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弱まる地域の基盤 「総合事業」の壁に
支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 サービスを守る(4)

社会 神奈川新聞  2018年07月05日 02:00

丹沢湖周辺の風景。左側に山北町立三保小学校などがある。右側の斜張橋は永歳橋
丹沢湖周辺の風景。左側に山北町立三保小学校などがある。右側の斜張橋は永歳橋

 介護保険では要支援者らへのサービスをめぐり、2017年4月までに全国で総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)がスタートした。

 この総合事業は、市町村が中心となり、住民ら多様な主体が参画した多様なサービスを充実させ、地域の支え合いの体制づくりを推進することで、要支援者らを支えようというものだ。

 介護人材不足が深刻化する中で、介護専門職は、身体介護が中心となる要介護者へのサービスで専門性を発揮してもらい、待遇も改善させる。その一方、掃除や洗濯など生活援助が中心となる要支援者へのサービスには、地域住民らが持つ力の活用を狙う。

 要支援者への訪問型のサービスは、訪問介護事業所のヘルパー(専門職)による以前からの訪問介護のほかに、多様なサービスとして4類型が設けられた。緩和した基準によるサービス(訪問型サービスA)、住民主体による支援(同B)、短期集中予防サービス(同C)、移動支援(同D)だ。

 訪問型サービスAは、担い手の資格を緩め、身体介護は行わず生活援助を行うサービス。基準は市町村が設け、通常の訪問介護より報酬は低いが、資格は取りやすい。介護人材のすそ野を広げ、専門職への入り口となる役割も期待されている。訪問型サービスBは、地域組織やNPOなど住民団体のボランティアによる生活援助などだ。

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 山北町でも16年10月に総合事業を導入している。町内から訪問介護事業所がなくなり、ヘルパーによる要支援者への訪問介護が厳しくなる状況で、なおさら多様なサービスが重要だ。

 しかし、町保険健康課は「訪問型サービスA~Dの実施のめどは立っていない」と話す。

 その背景は、進行する高齢化と人口減少だ。要支援者へのケアマネジメントを行っている町地域包括支援センター(町社会福祉協議会運営)は「訪問型サービスAは担い手になってくれる人がいない。地域のボランティアも少ない。民生委員も1人が3役、4役をやっている状況だ」と、地域の現状を語る。

 特に三保地域など高齢化が進んだ山間部では、住民は支えられる側ばかりになり、多様なサービスを生み出す基盤、コミュニティーの支える力そのものが弱体化している。制度の理想と現実が完全に乖離(かいり)している。

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 山北町では、住民同士の支え合いのシステムとして15年10月から、介護ボランティアポイント事業が行われている。介護保険施設などで利用者の話し相手、演芸の披露などのボランティア活動をすると、ポイントが付与され、町商品券が受け取れるシステムだ。

 18年度は男性5人、女性67人の計72人が登録している。ただ現段階では、ボランティアが要支援者の家の中にまで入って掃除や料理などの生活援助をすることは難しいという。ボランティアにとってもハードルが高いためだ。

 同町では16年度から、地域の支え合いを推進する生活支援コーディネーターを1人配置し、多様なサービスの創出に向けて関係者のネットワークづくりなどに取り組んでいるが、どこまで成果を出せるか未知数だ。

 三保地域の要支援者への訪問型のサービスについて町保険健康課は「今後も町外の訪問介護事業所にヘルパー派遣をお願いし続けるしかない」と話す。ただ、継続の保障はないのが実情だ。

 ◆多様なサービス 訪問型サービスAは、横浜市の場合では既存の訪問介護事業所を事業者とし、報酬単価は通常の訪問介護の90%。また、小田原市などのようにシルバー人材センターによる生活援助を位置付けた自治体もある。訪問型サービスBは、平塚市の地域住民組織「町内福祉村」(市内17カ所)のボランティアによる生活援助が典型例だ。ただ、県内のどの市町村にとっても総合事業は容易ではなく、要支援者の切り捨てにならないか、対応が問われている。


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