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【性的少数者】パートナーシップ制度 尊厳回復の糸口に 明治大・鈴木賢教授

時代の正体 神奈川新聞  2018年09月03日 09:54

パートナーシップ制度や同性婚について解説する鈴木賢・明治大教授
パートナーシップ制度や同性婚について解説する鈴木賢・明治大教授

【時代の正体取材班=田崎 基】性的少数者のカップルをパートナーとして公的に認める「パートナーシップ制度」。全国で導入が拡大しつつあり、千葉市の表明で10自治体を数える一方、県内自治体は軒並み後ろ向きな姿勢だ。世界的な潮流は、さらに一歩進んだ「同性婚」を認める方向にある。当事者で研究者でもある鈴木賢・明治大教授に現状と問題点を聞いた。

     ◇

 同性間で親密な関係を築き、家族生活を実際に送っている人が既にたくさんいるのに、その人たちが使える法的資源がほぼない。これは、いまある既存制度のほぼ全てが異性愛者のためにあるからだ。

 日本の婚姻法制度の特徴は、全てのカップルが異性愛者だということを前提に作られているという点だ。さまざまな法制度が、同性愛は存在しないものとして形作られている。

 この前提に立つと、同性婚を法制度化するためには、まず「同性カップルというものが、この世の中には存在しているのだ」ということを見える形にしなければならない。そこで、まずはパートナーシップ制度の導入を全国自治体に働きかけようという取り組みが行われている。

政治の責任


 制度が現実化していけば反対論が過熱していく。諸外国でもこれまで同様のことが起きてきた。反対論の主張はどこの国でも似たようなものが多い。「少子化が進む」「伝統的家族像が崩壊する」といったもので、その特徴は議論が極めて粗雑だということ。情緒的で具体性を欠く。例えば「伝統的家族の崩壊」について言えば、伝統的家族とは、崩壊とは何なのか。その定義がない。使われている言葉の多くがマジックワードで中身のないものが大半だ。

 実際には、同性間の家族が法的な保障を獲得していくというだけのことであって、これまで制度から排除されていたカップルが新たに対象となっていくだけのことで、伝統的家族も少子化も関連性はない。

 国際的潮流との関係も見過ごせない。日本人が外国で同性婚し、帰国するケースをどう扱うつもりだろうか。日本だけが世界的潮流と異なる対応をすることが果たして通用するだろうか。いまや先進国を中心に25カ国で同性婚が法制度化されている。先進国の大半では標準装備になっている。

 こうした国際状況にあって日本が取り得る姿勢は二つしかない。

 一つは、先進国と同じように同性婚を認める。もう一つは、日本は先進国であることをやめる。

 同性婚を認めずに、先進国で居続けるという選択肢はあり得ない。

 あとはスピードの問題だ。いつまで立ち止まっているつもりか。国際的潮流から遅れをとり続けることは日本の名誉にとって好ましくない。

 日本の国際的競争力にも影響するだろう。優秀な若い人材から「選ばれない国」となっていく可能性がある。これはまさに政治の責任だ。

傷ついた自尊心


 パートナーシップ制度に期待されるのは、社会的な承認が広がることだ。生命保険の受け取り人に指定できるか、医療行為の同意や病状の説明に同席できるか、といったケースでいま変化が始まっている。亡くなった場合、火葬の依頼をできるか。こうしたことが同性パートナーもできるようになりつつある。

 例えば部屋を借りるとき、同性カップルの場合、大家が嫌がることがある。そこで当事者たちは「友人だ」とうそをついたりもする。

 自尊心を自ら傷つけながら社会生活を営んでいる当事者は少なくない。社会的にうそを重ねながら生活することのプレッシャーは計り知れない。

 ばれたらどうしようなどと不安を抱えながら生きる。心はどうしたって弱くなる。自殺率が高いのはそのせいもあるだろう。

 「社会的な承認」とはつまり、人の尊厳や自尊心を取り戻すということに結び付く問題なのです。

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