1. ホーム
  2. 高校野球
  3. 【甲子園】エース、終盤の不運 続けた粘投、2球に泣く

【甲子園】エース、終盤の不運 続けた粘投、2球に泣く

高校野球 神奈川新聞  2018年08月18日 02:00

3回裏金足農2死三塁、吉田(左)に同点2ランを許した横浜・板川(中央)と捕手角田=甲子園(共同)
3回裏金足農2死三塁、吉田(左)に同点2ランを許した横浜・板川(中央)と捕手角田=甲子園(共同)

 信じられなかった。「外野手が追い付くと思った。あそこまで飛ぶと思わなかった」。土壇場の逆転3ラン。板川はまさかと汗を拭った。

 2点リードで八回を迎えた。連打の後にバントを失敗させ、1死一、二塁。初球だった。「引っかけさせて併殺を」と狙ったチェンジアップが浮いた。高々と上がった飛球が中堅のフェンスを、またぐように越えた。

 三回に許した同点2ランのリプレーのようだった。いずれも、打球を押した気まぐれな浜風の影響を問われると、ややぶぜんと答えた。「それは関係ないです」。言い訳はしたくなかった。

 本調子ではなかった。だからこその、真骨頂といえた。右打者が7人並ぶ打線に対し、外角に直球とチェンジアップを出し入れして芯を外し、七回までわずか5安打と、術中にはめていた。

 身長173センチの軟式出身の左腕。2年の及川のように中学硬式の日本代表クラスが集まる名門にあって、1年秋からエースを担った。打たれる度に「横浜の背番号1にふさわしい投手になりたい」と繰り返した。

 甲子園の頂点に立った愛甲猛や松坂大輔とは投球スタイルは異なるものの、「強い気持ちを持って、背番号1を譲らなかった」。重圧とずっと向き合ってきた。ボールゾーンさえ操る制球力、けん制やバント処理を含めたマウンドさばき、窮地で腕を振る勇気。生きるため、総合力としての投球術を磨いてきた。

 100回目の夏を託された小さなエースにとって今夏の初完投。持ち味を存分に発揮したが、わずか2球に泣いた。「自分らしい粘り強い投球はできたと思う」。ただ、横浜のエースとは、勝たせる投手だと思ってきた。相手が150キロを投げる剛腕だからこそ、勝って証明したかった。


次の課題へ殻を破れ


8回、2死三塁のチャンスで三ゴロに終わった齊藤=甲子園(共同)
8回、2死三塁のチャンスで三ゴロに終わった齊藤=甲子園(共同)

 衝撃的な結末だった。主導権を完全に握っていた試合だった。

 「まだ、整理がつきません…」。しばしの沈黙の後、横浜の平田徹監督(35)は、お立ち台で言葉を絞り出した。2点リードの八回。3ランで、全てがひっくり返ってしまった。

 大会ナンバーワンとされる金足農の右腕・吉田を打ち崩すための準備は万全だった。「彼の一番得意なストレートをたたくしかない」

 指揮官の狙い通り、いやそれ以上の展開だった。初回に2点を先制。同点の六回に9番遠藤が右中間への二塁打を放って勝ち越すと、続く七回。万波、内海、角田と3連打が飛び出して、4点目を追加した。全て吉田のストレートを痛打。平田監督は「攻撃は選手たちが本当によくやった」と、文句なしの合格点を与えた。

 だが、さらに点差を広げるチャンスは多かった。六回2死一、二塁、七回1死一、二塁を逃し、八回は1死三塁から小泉がスクイズをファウルとし、その後凡退。3安打の主将齊藤も三ゴロに倒れ、「悔いが残る。自分があそこで打っていれば…」と涙を浮かべた。14三振を喫した打線は11残塁。ナインの誰もが「俺が打っていれば」と繰り返した。

 「平田野球の1期生」最後の夏は終わった。金足農の執念の反撃に「1球で負けた」とキャプテンは脱帽する。

 甲子園で勝てなかった過去2年の殻は、確かに破った。だが、頂点を目指すにはあと何かが足りなかった。100回目の夏。平田監督の「大きく育てる」指導で躍進した新時代の横浜が、次のステージに進むための課題を突き付けられた。


まさかの展開だった
 横浜・平田徹監督(35)の話
 まさかの展開だった。攻撃はまずまずだったのだが…。3回戦で負けるチームではなかった。全ては私の責任。勝たせてやれなかった3年生に申し訳ない。

チームの成長感じた
 横浜・齊藤大輝主将の話
 束になって攻撃しようと、みんながチームのために動いてくれた。キャプテンとしてチームの成長は肌で感じていた。悔いは残るが、来年はぜひ優勝してほしい。

本塁打びっくりした
 金足農・中泉一豊監督(45)の話
 板川君は制球が良いので、逆に狙いが絞れた。送りバントを失敗したが、最後は勝負強い高橋の打撃に助けられた。でも、本塁打なんてびっくりした。

我慢強さが結果に
 金足農・佐々木大夢主将の話 
最後は自分たちの我慢強さが結果につながった。厳しい戦いになるのは分かっていた。横浜に名前負けしたくなかった。横浜打線はトップレベルのチームだった。


シェアする