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在宅を支える配食 見守りの役割も担う
支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 サービスを守る(5)

社会 神奈川新聞  2018年07月06日 02:00

1人暮らしの高齢者宅に弁当を届ける鳥海さん。安否確認もする
1人暮らしの高齢者宅に弁当を届ける鳥海さん。安否確認もする

 「配食サービスです。今日は暑いですね」

 山北町社会福祉協議会の非常勤職員、鳥海宣和さん(69)が、玄関先から大きな声を掛けた。

 「外は暑かったよ。そろそろお祭りだね」。鳥海さんは天候や町の話題を話しながら、家の中から出てきた高齢の女性に弁当を手渡した。女性は「一日、誰とも話をしていないので、話をすると和みます」と満面の笑みだ。

 鳥海さんは5月のこの日、午後4時過ぎから約1時間半をかけ、三保地域など山間部の1人暮らし高齢者宅4軒を車で回った。

 山北町の山間部、三保地域の要支援者へのヘルパー派遣が途絶した際、要支援者の状況把握の柱となったのが、町社協による配食サービスだった。町中心部は弁当業者が直接宅配しているが、山間部は町社協のスタッフが車で回っている。民間の配食サービスが来ない三保地域周辺にとっては、町社協の配食サービスが唯一の頼りだ。

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 三保地域の前田清子さん(93)=仮名=も「要支援2」で、歩くのがやっと。台所に立つことが難しい。

 月曜から金曜までの夕食は、町社協が届ける弁当が頼りだ。ヘルパー派遣が再開された後も、1人暮らしの在宅生活の基盤となっている。

 そして何より、見守り、安否確認が行えることが大きい。

 「廊下のソファに座ったまま立ち上がれなくなって、何時間も私が来るのを待っていた人や、家の離れで転んで起き上がれなくなっていた人もいました」と鳥海さん。住宅が点在する山間部では、見守りの有無は生死を分けることにもなる。

 介護保険の総合事業で、要支援者らに向けた「多様なサービス」が難航する中、配食サービスや外出支援サービス、見守りなど、高齢者全体を対象とする生活支援サービスは、要支援者にとって頼みの綱だ。どれだけ手厚く展開できるか、自治体の力量が問われている。

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 一方、介護職員不足が深刻化し、山間部の介護サービスに不安が高まる中、介護保険施設の柔軟な活用を求める声も上がっている。

 三保地域唯一の介護保険事業所である特別養護老人ホーム「バーデンライフ中川」(社会福祉法人静友会)の永島隆事務長(45)は「介護保険制度を改正し、施設を多機能化するしかない。特に山間部の特養では、職員が訪問介護を行えるようにすべきだ」と指摘した。

 同特養は昨年9月末までデイサービスを併設していたが、人口減による利用者減で廃止せざるを得なかった。

 それまでの利用者は、町中心部のデイサービスが受け皿となったが、送迎の時間は長く、高齢者には負担も大きい。要支援者へのヘルパー派遣の途絶と並び、三保地域住民にショックを与えた出来事だった。デイサービスだったスペースは、特養のベッドの増床に活用された。地域基盤の弱体化は在宅生活を難しくし、施設入所のニーズが高いためだ。

 現在の制度では、特養、訪問介護、デイサービスも、それぞれ人員配置基準などがあり、職員の動きも規制される。それぞれ最低限の利用者を確保しないと経営は難しい。一つの事業所で通い、宿泊、訪問のサービスを行えるのは現在のところ、小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護だけだ。

 「今は制度の壁があるが、特養の多機能化は絶対に必要だ」。永島さんが力説した。

 ◆山北町の配食サービス(山北町「食」の自立支援事業) 調理が困難な1人暮らしまたは高齢者夫婦世帯を対象に、月~金曜日まで週最大5日、1日1食を届けている。町が町社会福祉協議会に事業委託している。町内の業者の600円の弁当で、町が300円補助し1食300円が利用料。2017年度は、最大50人が登録し月平均約30人が利用。配食数は合計3232食だった。町中心部は弁当業者が宅配するが、山間部の三保、清水、共和地域などは、町社協のスタッフが宅配している。


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