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【核と平和・2012】今を見つめて(3) 反原発 「一過性」危ぶむ

社会 神奈川新聞  2018年07月27日 18:39

「あの日の風のにおい、空の色、そんなことを知ってもらいたくて、コンサートを始めた」と話す佐藤慧子さん=横浜市栄区
「あの日の風のにおい、空の色、そんなことを知ってもらいたくて、コンサートを始めた」と話す佐藤慧子さん=横浜市栄区

 繰り返し報道される、東京電力福島第1原発事故や、原発に反対する人たちのニュース。それらを見聞きするたびに、シャンソン歌手の佐藤慧子さん(74)=横浜市栄区=の胸の内には複雑な思いが渦巻く。

 佐藤さんは広島市出身。小学校1年生のときに、爆心地から3・6キロ離れた自宅で被爆した。

 何とも表現しがたい閃光(せんこう)、灰色の空気の上に広がる青い空。爆心地から避難してきた真っ黒な人たち…。「夜にはうめき声が聞こえた。自宅の周辺は真っ暗なのに、爆心地の方は焼けて真っ赤なのが見えて、その差が印象的だった」。通勤途中に被爆した父は、体の正面にやけどを負って帰宅。その傷の手当てをするのが、佐藤さんの役目だった。

  ■ ■

 記憶は今も鮮明だ。50歳のときに、反戦歌が多いシャンソンを学んだことをきっかけに、自身の体験談と歌で構成するコンサートを思い立った。1993年から、「ヒロシマを語る」と題して各地で公演している。

 原爆や原発のことを考えると、フランスの歌手、ジルベール・ベコーによるシャンソン「逝きし魂」が思い浮かぶ。この曲には、原爆にも深い関わりがある科学者・アインシュタインの功罪を歌う詞がある。「すごい博士が発明して、それを進化させ、国々の経済が絡まって、競って行き着いたところが原爆、原発なのかな」と、あらためて感じたという。

 だが、原発事故後の反対運動などのさまざまな取り組みに、ストレートに賛同する気持ちにはなれない。この流れが、あまりにも一過性のものに見えるからだ。

 「あり得ないけれど、もしも急に福島第1原発の事故が完全に収まったら、みんな何も問わなくなるんじゃないか」。そして「原発反対」が盛り上がる一方で、原爆への関心が薄れていっていることも気になる。

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 直接被害を受けた故郷の広島でさえ、「原爆は日常の外にある」ように見える。そんな現状を確認するたびに怒りを感じる。

 あれほどの犠牲と被害のこと、そして命を大切にすることを考えていたら、原発もこんな事態にまで至らなかったのではないか。「原爆のことをみんながもっと真剣に考えていたら、原発の問題もなかったかもしれない。日本は唯一の被爆国なのに、そのことを真剣に学ぼうとしてこなかった」

 原爆と原発のことについて、佐藤さん自身も具体的に語ることを計画中だ。広島で被爆した一人として、原爆のこと、そして原発のことを取り上げ、コンサートの参加者と考える機会を持ちたい。そんな思いを抱いている。

(2012.8.8、尹 貴淑)


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