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横須賀市出身・鍋倉夫さん初の単行本 9月28日発売
元奨励会員の挫折と再生描く「リボーンの棋士」

カルチャー 神奈川新聞  2018年09月27日 18:42

単行本「リボーンの棋士」の表紙(C)鍋倉夫/小学館
単行本「リボーンの棋士」の表紙(C)鍋倉夫/小学館

 横須賀市出身の漫画家、鍋倉夫(なべくらお)(本名・鍋倉純樹(じゅんき))さん(31)が今月、自身初の単行本となる漫画「リボーンの棋士」の第1巻を出版する。小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」で、5月から好評連載中の作品だ。プロ棋士養成機関の「奨励会」に青春の全てをささげながら、夢破れた者たちが挫折の底から再び前に歩き出す姿を描いている。

 主人公は29歳のカラオケボックス店のアルバイト。かつて将棋の天才少年が全国から集まる奨励会に身を置くも、4段に上がれずに26歳の年齢制限で退会させられた過去を持つ。プロ棋士の夢を絶たれ卑屈になっていたが、大好きな将棋に改めて向き合い、アマ棋士として再出発を切る。

 テーマは挫折と再生(リボーン)。嫉妬心を消し去り、前向きに生きる主人公ら登場人物の内面が丁寧に描かれ、緊張感ある対局場面にも引き込まれる。

 「将棋が好きでずっと将棋漫画を描きたかった。4~5年前には現役の奨励会員を主人公に描いたが、当時はボツになった」と鍋倉夫さん。再び将棋漫画に挑んだ理由について「自分も漫画家としてうまくいかない時期があって30歳を過ぎ、元奨励会員の姿に共感する部分があった。登場人物に感情移入もできた」と語る。


作業机でペンを走らせる鍋倉夫さん=東京都品川区
作業机でペンを走らせる鍋倉夫さん=東京都品川区

 幼少期から漫画が好きだった。関東学院六浦高校から東洋大学に進学。人生の岐路に立った卒業間際、就職活動をせずに初めて描いた作品を雑誌編集部に持ち込んだ。

 卒業後はアルバイトをしながら、24歳の時に描いた2作目でアフタヌーン四季賞奨励賞、3作目で同大賞に輝いた。野球で言えば、ドラフト1位指名を受けた新人のような扱いだった。

 だが、そこから連載掲載までの壁は厚かった。漫画家の花沢健吾さんのアシスタントをしながら、毎月のように「ネーム」と呼ばれるラフコンテを持ち込んだが、掲載されなかった。「(20代後半は)一番悶々(もんもん)としていた時期だった」と振り返る。

 花沢さんとの縁から編集者の石田貴信さんと出会ったことが転機に。現在、スピリッツ副編集長の石田さんは「人物描写に突出した才能を感じた。大河ドラマを描きたいと野心的なのも良かった」とほれ込み、作品掲載までサポートした。

 今回の企画は編集部で採用が決まった後、棋譜の監修に元奨励会員が付き、リアリティーを高めた。鍋倉夫さんは「誰しも少なからず挫折がある。好きなもの、信じられるものがあれば、立ち直れるのではないか。幅広い方々に読んでもらいたい」と話している。

 単行本(B5判、216ページ)は28日発売。帯には羽生善治竜王もコメントを寄せた。


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