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流通研究所 釼持雅幸代表
トップに聞く 農水産物の価値伝達

経済 神奈川新聞  2018年08月21日 15:07

流通研究所・釼持雅幸代表
流通研究所・釼持雅幸代表

 農業と漁業分野に特化したコンサルティングを行っている流通研究所(厚木市)。全国の自治体、団体、企業から依頼を受け、調査から販売までを幅広く手掛ける。「地域とともに、つくる未来」という理念の下、現場目線で実践を積み重ねてきたことが評価され、順調に事業を拡大。今年は3億円を超える売り上げを見込む。釼持雅幸代表に、事業に懸ける思いを聞いた。

 -具体的な業務内容は

 「現場の実情に即した計画の立案、組織の立ち上げなどの『川上(生産)』から、農協、漁協の経営改善や直売施設などの拠点整備という『川中(流通)』、マーケティングや普及活動など『川下(消費)』までを行っている。農業、漁業に特化し販売実務も行うことで他社と差別化している」

 -業務を行う上で大切にしていることは。

 「徹底して地域の生産者と向き合い、新しい価値を創造している。さまざまな取り組みを通して消費者に農産物、水産物の価値を伝えたい。食の大切さについての認識は広まってきてはいるが、品質よりも価格が優先されがち。天候に左右されながらも、よりよい農産物のために生産者が重ねている工夫・努力も価値の一つだ。消費者サイドに理解を広めていきたい」

 -県内の意欲的な専業農家が作る「金次郎野菜」ブランドが話題だ。

 「主に県西・県央地域の約60人の生産者が参画している。15カ所の集荷所を設置し、横浜などにトラックで毎日新鮮な農産物を運ぶ物流網を整備した。小売店やイベントで販売しているが、6月には直営の直売所を開設した。農家が丹精込めて作った農作物のおいしさを伝え、適正な値付けを行うことにこだわっている。農産物は弊社が買い取り、リスクを負う形。どの生産者も高度な技術を持っており、重要なパートナーだ」

 -神奈川の農業の現状と課題は。

 「特色のあるブランド野菜を生産する専業農家と、兼業農家・自給的農家の大きな二つの層がある。特定の農産物の『産地』を形成するのが難しい構造だが、県内には900万人の消費者がいる。効果的な県内流通網を構築すれば、『県産県消』の促進につながるだろう」

 「農家の高齢化も深刻だ。関連会社の農業生産法人『おだわら清流の郷』では農作業の受託などを行っているが、複数の農家で法人を組織し、収益を確保しながら地域の農業を守る取り組みを支援していきたい」

 -漁業振興のアイデアはあるか

 「生活スタイルの変化により、家事は『時短』が求められ、魚をさばける消費者も減った。しかし日本人の魚好きは変化していないので、手軽に食べられるよう、小売店内での加工や刺し身での提供など、流通の変化が必要だ。おいしい魚介料理を提供できる飲食店を増やしていくことも効果的だろう。県内では小田原漁港の活性化に携わっているが、近海ものをその日のうちに関東全域に届けるなど、高度な流通の仕組みを持っており、まだまだ伸びしろがある。新港の整備で、今後は取扱高の拡大も期待できるだろう」

けんもつ・まさゆき 国際協力事業団青年海外協力隊などを経て、1996年流通研究所入社。2006年に代表取締役に就任。小田原市出身。立教大卒。57歳。


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