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時代の正体〈631〉邪知透ける改憲案 自民総裁選投開票を前に 記者の視点=報道部・田崎 基

時代の正体 神奈川新聞  2018年09月19日 22:24

県内の自民党議員や党員を前に講演する安倍首相=8月31日、横浜市内
県内の自民党議員や党員を前に講演する安倍首相=8月31日、横浜市内

【時代の正体取材班=田崎 基】何度聞いても、いや聞けば聞くほど策動を感じる。安倍晋三首相の持論に、である。「自衛隊違憲論争に終止符を打つ」。冒頭からテロップ入りで改憲論を展開する動画を自身のツイッターに投稿したのは、自民党総裁選の投開票を目前に控えた18日のことだった。

 力強い断定調で続けるが眉をひそめざるを得ない。

 〈立党以来の悲願である憲法改正に取り組むときがやってきました。未(いま)だに多くの憲法学者たちは、自衛隊の存在を憲法違反と言い、多くの教科書に合憲性に議論がある旨の記述があるという状況があります〉

 多くの憲法学者は、2014年から15年にかけて議論された集団的自衛権の一部行使容認や、それに基づく安全保障関連法制について「違憲の疑いがある」と指摘していた。しかしそうした憲法学者の訴えを一顧だにせず、強行採決したのは安倍首相が率いる与党である。

 黙殺の姿勢を貫いておきながら一方で、自身の改憲を訴えるために憲法学者の主張に耳を傾けるというのは、余りに都合がいい。

 政府は「必要最小限度の自衛力」という枠の中で自衛隊を「合憲」と解釈し、一貫している。


会場を後にする安倍首相=8月31日、横浜市内
会場を後にする安倍首相=8月31日、横浜市内

 いま、自衛隊について「違憲かもしれない」と最も声高に公言しているのは安倍首相その人ではないか。「自衛隊員の誇り」を傷つけているのは一体誰なのか。

論理の破綻


 見過ごせないのは「自衛隊違憲論争に終止符を打つ」という安倍首相の説明と、その矛盾だ。

 安倍首相が主導する「自衛隊明記改憲」は、現行9条1項と2項を残し、その上で「9条の2」として、こう付け加える。

 「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及(およ)び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」

 しかしこうした規定を付け加えても「自衛隊違憲論争」に終止符は打たれない。

 なぜか。

 「自衛隊が違憲かもしれない」という議論の出発点は、現行9条2項に明記された「戦力の不保持」規定にあるからだ。

 「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」

 この「戦力」に自衛隊が該当するのではないか、という疑いがつきまとう。

 従って、本当に「自衛隊違憲論争に終止符を打つ」のであれば、9条2項の改正は避けて通ることができない。

 この語り尽くされた論理について歴史的に最も研究してきた政党は安倍首相が統べる自民党に他ならない。

 だから自民党は2012年4月の「憲法改正草案」で、9条2項そのものを改正し「自衛権の発動を妨げるものではない」と定め、日本に「自衛権」があることを明記していた。

右派の策動


 このことは、1997年に発足し、安倍首相の「応援団」とも言われる国内最大の右派団体「日本会議」もまた、他のどの団体よりも深く熟知しているはずだ。

 ことし8月15日。73回目の終戦の日を迎えた東京・千代田区の靖国神社には多くの参列者が詰めかけていた。

 参道の一画で日本会議と「英霊にこたえる会」が恒例の「戦没者追悼 中央国民集会」を主催していた。

 「憲法改正に向けて具体的に動かなければならない時がきている」

 登壇した国会議員は自民党の下村博文元文科相。

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