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横須賀の酒場揺らす和太鼓の音 「流し」でファン拡大へ

カルチャー 神奈川新聞  2018年07月22日 11:50

居酒屋で和太鼓を演奏する郷戸さん=横須賀市根岸町の一升屋北久里浜店
居酒屋で和太鼓を演奏する郷戸さん=横須賀市根岸町の一升屋北久里浜店

 酒場の「流し」といえばギターやアコーディオンを思い浮かべるが、和太鼓の演奏で酔客の心を揺さぶる新手の流しが横須賀にいる。1年前に市内に移り住んだ和太鼓奏者の郷戸(ごうど)了(りょう)さん(33)=横須賀市公郷町。公演活動の傍ら、夜な夜な市内の居酒屋ののれんをくぐり、太鼓の音を響かせている。

 ドン、ドドンッ、ドドンッ-。平日の夜、京急線北久里浜駅近くの居酒屋「一升屋」。カウンター客らが見つめる中、太い両腕を振り下ろし、肩から下げた和太鼓を打ち鳴らす。力強く連打する音が鼓膜を揺らす。

 最初の5分程度の演奏を終えた郷戸さんは全身汗だくだ。常連客は「音が大きくて会話が聞こえねえよ」と憎まれ口をたたきながらも、気前よく投げ銭の千円札を差し出す。店主の鳴瀬明さん(47)は「お客さんも最初は大きな音に驚いたけど、今では喜んでますよ」と目を細めた。

 「公演での集客を増やしたかったが、私を知らない人にアプローチするには従来の舞台活動では足りない気がしていた」と郷戸さん。「無理やりでも聞いてもらうにはどうすればいいか。思い巡らせていたら流しに行き着いた」と笑う。

 新潟県妙高市で生まれ、6歳から地元の保存会で和太鼓を始めた。高校卒業後、国内外で有名な和太鼓集団「鼓童(こどう)」(同県佐渡市)に研修生として参加。共同生活しながら古典芸能全般を学んだ。

 足の古傷が悪化し、やむなく2年で退団したが、21歳から「RYOJIN」の芸名で活動を開始。クラシック奏者との共演やレストラン公演など古典芸能の枠に縛られないスタイルで、本拠地の新潟から全国へと活動エリアを広げてきた。

 「第2の拠点づくり」を目指す横須賀には、1年前に移り住んだ。横須賀中央駅付近の繁華街で太鼓を持って店に飛び込むことから流しを始めた。

 「最初は怒られたりして大変だった。でも、応援してくれる店主やお客さんが少しずつ増えてきた」。今年3月に市内のライブハウスで3日連続開いた公演には、流しで知り合った約290人が駆け付けてくれた。

 公演で離れるとき以外は、1カ月に10日以上、流しをこなす。郷戸さんは表現の場としても大切に考えている。「興味のない人に振り向いてもらうために自分を磨き、成長できる場。横須賀での活動の原点であり、初心に戻れる場。舞台活動が忙しくなっても続けたい」。1800席の横須賀芸術劇場(同市本町)での公演実現が当面の目標だ。


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