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【やまゆり園事件2年】「一緒に遊ぼう」障害の子も 横須賀の学童クラブ、共生を体現

社会 神奈川新聞  2018年07月27日 02:00

テーブルを囲み、おやつの時間を一緒に楽しむ子どもたち=学童クラブ「sukasuka-kids」
テーブルを囲み、おやつの時間を一緒に楽しむ子どもたち=学童クラブ「sukasuka-kids」

 「ともに、生きる」-。県立障害者施設「津久井やまゆり園」での殺傷事件以降、事件や被告の考えにあらがうように、さまざまな場面で掲げられてきた言葉だ。その理念を、てらうことなく、自然に体現する子どもたちが横須賀にいる。 

 久里浜商店街(横須賀市久里浜)の一角に、4月に開所した学童クラブ「sukasuka-kids(スカスカ・キッズ)」。夕方になると、子どもたちの笑い声が聞こえてくる。

 おやつを食べ終わった男の子たちは早速、段ボールで作った剣と盾を手に、戦いごっこを始める。「まだ食べてる子もいるでしょ。トランプとか、静かな遊びにして!」。しっかり者の女の子に怒られ、男の子たちは肩を落として、剣と盾を床に置いた。

 「遊んでいる様子を見ても、どの子に障害があって、どの子に障害がないか、分からないでしょう」。運営する一般社団法人「sukasuka-ippo(スカスカ・イッポ)」で代表理事を務める五本木愛さん(44)は目を細める。

 クラブには現在、7歳から11歳までの12人が在籍。うち、9人に発達障害や知的障害がある。障害児を受け入れても1人か2人という施設が圧倒的に多い中で、五本木さんらは「インクルーシブ学童」を掲げ、実践している。五本木さんが次女から教えられたことが、開所につながった。

 次女・麗(うらら)さん(7)は遺伝子疾患「アンジェルマン症候群」で、知的障害や発語障害がある。就学前、療育相談センターの支援を受けながら、地元の幼稚園にも通っていた。

 ある日。幼稚園に迎えに行くと、男の子が駆け寄り、うれしそうに報告してくれた。「今日ね、麗ちゃんが僕の名前を呼んでくれたんだよ」。娘は言葉を発することがほぼできない。「言葉はなくても、きっと麗がにっこり笑いかけたから、『自分の名前が呼ばれた』と思ってくれたのでしょう」

 こんな場面も目の当たりにした。工作の時間。「麗ちゃんは何色がいい?」。次女の好きな色を知ろうと、数本の色鉛筆を手に取り、女児が尋ねていた。五本木さんは痛感した。「障害者と同じ時間を過ごすことで、子どもは相手の気持ちをくみ取る力を身に付けようとする」

 だからこそ、確信を持って否定したい言葉がある。「障害者は不幸を作ることしかできない」。45人を殺傷した被告の供述。五本木さんは首を大きく横に振る。「障害のある人は、一緒にいる相手の心の成長を生み出している」

 小学校に進めば、普通学級と特別支援学級に分かれてしまう。障害のある子もない子も一緒にいられる場をつくりたかった。「子どもたちが大人になり、差別や偏見のない社会をつくる。ここをその小さな一歩にしてほしい」。法人名に願いを込めた。

 クラブのみんなで、近くの公園に出掛けた時のこと。交通量の多い道路で、発達障害があり、落ち着きがない男の子に、誰に言われるわけでもなく、女の子がそっと手を差し出した。「手、つなごう」


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