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平塚で深堀隆介展「平成しんちう屋」
金魚表現、形を超えて

カルチャー 神奈川新聞  2018年07月25日 10:30

公立美術館での初の大規模個展に「プレッシャーで大変だった」と話す深堀隆介。手前の作品は水泡や水紋もリアルだ =いずれも平塚市美術館
公立美術館での初の大規模個展に「プレッシャーで大変だった」と話す深堀隆介。手前の作品は水泡や水紋もリアルだ =いずれも平塚市美術館

 横浜市内にアトリエを構え、金魚をテーマにした作品を手掛ける現代美術家、深堀隆介(45)の個展「金魚絵師 深堀隆介展 平成しんちう屋」が、平塚市美術館(同市西八幡)で開催中だ。初期から新作まで約200点が並び、姿形を超えて自らが思い描く美しい金魚を追求する姿を紹介している。

 器に流し込んだ透明な樹脂の表面に金魚を描き、さらに樹脂を流し込む作業を繰り返して層を重ねる独特の技法で、水に泳いでいるようなリアルな金魚を表現してきた。

 その職人のような取り組みから「金魚絵師」と呼ばれてきたが、「実は自分で名乗ったことはなかった」と深堀。むしろ抵抗を感じていたのだが、今回はあえて展覧会名に取り入れた。

 「金魚絵師とは何なのかを、僕自身が追求したくなった。どれくらいアートに昇華できるのか、この場を借りてやってみようと思った」と意図を語る。

 そこには、18年間描いてきた金魚を新しい方法で表現したいという思いがあった。かつて自分が何をすべきか悩んでいたとき、7年間放置していた水槽で生きていた金魚の存在と美しさに気付き、創作意欲をかき立てられた。この体験を深堀は「金魚救い」と呼ぶ。

 「あのときの金魚の背中の美しさ。それを抽出した美をずっと追い求めている。そんな金魚の幻影を消して、形にこだわらないで金魚の奥深い世界が表せるのではないか」


新作インスタレーション「平成しんちう屋」。木箱の舟「カンコ」はいけすの水の上に並び、漂うイメージ
新作インスタレーション「平成しんちう屋」。木箱の舟「カンコ」はいけすの水の上に並び、漂うイメージ

 金魚の姿を描かずに、水の流れや残されたふんによってそこに金魚がいた気配を表現した作品には以前取り組んだが、今回の新作インスタレーション「平成しんちう屋」では多様な手法で金魚の世界を表現した。

 しんちう屋とは、江戸時代に東京・上野の池の端にあった日本最初の金魚店。養殖と小売りを兼ね、たくさんのいけすに美しい金魚が泳いでいたという。

 自らのアトリエを「金魚養画場」と呼び、記憶に残るイメージを元に自分だけの新しい金魚を創出している深堀。現代のしんちう屋として、「平成しんちう屋」にはアトリエを中心にいけすをイメージ。金魚の競りで使われるカンコという木箱がいくつも並ぶ。


金魚を詰めた「色袋」
金魚を詰めた「色袋」

 金魚を入れたポリ袋が並ぶ一角は「遠くから見ると色のグラデーション。あの感じが面白いと思った」と、香港の金魚街で見た光景を再現した。

 「色袋」と呼ぶそのカラフルなポリ袋は、透明樹脂を袋に流して裏から金魚を描いていったもの。袋そのものは外し、樹脂が袋の形で固まっている。実は厚みが半分だけなので、裏から描き跡が見える。よく見ると金魚ではなく水玉やストライプ、目玉模様など抽象的な描写の袋が交じる。

 「僕のコンセプトの画法プラスアルファで、抽象画でもいいんだと思えた。いろいろやりたい第一歩。僕の脳内を描くいいきっかけになった」とほほ笑む。「金魚というバックボーンは忘れていないが、新しいものも試していける次へのステップになった」と、今後の活動に向けて手掛かりをつかんだ。

平塚市美術館
 9月2日まで。月曜休館。一般900円、高校・大学生500円。7月29日午後2時から公開制作、8月11日午後2時から深堀による解説ツアーを行う。問い合わせは同館電話0463(35)2111。


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