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【ルポ】東京湾の「軍艦島」 第二海堡を観光資源に

話題 神奈川新聞  2018年07月31日 10:44

第二海堡の中央部に設けられた観測台=10日
第二海堡の中央部に設けられた観測台=10日

 国土交通省や横須賀市などが、東京湾入り口に浮かぶ海上要塞(ようさい)「第二海堡(かいほう)」(千葉県富津市)を観光資源として生かす取り組みを進めている。一般市民の立ち入りを禁止している人工島への上陸ツアーを、8月以降に試験的に実施することを決定。横須賀市は、世界文化遺産となっている長崎市の端島(通称・軍艦島)と同様、地域への集客増につながると期待している。

 明治から大正にかけ、首都・東京を防衛するため、横須賀市と富津市の間の東京湾口部に、砲台を設置するための人工島が三つ造成された。そのうちの一つ、第二海堡は約4万1千平方メートルで、1914(大正3)年に完成。砲台跡やれんが遺構が現存する。23(同12)年の関東大震災で被災したが、第2次世界大戦まで軍事施設として使われていた。現在は国交省が管理している。

 政府は国などが管理する公共施設を、地域の観光資源として活用する施策を推し進めており、上陸ツアーはその一環。7月に入り、国の関係機関や横須賀市、富津市、旅行会社などで「第二海堡上陸ツーリズム推進協議会」を設立。10日に横須賀市役所で開かれた会合で、ツアーの試験実施を決め、ルートや安全性をチェックした上で、2019年度中の定期航路を目指すことも確認した。

 同市なども定期航路の開通を目指し、16日に第二海堡を海上から見学するクルーズを実施。50人の定員に対し、3600人超の応募があったという。上地克明市長は協議会の会合で「新たな周遊ルートを創出し、集客を促進したい」と述べ、取り組みに期待感を示した。


灯台の電力を賄う太陽光パネルも並ぶ=10日
灯台の電力を賄う太陽光パネルも並ぶ=10日

戦中と戦後が混在―現地ルポ


 10日に開かれた協議会の会合を前に、関係者が第二海堡を視察した。記者も同行し、横須賀市の沖合約7キロにある、今は立ち入り禁止の人工島に上陸した。

 「12時から1時の方向に見えるのが第二海堡です」

 三笠桟橋(同市)を出港して約20分。海に浮かぶ灰色の塊が姿を現した。軍艦島を訪れた経験があるが、その異様なたたずまいは確かに似ている。

 いざ、上陸。船着き場から高台に続く階段を上ると、島の中央部にれんが造りの遺構があった。

 敵国の艦船に照準を定める砲塔観測台。実際に立つと、眼下に東京湾が広がった。国の中枢機関が集まる首都を海上攻撃から守るため、東京湾を見渡せるこの場所が選ばれたのもうなずける。

 約1時間かけ、太平洋戦争時に整備された高角砲跡、寄せる波で土砂が流されて基礎がむき出しになった多くの砲台跡などを巡った。「第二海堡では、当時最先端だった土木技術が多く生かされた」と国交省職員。英知を集めて確立した技術が戦争のために利用されているのかと思うと、複雑な気持ちになった。

 島内には、混雑の激しい浦賀水道を航行する船舶の指標となる灯台やその電力を賄う太陽光パネルなど、現代の建造物も整備されている。視察の終わり間際、巨大な自動車運搬船が近くを航行した。非日常の雰囲気、1世紀以上前の戦争遺跡、浦賀水道を往来する船舶-。戦中と戦後が混在する第二海堡は、記者にとっては、平和とは何かを改めて考えさせられる場所だった。


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