交渉など事業継続を模索していた形跡もあったという。

 捜査幹部は「顧客をだます意図があれば、晴れ着を用意などしない。法と証拠に基づき厳正に判断した結果、ブレーキを踏まざるを得なかった」と話す。

 県警は結局、粉飾した決算書類などの証拠が確認された金融機関に対する融資金詐取容疑を立件し、捜査を終えた。
      ◇
 晴れ着トラブルに遭った横浜市在住の新成人の母親(45)は「今も着物を見るともやもやした思いになる」と明かす。あの日、長女が同社で選んだ晴れ着は着付け会場に届かなかった。初公判を控え「被告も子を持つ親。わが子の幸せを願う気持ちがあれば、新成人を裏切ることなどできなかったはず」と吐露。「(晴れ着の)被害が法的に問えないとしても、裁判ではせめて招いた結果を真摯(しんし)に受け止め、心からの反省の言葉を聞きたい」と話す。

 別の母親(46)も、逮捕直前まで海外で暮らし、債権者集会などにも姿を現さなかった被告に「ずっと逃げ回っていた印象。これまでの謝罪は信用できない」と厳しい目を向ける。法廷で被告がどのような態度で、どんな言葉を語るのかを注目している。

 弁護人によると、被告は「大変申し訳ないことをした。新成人らのことを思うと今でも涙が出る」と話しているという。

 同社の破産管財人を務めた弁護士によると、負債総額は約10億8500万円で、うち約3億4千万円が新成人ら顧客の損害だった。

自衛策徹底、規制も検討を
国民生活センターへの相談急増


 国民生活センターによると、和服のレンタル(貸衣装)に関する相談は「はれのひ」の晴れ着トラブルがあった2017年度は1143件で、16年度(394件)のおよそ3倍に急増した。はれのひに関する相談に加え、「自分が契約した業者は大丈夫か」など、業界全体に不信を広げる格好になった。

 例年、「店舗で試着して雰囲気に流され契約してしまったが、キャンセルしたい」「契約からそんなに時間がたっていないのに、高額なキャンセル料が発生した」などの相談が寄せられるという。同センターは「高額な和服のレンタルは消費者にとってそうあることではなく、経験の乏しさがトラブルを引き起こす要因になっているのでは」と分析する。その上で「業者側がきちんと説明していない可能性がある。キャンセル料がいつから発生し、どの程度の金額になるかなどの確認は不可欠。契約は即決せず、慎重を期すこと」などと、自衛策を呼び掛けている。

 神奈川県弁護士会消費者問題対策委員会の小野仁司弁護士は、消費者が先払いして晴れ着などを確保する業界の慣行を問題視。「契約した業者の経営状態の良しあしを新成人や保護者が見極めるのは至難」と指摘し、「はれのひのような事案を防ぐため、トラブルに備えて保証金を積み立てておくなど、何らかの規制を検討すべきではないか」と問題提起する。


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