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【性的少数者】私たちの存在認めて レズビアン「真綿で首締められ…」

時代の正体 神奈川新聞  2018年09月03日 09:49

パートナーシップ制度の導入を検討していると知り、パートナーとともに横須賀市内に引っ越した女性=同市内
パートナーシップ制度の導入を検討していると知り、パートナーとともに横須賀市内に引っ越した女性=同市内

 性的少数者のカップルをパートナーとして公的に認める「パートナーシップ制度」の導入が全国で拡大しつつある一方、神奈川県内では導入の検討すら2市(横須賀、鎌倉)にとどまっている。その現状に、当事者たちは声をそろえて訴える。「私たちの存在を認めてほしい」

 「どんなに長い間一緒に住んでも、たとえ結婚式を挙げても、私たちは世間からペアとして扱われない」

 横須賀市内に住むレズビアンの女性(42)は日常生活のさまざまな場面で、そう痛感してきた。

 会社に伝える緊急連絡先もその一つ。職場でカミングアウトしている。だが会社は親族ではないとの理由で、パートナーを連絡先にすることを認めてくれない。自分にもしものことがあれば、隣にいるパートナーではなく、遠く四国に住む両親に連絡がいく。

 20代の頃。交際相手が倒れ、病院に運ばれた。あまりに心配する様子に、看護師は女性を病室に入れてくれた。幸い、命に別条はなかった。2人の関係を察したからなのか、家族ではない自分を入れてくれた理由は今も分からない。ただ振り返るたび、「入室させてもらえていなかったら」と怖くなる。

 レズビアンだからと、あからさまに差別や偏見を受けたことはほぼない、と思う。でもそれは、自分の性的指向が受け入れられているから、とは言い難い。

 「女性が好き」と言えば、「男性になりたいの?」と質問される。交際相手と賃貸マンションを借りる時は、いつも不動産業者に「ルームシェア」と説明してきた。

 正直に話したいと思い、迷う。結局、諦める。「本当のことを話せば、ややこしくなるだけ」。何げないことが気になっても、「仕方ない」と目をつむる。心に少しずつ積もる諦めの気持ち。「真綿で首を絞められ、差別に鈍感になっているかもしれない」

 昨年11月、横須賀市内に一戸建てを買い、東京都世田谷区から引っ越した。同い年のパートナーと一緒に暮らすため、新居を探している時、市がパートナーシップ制度の導入を目指していると耳にしたからだ。

 「既に(パートナーシップ)制度がある市町村へ引っ越そうとは思わなかったのか」。当事者団体のメンバーとして先月、要望に赴いた時、市の担当職員が配慮に欠ける発言をした。期待していた分、ショックだった。「自分たちはないものにされている」。そう感じた。

 制度が創設されたからといって、自分たちの抱える悩みがどこまで解消されるのか、分からない。それでも、制度があることが最も大切だと感じる。「『あなたたちはここにいますよ』と、市町村という公的機関が自分たちの存在を承認してくれることが一番大きな役割だと思う」。導入されたら、まずは緊急連絡先にパートナーを選べないか、会社と交渉するつもりだ。

 そして「同性婚」の法制化にもつながればと願う。「同性婚を人権問題と捉えて、社会が変わるきっかけになってほしい」

 この春、ショッピングモールで指輪を見つけた。少し太めのシルバーリング。サイズ違いでおそろいを買い、パートナーと2人、左手の薬指にはめた。

 「同じデザインの指輪を着けて2人で歩いたら、気付く人は気付くはず。私たちの無言のアピールなんです」

「制度導入が心の支えになる」



 「導入を検討している自治体が少ないし、導入しているのがゼロなのは残念」。そう話すのは、性的少数者の交流スペースを運営するNPO法人「SHIP」(横浜市神奈川区)の星野慎二代表(58)。

 自身もゲイの星野代表は、制度の意義を「行政がまず、『(性的少数者の)存在を認めている』と示すことが重要」と説明。創設してたとえ申請がなかったとしても「制度があるということが、性的少数者の自己肯定感につながり、心の支えになる」と説く。

 検討していない理由を「当事者から相談がない」ことを挙げる自治体が少なくなかった。星野代表は「カミングアウトしている人は当事者団体が多い大都市に移る傾向にあり、東京近郊の神奈川県には声を上げられない人が多い」と話し、行政と当事者との考えの違いを指摘する。

 当事者らでつくる団体「よこすかにじいろかれー」(横須賀市)の藤原和希代表(35)は、男性と女性のどちらでもない性を自認する「Xジェンダー」。性的少数者は多様なのに、既に導入された制度の多くが同性間に限定していることに違和感を覚えている。「自認する性別で届け出をしたいと思う人も多い」とし、「制度だけでなく、公的書類やアンケートなど、性別欄が不要であれば削除したり、必要であればせめて『その他』の欄を設けたりするなど、男女の枠組みにとらわれない取り組みを心掛けてほしい」と注文した。


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