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記者の視点=報道部・田崎基
時代の正体〈625〉啓発足りない証左 自民・杉田氏のLGBT差別発言

時代の正体 神奈川新聞  2018年08月07日 11:00

東京・永田町の自民党本部前で掲げられたプラカード=7月27日
東京・永田町の自民党本部前で掲げられたプラカード=7月27日

【時代の正体取材班=田崎 基】自民党の杉田水脈衆院議員による月刊誌への寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」は、通読すれば「生産性」という言葉が差別の片鱗(へんりん)にすぎないことが分かる。根底に横たわるのは人権の軽視であり、差別の曲解であり、尊厳への無理解であった。権力者による少数者蹂躙(じゅうりん)の公言を黙過してはならない。

 7月27日夕刻。連日の猛暑が幾分和らいでいた。東京・永田町にある自民党本部前はレインボーカラーであふれかえっていた。

 「人が、人に対して『生産性』という言葉を使い差別することのひどさ。こうした考え方はジェノサイド(大量殺害)にもつながる」。東京都町田市から駆けつけたという女性(21)は言った。2年前に相模原市緑区の障害者施設で入所者19人が殺害された「やまゆり園事件」が重なる。「人が社会の役に立つかどうかで、その人の価値を決めるという発想自体が恐ろしい」。

披歴


東京・渋谷で行われた抗議デモで掲げられたプラカード=8月5日
東京・渋谷で行われた抗議デモで掲げられたプラカード=8月5日

  自民党の杉田水脈衆院議員は「『LGBT』支援の度が過ぎる」と題する寄稿文で一体何を主張したのか。

 〈LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作(つく)らない。つまり「生産性」がないのです〉

 子を産むことを生産性とすることも、人権啓発に使われるべき税金の使途の基準に生産性を置くことも、賛同は得れないだろう。

 問題の本質は、性が多様であるにもかかわらず、現行制度が異性間の法律婚に限定し、過剰な支援をしていることにこそある。本来はこの不平等を是正すべきであり、しかしそれをなしえないがために、LGBTへの理解を深めるための啓発活動が必要となっている。

 杉田氏の無理解な主張はまさにこの啓発が足りないことの証左に他ならない。寄稿の主題である「支援の度が過ぎる」という主張はつまり倒錯の極みであり、まだ足りないことを自ら論証するものでもあった。

誤導


 〈T(トランスジェンダー)は「性同一性障害」という障害なので、これは分けて考えるべきです。(中略)一方、LGBは性的嗜好(しこう)の話です〉


ヘイトスピーチについて基本的な理解を呼びかけるうちわ。基礎的な理解の浸透がまず必要になっている
ヘイトスピーチについて基本的な理解を呼びかけるうちわ。基礎的な理解の浸透がまず必要になっている

 トランジェンダーは出生時の性別に違和のある人や状態を広く示す。性同一性障害は専門医による診断名で、すべてのトランジェンダーが性同一性障害ではない。しかし寄稿ではトランスジェンダーの人について「性転換手術にも保険が利くようにしたり、いかに医療行為として充実させて行くのか、それは政治家として考えていいことなのかもしれません」などと指摘している。

 多様性を細分化し、名前を付けることが重要なのではない。目を向けるべきは、悩み、生きづらさを感じ、苦しみを抱えている人がそこにいるという現実だ。

 一方、「LGBは性的嗜好」とする。寄稿では「嗜好」と「指向」を混在して使っている。「嗜好」とは好き嫌いのことだがLGBは嗜好の問題ではない。ここでも事実誤認を披歴し、無理解を露呈し、読んだ者を誤導している。

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